米の需給と価格に国が責任を持ち、農家の工夫や努力が生かされる米政策を米「改革」に対する見解と私たちの提案(5/5)二〇〇二年七月農民運動全国連合会/米「改革」に対する見解と私たちの提案(2/5) /米「改革」に対する見解と私たちの提案(3/5) /米「改革」に対する見解と私たちの提案(4/5) /米「改革」に対する見解と私たちの提案(5/5)
私たちは提案します大企業の米流通支配をおさえ、中小流通業者と農協の役割を尊重する流通制度に(1)年間を通じて米を全国に安定的に供給するための計画流通制度の廃止に反対します。旧食管制度が果たした大きな役割の一つは、大企業の米流通支配をおさえたことでした。石油ショックや米パニックのさなかでも、米の安定供給が基本的に維持されたのは、そのためです。 国民の主食・米の需給や価格安定に国が責任を果たすことを大前提に、大企業の米流通支配をおさえ、中小米卸・小売業者と農協の役割を尊重したシステムに改善すべきです。 (2)食品のインチキ表示の横行や、輸入食品からの残留農薬の検出が相次ぐ事態のもと、国の責任によるチェックを強化すべきです。とくに米検査の完全民営化を中止するとともに、輸入米のブレンドに対するチェックを強めるべきです。 (3)農協の組織討議資料が計画流通制度の廃止に同調せず、全体として国の責任を果たすことを求めていることは私たちと一致するものです。 同時に、計画流通制度廃止案は、計画流通米と計画外流通米の間の「不公平」が最大の問題だとする見解を逆手にとったものであることも率直に指摘しないわけにはいきません。しかし最大の「不公平」は、日本の農民が史上最大の減反を押しつけられる一方、外米輸入は「聖域」という事態にこそあります。 少なからぬ農家・農協が計画流通米と計画外流通米の両方を選択していますが、これは農家の経営と農協の事業を守るための真剣な模索の結果です。これを非難し、農家間の不一致・不団結を拡大するやり方は慎むべきです。また、計画流通制度廃止が、農協系統の米事業を分断し、産地から消費地にいたる米流通支配を完結させようとする大資本のねらいにもとづくものであることを直視すべきです。
(5)家族農業経営にこそ生命力! 日本には農業と農民が必要だという合意を武部農相は「(稲作は)一ヘクタール未満が八割。これはガーデニングに近い。民間企業の参入が必要だ」と言い放ち、農水省と日本経団連とのトップ会談で、農業への大企業の参入で合意しました。 小泉内閣の「総合規制改革会議」は、家族農業経営にはまかせられないといって、大企業に農地取得・支配を認める「全面参入」方針を打ち出しました(七月二十三日、「中間取りまとめ」)。しかも、政府は、こういう企業農場に対して「支援策を集中化・重点化」することさえほのめかしています。
私たちはこう考えます(1)日本の農地の面積当たり人口扶養力はアメリカの十三倍、ヨーロッパの三〜四倍。こういう生産力の高さが、狭い日本列島に多くの人口を抱えてきた条件であり、日本の小規模農耕を歴史的に規定してきました。土地をめぐる歴史的条件が入り組んでいる日本で「一ヘクタール程度の稲作はガーデニングだ」などとヤユし、欧米並みの「構造政策」を性急に追求すること自体に無理があります。 (2)農業は家族経営を基本に営まれるべきです。リストラと国内産業の空洞化が進んでいるなかで、農業から農民を追い出し、失業を増加させ、日本をますます「ものを作らない国」にする政策をとるのは愚の骨頂です。 しかも、日本は世界一の長寿国であり、高齢者は高齢者としての経験をいかした役割を果たし、大規模農家も中小規模農家もそれぞれの役割を果たしあいながら、地域・集落の農業を維持し、環境や国土を守り、農業の多面的機能をいかんなく発揮することこそ合理的であり、持続可能です。こういうなかでこそ後継者も育つでしょう。 荒廃がとくにひどい中山間地域や市街化区域への直接所得補償の改善や固定資産税の減免なども緊急に必要です。 (3)大資本の農地支配のための農地法改悪が検討されていますが、これはただちに中止すべきです。資本に乗っ取られ、持続可能でも国土保全的でもなく、安全・新鮮・本物・旬への志向を強めている国民のニーズにこたえることができない「工業型農業」ではなく、その対極にある家族農業経営をこそ守るべきです。
いまこそ、国民的な対話と共同を世界でも最高水準の生産力を誇る水田。国土面積の八割に責任を負う農林業。命の源である食料。日本には、現在も将来も農業と農民が必要です。 雪溶け水で田植えして、梅雨の雨が苗を育て、熱帯にも匹敵する夏の暑さと陽光が穂をはぐくみ、秋晴れが米を肥らせる――日本の農民は、日本列島の自然の力の利用と勤勉によって、何千年にもわたって稲作を発展させてきました。 目先の利益に走って、こういう価値を売り飛ばそうとする者たちには、道理も未来もありません。BSE、インチキ表示、次々に検出される輸入農産物の残留農薬。安心・安全な国産農産物をの声は列島に満ち満ちています。 ものを作ってこそ農民です。希代の農業つぶし政策が検討に付されているいまこそ、正直、本物の農産物をおおいに作って国民の期待にこたえながら、農業と食糧、米を守る国民的な対話と共同を広く呼びかけようではありませんか。
大資本が支配する農業は遺伝子組み換え技術を使った「工業型農業」政府の審議会にしょっちゅう顔を出す御用学者の弁(要約)。
“国際化・グローバル化の時代に日本に農業が残っているとすれば、これまでの「農業」というコンセプトから離れた新たな産業であろう。日本は主食という名のもとに重視してきた米偏重の政策を捨て、遺伝子組み換え技術を駆使した「工業型農業」を展開しなければならない。従来型の農業もなくならないであろうが、そうした「趣味的農業」の維持に国税の負担を求めてはならない”せっかくのお説教ですが、こういう“遺伝子組み換え技術を駆使した工業型農業”こそ、日本の消費者からヒジ鉄砲をくらい、生き残ることはないでしょう。
〔前ページ〕<< □
(新聞「農民」2002.8.5付)
|
[2002年8月]
農民運動全国連合会(略称:農民連)
本サイト掲載の記事、写真等の無断転載を禁じます。
〒173-0025
東京都板橋区熊野町47-11
社医研センター2階
TEL (03)5966-2224
Copyright(c)1998-2002, 農民運動全国連合会