「ものを作ってこそ農民」――国産もとめる国民と結んで――米・農業つぶしをはねかえそう(1/2)
政府は三月七日、食糧法の「改正」案を国会に提出しました。これは食糧法を全面的に改悪するもので、新しい法律といってもいいくらい。国会での審議は五月の連休明けになる見込みです。
あの手この手で大赤字の米価押しつけ*価格保障を完全に抹殺 戦後、日本が米の自給を達成した原動力は、農家に生産費を償う米価が保障されたことでした。食糧管理法で「米穀の再生産を確保する」水準で政府が買い入れると決めていたためです。この規定は食糧法にもいちおう引き継がれました。 ところが、食糧法「改正」案は、これをバッサリ削り、今後は「再生産を確保」しない「入札」価格で買い入れることにするというのです。 *稲作経営安定対策も大改悪、将来は廃止 さらに、現在かろうじて米価下落に対する防波堤になっている「稲作経営安定対策」も「米価下落影響緩和対策」に名前を変え、次のようにすることをねらっています。 (1)補てんを現在の八割から五割+二百円(一俵=六十キロ)に引き下げ。たとえば米価が二千円下がった場合、補てんは現在の千六百円から、千二百円(千円+二百円)に。 (2)逆に掛け金は二倍になります(政府3‥農家1→政府1‥農家1)。 しかも「米価下落影響緩和対策」は、県によって“やってもやらなくてもいい”ものであり、将来は廃止の方向です。 *「過剰米」は一俵三千円でたたき売り もう一つは生産配分数量を超えた「過剰米」をエサ用や加工用に投げ売りさせようというねらい。 そのため、「過剰米短期融資制度」を作り、一俵三千円前後の融資を行い、農家が処分できないときは、三千円で「質流れ」にさせようというのです(融資の単価は今後の検討課題ですが、昨年秋、農水省は「外米の輸入原価」と同じ水準に設定する必要があるとして「三千円」を提案)。 政府買入価格が廃止されれば、この融資単価が唯一の「公定価格」。これでは“三千円までは買いたたいてもいい”という“政府公認価格”になりかねません。
農民の“リストラ”で米は確保できるのかこんな米価を押しつけられたのでは、「担い手」農家も、そうではない農家も、経営が成り立つはずがありません。 *「担い手」の経営も成り立たない そこで政府が提案しているのが「担い手経営安定対策」。政府1、農家1の割合で保険料を出し合う「損害保険」のようなもので、「担い手」農家の稲作収入が三年間の平均を下回った場合に、その差額の八割を補てんするというもの(正確にいうと、八割から米価下落影響緩和対策補てん金を差し引く)。 この「保険」は成り立つでしょうか? たとえば平均の売り上げ一千万円、保険料を五十万円拠出した農家の収入が八百万円に下がったとします。補てん(保険金)は百六十万円。政府拠出分を含めても保険料は百万円で、六十万円の赤字。翌年は赤字分が保険料に上乗せされて八十万円に。こんなことが二〜三年続けば、農家が保険料負担に耐えきれなくなるか、政府が「保険」をやめてしまうことは必至です(米価下落影響緩和対策からの補てんもありますが、こちらの方も同じ問題に直面します)。 *田植えや稲刈りから農家しめだし さらに問題なのは「担い手経営安定対策」の加入資格です。資格は北海道で十ヘクタール以上、都府県で四ヘクタール以上、「集落型経営体」で二十ヘクタール以上。 これに当てはまるのは北海道で一万戸(四四%)、都府県で八万戸、わずか四%です。これ以外の農家に対しては、どんな赤字米価でも知らぬふり、つぶれて結構というやり方です。 「集落型経営体」にすれば救われるという声もあるかもしれません。 しかし、これがまた「狭き門」です。第一に山間地の集落で「二十ヘクタール」のまとまりを確保すること自体が大変です。 第二に、二十ヘクタールあったとしても「一元的経理」「一定期間内に法人化」という要件を満たさなければ、「集落型経営体」には認定されません。 第三に、政府のねらいを先取りした東北のある県では、稲作の基幹三作業(耕起・代かき、田植、収穫)から「担い手」以外の農家を排除し、“石拾い”か“水管理”程度にとどめる「集落ビジョン」を、七月までに全市町村で作れという号令を発しています。 結局、ここでも大多数の農家はしめだされます。 いま出回っている米の七割以上は、三ヘクタール未満の農家が作っています(上の図〈図はありません〉)。こういう農家を排除し、「担い手」に米生産の六割を集中させるという方針自体が、霞が関(農水省)の机上の絵空事です。まして「担い手」の経営自体も成り立たないとすれば、日本は「米を作らない国」になってしまうではありませんか。
(新聞「農民」2003.4.7付)
|
[2003年4月]
農民運動全国連合会(略称:農民連)
本サイト掲載の記事、写真等の無断転載を禁じます。
〒173-0025
東京都板橋区熊野町47-11
社医研センター2階
TEL (03)5966-2224
Copyright(c)1998-2003, 農民運動全国連合会