固定資産税相続税の“引き下げ”取り組めば成果!
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納得できない高い造成費 審査申出氏、減額に | |
自治体税収の45・8%が固定資産税 | |
粘り強い運動が減額へと実る | |
柿の木を切れと不当な脅し | |
施設まわりの納税猶予 |
農業用施設が建っている土地の固定資産税は、平成十二年の評価替えで「農地の価格」に「造成費」を足すようになりました。茨城県つくば市の県南農民組合員・鎌賀一己さん(49)は、高い造成費を下げさせ、固定資産税を減額させました。
鎌賀さんの牛舎が建っている土地の評価額は一平方メートル当たり三千百円。周りの田んぼの評価額は一平方メートル当たり九十七円、畑五十七円ですから、三十倍以上。その差が「造成費」だといいますが、鎌賀さんは自分で造成したので、かかった費用はユンボを借りた三万円だけで、一平方メートル当たり三十五円です。
鎌賀さんは市の担当者に問い合わせましたが、納得できる説明はなく、審査委員会に審査申出。市は「適正な評価をしている」と弁明書を出してきました。鎌賀さんは「農業をやるための土地だから農地として評価してほしい。百歩譲って造成費を足すとしても、自治省(当時)の指導のとおり計算すればもっと安くなる」と反論。
市は、鎌賀さんの牛舎には擁壁がないのに自治省評価室長の積算例をそのまま使い、四〜五倍も過大に評価。鎌賀さんは「擁壁がないのに、あるように評価するのはあまりにもひどい。容認できない」と再反論しました。
その結果擁壁費はゼロになり、評価額は二百六十万円〜百万円と六〇%の減額に。一年分の税額として約二万円が戻ってきました。
不況とデフレの進行で市町村の税収全体が減少するなか、そのしわ寄せが固定資産税に押し付けられています。雑誌『地方税』五月号の「平成十二年度市町村の徴収実績の概況」によると、固定資産税が、市町村税収のトップになっていることがわかりました。
平成十二年度の固定資産税収の市町村税収全体に占める割合は四五・八%。平成元年からほぼ毎年、前年度を上回り、平成元年度に比べて三七%も増加しています。他方、市町村民税収は、ほぼ毎年減り続け、平成十二年度は、四一・二%にダウン。平成元年度に比べて三二%減です。
さらに、大都市、都市、町村の区分でみると、町村において固定資産税収の割合が高くなっています。町村の五三・一%に対して、大都市は四二・二%、都市は四五%です。
今年三月に、三重県伊勢市の約千戸の農家に届いた農業用施設用地の固定資産税の引き上げ通知(ある農家は四百円から一万六千円に)は、市の切羽詰った税収状況のなかで、固定資産税に増税の突破口を求め、その対象が農業用施設用地であったということです。
こうした動きは、多くの市町村の厳しい税収状況からいえば、伊勢市だけの問題とは思えません。今から、「増税を許さない」攻勢的な取り組みを強めましょう。
岡山県の真備町農民組合は、固定資産税引き下げの運動に取り組み、五人のうち四人の減額を勝ち取りました。
真備町農民組合は、二〇〇〇年一月の農民連第十二回大会方針にもとづき、同年三月の組合総会で固定資産税が下がっていなければ同町固定資産評価審査委員会に審査申出することを決定。六月に狩山房太郎会長ら五人が申出。町長が棄却を求めたため、審査委員会へ審査するよう要望書を提出しました。
同年七月に開かれた審査委員会の第一回口頭陳述で、農民組合員は「五人のうち四人が同じ条件なのに狩山会長だけを認めるのは片手落ちで納得できない」と反論。審査委員長は「五人全員を棄却したら、みなさんが怒ると思われるので、一人だけは認めてあげようと話し合った」などと、地方自治法そっちのけのいい加減さ。
農民組合は大阪府連に相談し、不動産鑑定書の提出など五項目を求めて照会書を提出。第二回審査委員会が十一月に開かれ、農民組合は「不動産鑑定書によると三年前より地価が下がっているのに、なぜ固定資産税は上がっているのか」と口頭陳述すると、「来年度から少し下げる予定」と苦しい答弁。三人の審査委員も「勉強してみたら、みなさんの主張には道理があるように思われる」と答弁。
農民組合の五カ月間にわたる運動が実り、二万六千百円、一万四千円、千三百円と固定資産税を引き下げたものです。
千葉県船橋市の税務署員が、二年前に相続税の納税猶予を受けた農家に対して、「この土地には柿の木が三本あり、自家用の野菜を作っているから猶予を認めない。六月中にもう一度見に来るから、柿木を切って、自家消費分の野菜も引き抜いておけ」と脅していたことがわかりました。
この職員はさらに、「だいたい農業委員会の認定は甘い。これから一件ずつ調査するが、あなたはその第一号だ。お気の毒に」と言い残して行ったといいます。
しかし、大蔵財務協会発行の解説書でも、「竹林や栗林は、タケノコや栗の実の採取が目的ならば農地に該当する」と明記しています。
また、家庭菜園についても「自家消費程度の面積であっても住宅と同一敷地内にないものは、家庭菜園とはならない」と定義しており、法律を無視した不当ないやがらせです。
こうした権力をかさに着た卑劣なやり方は断じて許せません。
神奈川県農民連は、毎年のように県と交渉し、施設園芸用地の取り扱いに対する考え方を繰り返し質問するなかで、画期的な回答を引き出しました。
それは、経営構造改善課長名で四月に出した「施設園芸用地等の取扱について」と題する文書。農水省にも照会したうえで出されたものです。
この文書は、農地として認めるものを次のように示しています。(1)農地に形質変更を加えず、棚、農作物の栽培用資材等を設置して農作物栽培をおこなっている土地、(2)その農地の農作物の栽培のために設置することが必要不可欠な通路等の用地。通路部分が舗装されているかどうかは問いません。
つまり、舗装してある進入路も、花栽培用のベンチも、ボイラや堆肥場などもすべて、納税猶予の対象になるということです。
この成果を活用して、全国各地の施設園芸用地の相続税、固定資産税の軽減の運動を進めましょう。
同時に、直売所施設、水耕栽培用地、平地林、市街化区域内の畜舎なども、農地に認めさせるとりくみを強めましょう。
[2002年7月]
農民運動全国連合会(略称:農民連)
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