遺伝子組み換え食品全世界の消費者が警戒・反発(2/2)日本はGM稲の作付目前
多国籍企業による種子の支配もう一つは、モンサントによって世界の種子が支配されてしまう問題です。以前は多国籍企業という言い方をしていましたが、今はもうモンサント一社が独占してしまいました。 今世界で最も作られているGM作物は除草剤耐性大豆ですが、これがモンサントだけなのです。トウモロコシも、綿もほとんどモンサントで、GM種子の九割近くがモンサント一社の独占状態というのが実態です。 作付面積も増えています。とくにアメリカで増えていて、続いてアルゼンチン、今急激に増えているのが中国です。アルゼンチンで増えたのはモンサントがアルゼンチンの種子会社を買収して、モンサントの種子を売り込んでしまったためで、アルゼンチンの全大豆畑の九〇%以上がモンサントに握られてしまっています。 綿も問題で、世界最大の作付国アメリカの七割近く、第二位の中国でもモンサントの綿が広がっているのです。第三位のインドは今年三月に作付を認めたんですが、モンサントは病気が広がる大失敗をして訴訟を起こされています。
日本の運動が阻止の大きな山それから、次が稲と小麦です。なにしろ一番商売になるのが穀物ですから。稲は九割以上がアジアで作られ、消費されていますから、アジアの市場が問題になってきます。その時にアジアの拠点として考えていた日本で、稲をめぐっていま攻防戦が展開されているわけです。現在、農水省が作付を認めたGM稲は十八品目、そのうち十品目が厚生省に食品として申請がされそうです。 この間、モンサントと愛知県農業総合試験場が共同開発した除草剤耐性稲「祭り晴」をめぐって市民の反対運動が広がり、まだ油断はできませんが、これが阻止できそうです。米に関しては、日本での、とくに愛知県での運動が、モンサントによる農業支配を許すか許さないかという大きな山になってきています。 それから小麦をめぐって、面白い状況が広がっています。小麦となると欧米の人たちも態度が違うのです。あの強い推進国カナダでも、GM小麦には反対が広がり始めていて、注目しています。 またフィリピンの国際稲研究所(IRRI)では、ゴールデンライスやBBライスといったGM稲が開発されていますが、農民が頑張って抵抗しています。 タイでもモンサントのGM綿が売り込まれていますが、農民の運動で商業栽培はまだされていません。タイも米が狙われると農民運動では警戒しています。
第三世界がGMの援助拒否先進国の政府は日本も含めて遺伝子組み換え推進派です。でも消費者の反発が全世界的に強いので、対応に差が出ています。妥協の産物として出てきているのが、表示制度です。ヨーロッパでは一%以上混じっていると遺伝子組み換えと表示しなければなりませんし、いま全食品表示に向けて動きだしました。 現在、第三世界が遺伝子組み換えの援助を拒否したり、結構がんばっています。生物多様性を守るために、南アフリカのヨハネスブルクで開かれたサミットでも、アメリカ総批判になりました。やはり自分の言うことだけが正義というアメリカの政治姿勢に対しての反発が、食料援助の拒否という形になったのだと思います。もともとアフリカの飢餓そのものが、アメリカの食料戦略のもとで起きた、アメリカの穀物を売り込むためにアフリカの食生活や農業を変えたりした、そのことに対する反発が根本にあると思います。
種子汚染などへの警戒が必要日本の農家が遺伝子組み換えに関して、考えなければならない課題としては、一つは種子が汚染されて、自分たちが遺伝子組み換えを作りたくなくても作っている可能性があることです。 またバイオ作物懇話会という宮崎県の農家を中心にしたグループが、日本国内でもモンサントと一体になってGM大豆の作付運動を行っています。今年は北海道など六カ所で、今のところは花が咲く前に刈り取ってすきこんでいますが、警戒が必要です。 それから、都道府県の農業試験場でもGM作物を開発しています。リンゴやネギなど種類が増えており、いつ出てくるかわからない状況にあります。とくに花の開発が活発で、食物でないので消費者にもあまり反対が起きていません。青いカーネーションなどは実際に市販されているし、一時は国内作付までされていました。しかし環境への影響では花も同じですし、花だって遺伝子組み換えだということをどう考えるかです。生産者にはこれらの作付に注意してほしいと思います。 あとは、生産者も消費者ですから、そういう意識で遺伝子組み換え食品の問題を考えることが、非常に重要だと思います。
天笠啓祐著ブックレット『遺伝子組み換え稲』市民バイオテクノロジー情報室は、バイオテクノロジーに関する、市民による、市民のための、NGOの情報センター。遺伝子組み換え作物などの情報を収集し、分析・発信しています。この本では、GM稲の最新情報が多彩に、わかりやすく紹介されています。除草剤をかけても枯れない除草剤耐性稲や、虫が食べると死ぬ殺虫性稲、トウモロコシの遺伝子を入れて大粒の米粒をつくるスーパーライスなど、驚くようなGMイネが次々と登場します。 米以外のGM作物の世界作付状況や遺伝子組み換えの問題点も広く紹介。「遺伝子とは?」「遺伝子組み換えとは?」などの基礎知識もやさしく解説しています。
*市民バイオテクノロジー情報室ブックレット『遺伝子組み換え稲』五十六ページ 天笠啓祐著 五百円 入手先は同情報室(電話03―5308―7188 FAX5308―7189) 〔前ページ〕<< □
(新聞「農民」2002.11.11付)
|
[2002年11月]
農民運動全国連合会(略称:農民連)
本サイト掲載の記事、写真等の無断転載を禁じます。
〒173-0025
東京都板橋区熊野町47-11
社医研センター2階
TEL (03)5966-2224
Copyright(c)1998-2002, 農民運動全国連合会