米をどう集め、人をどう組織するか農民連組織部長 根本 敬氏の報告
「米で人をどう組織するか、米をどう組織するか」ということについて報告します。その前提は、「米を集めることは人を組織すること。人を組織することは『合意』を広げること」です。 「合意」とは、米を出してもらえるかどうかもありますが、「米改革」のなかで、農民連が日本の農業・米をどうやって守っていこうとしているのかということへの「合意」が大前提です。単に米が高いか安いか、農民連は高く売ってもらえるということだけでは運動を大きく広げることはできません。 「米改革」は、日本農業の根幹を揺るがしかねないものです。同時に、情勢が重大であるからこそ農民連の出番であり、このたたかいのなかで、農民連の組織と運動を本当にメジャーな組織、地域に認知される組織にしていくことが必要です。 「米改革」の初年度である今年、農家との合意を大きく広げ、「準産直米」をはじめとした米の扱い量についても、これまでの水準の数倍に引き上げることを呼びかけたいと思います。
目標と期日、手立てを明確にすることそのうえで第一に、目標と期日、手立てを明確にすることが重要です。この点で強調したいことは、県連の目標を役員会できちんと議論して決めるうえで、幹部の役割、とくに県連のトップの役割が問われていることです。事務局まかせでは成功しません。会長自らが、「どう運動を広げて会員を増やすのか。米は何俵集めるんだ。そのためにみんなで相談してほしい」――こういう提案をしないかぎり、県連の大志ある生きた目標は決まりません。 また、自分たちが生産した米を買ってくれる米屋さんや消費者のところに出かけ、大いに交流することも大切です。動いてこそ、期待の大きさや要求が分かり、腹構えもできてきます。 次に、単組や支部を軸にみんなで相談して段取りを決めていくことです。単組とか支部に「全県で何万俵やりたい。単組や支部でどのくらいやれるか相談してもらえないか」という大胆な投げかけが必要です。みんなで相談して段取りを決めていくということが、人を組織していくうえで、役員が押さえるべきところです。
「米改革」「準産直米」の意義を正面から議論しよう第二に、「米改革」の本質と「準産直米」の意義をあらためて正面から議論して、地域に大きく広げていくことの重要性です。まず会員に参加を呼びかけることです。その最大のポイントは宣伝です。 「米改革」は、大事な点が全部隠されています。各地の「地域水田ビジョン」を見ても、「小さい農家は米作りからやめてもらう」と書いてある「ビジョン」はありません。しかし、ねらいは明瞭です。 福島県連は、まだ数カ所ですが、「農民連米作り販売相談会」を開いて、「米改革」のねらいや、それに対してどうすればいいのかを伝えました。農民連本部で「米ビラ」を準備していますが、全農家にビラをまいて、今「米改革のねらいは何か」を伝え、組織でも議論して地域に風をおこすことが、重要です。 「米改革」に対してどうすればいいのかという点で言えば、商経アドバイス(二〇〇四年一月八日号)で農業評論家の土門剛さんが、「売り先があればどんどん自由にやりなさい…。作付イコール販売・完了というのが、今度の『米改革』に対抗する唯一の道だ」と述べていますが、“なるほど”と思いました。 また、宮崎県連では「お米アンケート」にとりくんでいますが、こうした経験に学び、「米改革をご存知ですか」と呼びかけ、全農家総当たりで対話していくことが必要です。さらに、立て看板、ステッカー、チラシなどで元気な農民連の姿を見せることが大事です。 呼びかけの対象を、大規模な農家、生産者グループ、農協にも広げる必要があります。農協は売れる米を扱うというのが基本方針ですが、生産調整に参加しない農家の米は買わないのかといえば、現実に、そんなことはできません。この間、いくつかの農協が、一定の量を「準産直」のルートで農民連と一緒にとりくむ動きが生まれていますが、大手の卸とか全農に丸投げしない方向を模索せざるをえなくなっています。農協中央が「米改革」を推進していることは重大ですが、「米改革」をどう打開するか、日本の農業・米を守るために一緒にどうやれるのか、こういう構えで、農協や大規模農家にも呼びかけようということを提起したいと思います。 福岡では、会員七人で百六十俵からはじめて、今年は二十三人で五百俵やるとがんばっています。気持ちの分かる仲間同士で五十俵、百俵とまとめてやっていこうじゃないか――そこから突破口が見えてくるわけです。こういうとりくみが積み上がってこそ、大きなとりくみになります。組織が小さかったり困難な組織の場合、力の集中や典型づくりが必要でしょう。 米の流通は手間暇がかかります。検査、集荷場所、資金、米の袋など、クリアすべきことが次々に出てきます。本部の米対策部にも援助してもらい、ハードルをクリアしていただきたいと思います。
出足早く「産直」「準産直」登録運動の展開を第三に、出足早く「産直」「準産直」の登録運動を展開することが重要です。米は一年がかりのとりくみです。出来秋だけのとりくみでは絶対に成功しません。米が不作となり、価格が不安定になった〇三年産のとりくみの教訓もここにあります。 出足早くとりくみをスタートさせましょう。登録運動は、声かけであり、どれだけ多くの農家に声をかけるかです。いま税金相談会・計算会がたくさん開かれています。この機会も生かしてペーパーに目標と契約数をきちんと書いてもらうことが大事です。
準産直米の運動を組織づくりと一体ですすめよう第四に、「準産直米」のとりくみを組織作りと一体で進めることです。 「米の数は組織の数と力のバロメーター」です。私たちがめざす中小の米卸や小売、消費者と共同して米の販売ルートを切り開くとりくみは、日本の米流通を変えうるとりくみです。消費者には「米改革」のことや、米が来年からどうなるのかという情報がほとんど伝えられていません。こういうときに、私たちが作った米をアピールし、「米改革」や農業・農村の現状を伝え、主食・米を守るために共感を広げることが大切です。まさに米売りではなく、日本の農業・米を守る運動です。国際コメ年に、日本の農業と米を本当にどうやって守っていくのか、ということを伝えていく大きな運動にしていきましょう。 今後、米は市場原理に投げこまれ、大手流通資本の支配も強まろうとしていますから、さらに買いたたかれる危険があります。その時に支えになるのは組織であり、仲間です。私たちは「農民の苦悩あるところ農民連あり」を合言葉にしてきました。今こそ農民連が地域のよりどころにならなければなりません。 今、歴史的な峠に、私たちは立っていると思います。本当に一歩進んで切り開いていけば、新しい地平が、私たちの前に見えてくるのではないかということを述べて、報告とします。
(新聞「農民」2004.3.1付)
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[2004年3月]
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