「農民」記事データベース20030908-601-09

「米改革」マッピラ

地域で助け合い米作り続けよう(2)

関連/みんなが米づくりに加わって家族経営を守る集落営農
  /組合あったから続けられた
  /“農地は荒らしたくない”


千葉県佐原市

組合あったから続けられた

“農家の拠りどころ” 農機具共同利用組合

 今年利用者が17人で過半数

 千葉・佐原市農民組合の「佐原市南部農機具共同利用組合」は、コンバインや乾燥機などを共同で利用し、収穫などの作業を手伝う組合です。農民の目線でとりくむ助け合いの活動は、大多数の農民を稲作からしめ出す机上の「米改革」プランとは正反対で、「ここがある

から米づくりを続けられる」と地域の農家の拠りどころになっています。

 夏真っ盛り、「組合」事務所の前庭には、手入れが行き届いた四台のコンバインがもうじき始まる収穫期に備えています。作業所の中には三台の乾燥機、うち一台は新品と交換するために取り外してありました。「耐用年数を過ぎた中古品を購入して、十年も使った。よく働いてくれたよ。利用者が増えるから、乾燥機も性能がいいものに替えないとね」と、椎名正さん(60)は目を細めます。

 千葉県佐原市は、県内でも有数の穀倉地帯。市の北部は利根川流域の肥沃な水田地帯、南部は北総台地に開かれた畑作地帯です。「農機具共同利用組合」は、サツマイモ畑が広がる南部の返田(かえた)集落にあります。

 畑作地帯にあって、稲を作る農家は集落の三分の一の三十戸くらい。「みんな五十〜六十アールの小規模だから、この組合がなかったらとっくに米づくりをあきらめていたと思う」と、千葉県農民連顧問の椎名正男さんはいいます。

 米価が下落し、農家がそれぞれ高価な農機具をそろえていたのでは採算が合いません。加えて高齢化が進み、機械の故障が耕作放棄につながる状況が広がっています。そうしたなかで「農機具共同利用組合」の利用者は、今年三人増えて十七人になり、集落の稲作農家の半数を超えました。

 水田の4割の収穫を手伝う

 「組合」は、集落の水田の四割、六ヘクタールの田んぼの収穫を手伝っています。コンバインで稲刈りしてまわるオペレーターは、椎名正さん、黒田滋さん(63)、椎名秀男さんの三人。みんな、自分の田んぼも勤めもある兼業農家です。

 作業の委託料は、稲刈りが十アール一万八千円、モミすりと乾燥がそれぞれ一俵千円で、昨年は二百二十万円の収入になりました。それでも、オペレーターの人件費と機械の更新費用でトントン。「もうけるためにやってるんじゃないんで、作業面積が十ヘクタールに増えたら値下げもできる」といいます。

 農民の目線で、農民同士が助け合い、みんなで米を作り続けていこうというのが「共同利用組合」の特徴です。

 それを端的に表しているのが「完全な請負はやらない」こと。例えばオペレーターがコンバインで稲を刈る場合でも、委託する農家も田んぼに出て作業を手伝います。

 「自分で育てた稲なんだから、少しくらい汗を流さなくっちゃ。どれくらい採れたのか、自分の目で確かめないと作る気力もなくなる。それじゃダメなんだよ」と、椎名正さんは言います。

 農民リストラの「米改革」に対抗

 九二年に結成された「農機具共同利用組合」のきっかけは、地域の農家のために献身的に活動してきた農民組合員の突然の死でした。「小さな農家も農業を続けてもらいたい」と自費でコンバインや乾燥機を買いそろえ、近所の農家が利用できるようにした高木金男さん。「組合」はその遺志とともに機械と借金を引き受け、新しい作業所も建設。その際、市から建設資金の三割、三百万円の補助を受けました。

 それから約十年、機械も更新時期を迎えます。今年、更新する乾燥機とコンバインの費用は約五百万円。「補助を受けられればいいんだが…」というのが率直な願いです。

 ところが「米改革」は、米を作り続ける者とやめる者を選別し、一握りの農家に水田を集め、それ以外の農家を稲作からしめ出す「ビジョン」を作ることが補助金の条件。血も涙もない農民のリストラ推進プランと言わざるをえません。

 そういう方向ではなく、「農機具共同利用組合」のような、農民の目線で農村の寸法に合ったやり方で地域農業を担う仕組みを応援することが、本来、農政に求められることです。

(新聞「農民」2003.9.8付)
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2003年9月

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