「農民」記事データベース20031013-606-06

世界の流れは食糧主権と家族農業

関連/世界の流れは食糧主権と家族農業/決裂したWTO閣僚会議(メキシコ・カンクン)
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総選挙 目前


日本の政治を変えるチャンス

 「米改革」はWTOでの妥協案の先取りしたもの

 真嶋 結局、今回の閣僚会議で決まったことはカンボジアとネパールが新しく加盟したことだけ。NGOがよく「悪い合意なら、ない方がましだ」というが、本当にそうだと思う。

 佐藤 その通りだ。冷害で打ちひしがれている日本の農民に追い打ちをかけるような合意がされなくてよかった。同時にこれからのたたかいが重要になる。「米改革」は、日本政府がWTOで妥協しようとした中身を先取りしたものだ。これを決して許してならない。

 そのためにも地域から大いに共同闘争を広げていこうと思う。今回、全中は日本政府の応援団に成り下がったが、地方の農協は、全中とかなりの“温度差”がある。決裂によって、共同を広げるスタンスが広がったような気がする。全国的な運動を盛り上げていくステップになると思う。

 真嶋 今回の決裂は、WTOでの交渉が簡単に進む時代ではなくなったことを示している。

 アメリカは同時に、自由貿易協定(FTA)で何とかしようという戦略を持っているが、アメリカが目指す南米・北米の全大陸を包括するFTAも簡単ではないだろう。「G21」の中心は南米のブラジル、アルゼンチンだからだ。

 今回の決裂の背景には、WTO加盟国の三分の二を占める途上国の発言力が増したこと、その中で、非同盟運動がWTO閣僚会議などに積極的な対案をもってのぞむという方針を打ち出したことがある。「G21」の中心に、非同盟諸国首脳会議の前議長国である南アフリカと次期議長国のキューバが座り、そして現議長国であるマレーシアは、シンガポールイシュー反対の先頭に立った。非同盟運動のトロイカ体制だ。

 こうした世界の大きな流れのなかで、日本政府の態度を改めさせることが、日本の農民にとっても、世界の農民にとっても重要だ。指し当たってその出発点が、目前に迫った総選挙だ。


日本・メキシコ自由貿易協定

焦点の豚肉のカゲにアメリカ大企業

 日本とメキシコの間で進められている「自由貿易協定」(FTA)交渉では、メキシコからの輸入豚肉の関税の扱いが焦点になっていますが、その背後にいるのはアメリカ企業であることが明らかになりました。

 メキシコの農民組織ANEC(全国農業生産取引業連合)の幹部で下院議員のビクトル・スアレス氏が、カンクンで農民連の代表に語ったもの。

 スアレス氏によると、アメリカの養豚メジャー・スミスフィールド社が二〇〇一年にメキシコ最大の養豚企業ノロエステ社を買収。同国の豚肉生産の三分の一を支配しているといいます。

 実際、農畜産振興事業団の情報によると、スミスフィールド社が保有する母豚数は七十四万四千頭で、第二位企業の三倍、第五位のカーギル社の七倍と、ダントツ(『畜産の情報』八月号)。同社のメキシコ進出の背景にあるのは「安い労働力の確保により、米国内より安い生産コストで日本や米国に供給できること」と指摘しています。

 メキシコにおける豚の飼養頭数は約一千万頭、養豚農家数は百三十万戸ですが、豚コレラ汚染地域が多く、輸出に回るのは六%前後。そのほとんどを支配しているのは、近代的な施設を保有するスミスフィールド社などの企業養豚です。

 「日本への豚肉の輸出が増えたとしても、それで利益を得るのは中小養豚農家ではなく、多国籍企業です。自由貿易によって農民が苦しみ、大企業がもうける経済モデルを変革しなければなりません」(スアレス氏)。

 一方、輸入はアメリカ産を中心に輸出量の五倍強の三十万トンにのぼり、豚肉自給率は九六年の九六%から二〇〇〇年には八三%に低下しています。北米自由貿易協定(NAFTA)による低関税の打撃を受けた形です。

 アメリカ企業による支配と自給率の低下のツケを日本に回し、日本の大企業はメキシコ進出や工業製品輸出増をねらう――こんなやり方は、日本の養豚農家のためにもメキシコの農家のためにもなりません。

(真嶋)

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(新聞「農民」2003.10.13付)
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2003年10月

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