米の需給と価格に国が責任を持ち、農家の工夫や努力が生かされる米政策を米「改革」に対する見解と私たちの提案(2/5)二〇〇二年七月農民運動全国連合会/米「改革」に対する見解と私たちの提案(2/5) /米「改革」に対する見解と私たちの提案(3/5) /米「改革」に対する見解と私たちの提案(4/5) /米「改革」に対する見解と私たちの提案(5/5)
私たちは提案しますミニマム・アクセスの削減・廃止こそ大前提(1)「いらない米」「余っている米」まで輸入を押しつけるのが、いったい「自由貿易」なのでしょうか? 政府はミニマム・アクセス制度の廃止を要求するとともに、義務でもないミニマム・アクセス米輸入を削減すべきです。(2)「回転備蓄」を「棚上げ備蓄」に切り換え、備蓄の役割を終えた国産の古米を加工米や海外援助米、飼料用払い下げに回すべきです。 (3)ミニマム・アクセスを廃止し、とりあえず減反面積を九〇年代初頭の水準に大幅に減らすべきです。
(2)米価の回復、価格保障の充実こそ稲作たてなおしの展望ひらく米価の暴落にストップをかけ、この数年で一俵(六十キロ)五千〜八千円も下がった米価を回復することなしには、日本の稲作は立ち直りません。
(1)超安価の加工米・エサ米を作れ――米価下げろの大合唱ところが、研究会の座長代理である高木勇樹・元農水事務次官は、もっと米価を下げるべきだ、これが「米作りのあるべき姿」だと言い放っています。 「日本の米作りは主食用に偏っている。加工用や飼料用に安い米を作れば、需要はいくらでもある」「この場合、安価で供給しないと需要に応えられないが、価格支持は行わない」(「農業協同組合新聞」七月四日、「米麦日報」七月十一日) だいたい「加工用や飼料用に安い米を作れ」と気楽にいいますが、飼料用はキロ十六円で主食用の二十分の一。加工用でも三分の一です(図1〈図はありません〉)。 これが、どんなにひどい暴落の押しつけか、明らかではありませんか。 さらに大手米卸「神明」の藤尾益也社長(研究会流通部会長代理)は、主食米を「暴落」させろとさえ要求しています。 「自主流通米の価格形成センターでは、三分の一ずつ上昇しているから暴落はありえない……だから生産者は、うちの米は売れている良い米だと思っている」(第五回流通部会、六月十四日) こういう調子ですから「中間取りまとめ」のどこを見ても米価を回復させる提案は一つもありません。あるのは「暴落」を起こすために、自主流通米入札の仕組みを改悪し、いっそう「市場原理」を貫くことだけ。これは大企業にますます米を買いたたかせるという宣言にほかなりません。
(2)「稲経廃止」を明言その後の対策は不明さらに重大なのは、今かろうじて米価の暴落から経営を守っている稲作経営安定対策の「廃止」を明言していることです。しかもこれに代わる仕組みはまったく不明確なまま。いま、村で「裏切られた!」という声があがっているのは当然のことです。 なぜ「稲経廃止」なのか? 研究会座長の生源寺真一東大教授によると「稲経は転作参加メリットと、本来持つべきではなかった経営所得安定対策の側面も結果的に担わされた点が問題」、だから、この際全部ご破算にしてしまおうというわけです(「米麦日報」七月十日)。 冗談ではありません。「稲経」は、食管制度廃止と自主流通米入札の値幅制限撤廃の見返りに、「所得対策」の役割をもってスタートしたはず。 これをやめてしまおうというところに、価格保障を敵視する姿勢が露骨に現れています。
(3)副業農家排除はますます鮮明に「中間取りまとめ」は次のように言っています。 「当面の需給調整(注転作=減反のこと)への参加者メリット措置については、これを改めて明確にすることを前提に、現行の稲経は廃止する。現行の稲経の有している経営安定機能が必要と判断される場合には、担い手に対する当面の経営安定対策が担う方向で検討すべきである」 そして、今後の検討課題(宿題)として「現行稲経の廃止に伴う担い手に対する当面の経営安定対策……及び将来の経営所得安定対策の具体的内容」をあげています。 これは (1)昨年、「副業農家」を排除するかどうかでもめた稲経対策は廃止する (2)そして、必要があれば、最初から副業農家などを排除した「新稲経」のようなものを作る(しかし、なるべく作りたくない) (3)こうして米価の暴落を野放しにし、「担い手」=大規模農民からたっぷり掛け金を取って「収入保険制度」(経営所得安定対策)を検討するが、これは文字通り「将来」の課題にする――ということです。 九割の稲作農家を対策からはずし、米価暴落の暴風雨で稲作から排除するやり方はいっそう明確です。
(4)「担い手」農家は「バラ色」か?それでは、「担い手」農家は「バラ色」なのでしょうか? 生源寺座長は「バラ色はありえない」と冷たく言い放っています。生源寺座長によると大規模農家対象の経営所得安定対策が実現するのは「次の次の次」の段階。「(数量)配分自体が不要になり、需給調整がマーケットのシグナルで自然に達成され」る段階です(「米麦日報」七月十日)。 つまり、米価がいっそう暴落し、いやおうなしに稲作を放棄する農家が続出して生産調整自体がいらなくなった後に「経営所得安定対策」が実現するというのです。 「対策」の中身は、数少ない「担い手」が支払う高い掛け金で運営される「収入保険」。暴落による減収を「保険金」でまかなうというのですが、暴落が続いたら保険制度自体がパンクすることは目に見えています。 政府はカナダの「収入保険」をモデルにしていますが、そのカナダではすでに制度が破たんしており、「保険金はせいぜい離農の際の退職金」と言われています。 暴落によって、「担い手」農家の経営自体が窮地におちいっているのが現実です。「担い手」も、「担い手」とは認定されない大部分の稲作農家も、生産意欲が持てるのは価格保障が実現してこそです。この基本からかけ離れた「米改革」では絶対に米危機の打開はできません。
(新聞「農民」2002.8.5付)
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[2002年8月]
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