「農民」記事データベース20051107-707-01

座談会

郵政に次いで浮上した「農協解体」は何を狙う(1/3)

消費者と連携、地域農業を守ってこそ−

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 いま、「農協解体攻撃」が二つの方向からかけられています。一つは財界から。銀行や保険会社が「他業禁止」になっていることを理由に、「郵政の次は農協だ」と、農協の金融、共済、経済事業を分割しようという攻撃です。これは、「人々の要求実現のための自治的な協同組織」として生まれた協同組合の存在意義を否定するもの。

 もうひとつは、農協内の上からの攻撃。全国農協中央会(全中)や都道府県の中央会が、個々の農協の経営方針を決めて、それを上から下におろして「経営の悪い農協は合併しろ」というもの。これは、組合みずからが自分たちの農協のあり方を決めていくという協同組合の基本原則に真っ向から反対するやり方です。「農協解体攻撃」は地域に何をもたらし、どう立ち向かっていくのか―話し合っていただきます。


〈出席者〉
青森・野辺地町農協 大関 政敏組合長
大分・下郷農協   横山 金也組合長
農民連会長     佐々木健三
農民連参与     山本 博史


合併ノー! 小さな農協の大きな挑戦

農業振興・雇用の確保・経済活性化

「三つの存在意義」掲げて

大分・下郷

 「こかぶ」づくり日本一の町に

 大関 私のところは、地域に根ざした農協として取り組んでいます。よく昔のお年寄りが、「三年に一回は冷害が来るものと覚悟して生活しなさい」というくらい厳しい地域です。ヤマセという偏西風が吹き、地上に実る作物が被害を受けるので、「こかぶ」づくりに取り組んできました。いまでは夏のこかぶとして日本一の生産です。

 小さな農協ですが、一回も合併することなく、「経営が確立できる農協をめざしていこう」と、組合員と一体になって健全な運営をめざして取り組んできました。

 横山 私のところは、産直事業をはじめて四十五年の歴史があります。下郷は、険しい山間地で平地が少なく、三反百姓が中心でした。こういうところで農業で生きていく道を産直に求めたわけです。「消費者と連携し地域農業を守る」を経営理念に掲げてがんばっています。

 特徴といえば、診療所を持っていて、組合員の健康や老後を守っています。そして、一つは地域農業の振興、二つに雇用の確保、三つ目が都市のみなさんと交流して地域経済の活性化に貢献する――こういう三つの存在意義を掲げてがんばっています。

 山本 これまでいろいろ攻撃があっても、二つの農協は合併してきませんでした。なぜ合併しないでやってこられたのでしょうか。


夜中まで融資の相談に乗って

農産物の販売は100%引き受ける

青森・野辺地

 組合員あっての農協だから

 大関 青森県では、今ある三十七の農協を六つにしようという話が進められています。「合併に参加してくれ」と県の出納長もわざわざ来ましたし、中央会も来ました。合併してからいろいろなことを解決しようというわけですが、中身がないんです。

 いま米価をはじめ農産物の価格がどんどん下がり、農家はもう“ふうふう”言っています。農協運営も非常にきびしくなっています。こういうときに大きくなったら、組合員の顔が見えないし、声も反映されませんね。

 うちは、窓口でなんでも相談できる家族的な農協です。自慢できることは、農産物の販売が一〇〇%農協引き受けになっていることです。ほかの農協では、品薄になって価格が高くなるとよそに流れる、安くなると農協に持ってくる、そういうパターンが多くみられます。組合員あっての農協ですから、農産物を有利に販売するのが農協の仕事ではないでしょうか。

 また、ちょっと経営が不振な農家があると、金融担当者がその農家に行って、夜中まで家族も含めてどうすれば再建できるのか、いろいろと議論します。相手のうちにまで行くというのは好まないんですが、あとで「家族みんなが理解できてよかった」って言ってくれるんですよ。

 これも小さな農協だからできることで、規模が大きくなったらきめ細かなことができなくなると思います。

(新聞「農民」2005.11.7付)
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2005年11月

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