「農民」記事データベース20021230-568-01

政府は主食“米”に責任を持て 米価の回復こそ対策の柱(1/2)

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   消費者としても許せない
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   ドロ船の「経営安定対策」
   生産者、米屋、消費者が一体となって


 政府・農水省は十二月三日、「競争力のない産業は撤退してもらう」という小泉「改革」のもとで、日本を「米を作らない国」にすることをねらった「米政策改革大綱」を決定しました。

 「大綱」のねらいは、米価をもっと下げ、政府の支援を大幅にカットして、農家と水田を減らし、米の生産を激減させて、生産調整をやらないですむような「あるべき姿」を実現すること。それができないなら日本の稲作がほろび、主食・米まで輸入に依存してもいっこうにかまわないというものです。

 農家にとっても消費者にとっても、こんな無責任なやり方はありません。しかし決まったのは大まかな骨格だけで、法律も予算もこれから。運動もこれからです。今こそ、農協、農業委員会、自治体、消費者、中小の卸・小売業者とも共同して立ち上がるときです。

 許せない! 農家に米作りをあきらめさせて輸入拡大

 「減反しながら輸入とは何ごとか!」は農家みんなの怒りです。ところが農水省は、素知らぬ顔でミニマム・アクセス米には何一つ手をつけずに、来年の減反面積を五万ヘクタール増やして百六万ヘクタールにすることを決め、さらに将来は百二十万ヘクタール、百五十万ヘクタールにしようとしています。

 こうした大減反路線を鮮明にしたのが、「大綱」にほかなりません。〇八(平成二十)年に政府は米の需給調整システムから完全に撤退し、二〇一〇年にめざすという「あるべき姿」は、転作奨励金などの支援も一切なく、農家が一俵(六十キロ)三千円という途方もない暴落米価におびえながら減反をこなすというものです。

 ギリギリまで稲の作付を減らして、もしも不作や凶作が起こって米が足りなくなれば、「待ってました!」とばかりに米輸入を拡大する――これが、日本を「瑞穂の国」でなくする亡国の道でなくて何でしょうか。

 こうした「あるべき姿」への道すじをつけるのが、〇四(平成十六)年度に導入する減反の数量配分と、「産地づくり推進交付金」制度です。

 「産地づくり推進交付金」は、現行の転作奨励金と稲作経営安定対策を一本にして、予算をバッサリ削るのがねらい。減反をいくら増やしても、交付金の総額はビタ一文増やしません。

 「これ以上は絶対作るな」という生産数量を配分して農民をガンジガラメにしたうえで、食糧庁の針原企画課長が語ったように「今後毎年、生産調整を五万ヘクタールずつ拡大」して、減反面積あたりの交付金単価を切り下げ、稲作農家を「撤退」させるねらいです。

 私たちは、こうした「亡国の道」にキッパリとノーをつきつけるとともに以下のことを要求します。

 (1)ミニマム・アクセス米を削減・廃止して減反面積を大幅に減らすべきです。

 (2)転作奨励金の大幅カットに反対します。それどころか転作条件の整備に力を注ぎ、自給率が異常に低い麦、大豆、ナタネ、ソバなどの増産に結びつけることこそ政府の責任です。また、野菜や果実などの輸入激増をおさえるためのセーフガードの発動を要求します。

 (3)数量配分は、農家の生産意欲を決定的につぶすものです。「米の生産統制」を押しつけるなどというバカげたことはやめるべきです。

 米価の回復、価格保障の充実こそ稲作たてなおしの展望開く

 米価の暴落にストップをかけ、この数年で一俵五千円から八千円も下がり、生産費を大きく割り込むにいたった米価を回復することなしには、日本の稲作は立ち直りません。

 ところが政府は、米価を一俵千円以下の飼料米や三千円程度の加工用米をもにらんだ市場原理にゆだねて暴落を促進しようとしています。そのために農水省は、今かろうじて米価の暴落から経営を守っている稲作経営安定対策を徹底的にジャマもの扱いしています。

 生産調整研究会「中間とりまとめ」で「廃止」を宣告された稲経対策は、さすがに農民の反発によって、「大綱」では名前を変えて形は残しましたが(「米価下落影響緩和対策」)、内容を大改悪。農家の負担は二倍にする一方で、補てんは八〜九割から五割強に切り下げました。

 米価が二千円下がったとすると、農家の実質的な補てん金は、千二百円から四百円に、三分の一に減らされます(図2〈図はありません〉)。


消費者としても許せない

新日本婦人の会 高田公子副会長

 国民のいのちの源である主食であり、日本農業のささえである米の需給・価格両面で政府の責任をまったく放棄し、全面的に市場にまかせる「米政策改革大綱」は、消費者としても許すことはできません。

 日常生活ではあまりにも当たり前になっている「日本のお米が食べたい」願いが、どんなに切実かを思い知ったのは、十年前の冷夏による凶作と「米パニック」でした。それ以来「やっぱりたべたい日本のお米。減反やめさせ、日本の農業と環境をまもろう」「他国の米は奪わない、米の輸入自由化反対」「主食の自給はあたりまえ、農業予算をふやし、消費者には安全で安い米の供給を、農民には生産費を償う米価を」と運動をつづけてきた私たちは、今怒りでいっぱいです。

 米産直をつうじて出会った農民連のかたがたのつくることへのあつい情熱を、田んぼに入ったときの子どもたちの歓声を、日本農業をなんとしても守りきる正念場のたたかいをご一緒にがんばりあおうではありませんか。

(新聞「農民」2002.12.23・30付)
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2002年12月

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