安全対策、所得補償など万全に狂牛病がなぜ日本で英国が肉骨粉大量輸出/日本政府の対応遅れ
「狂牛病が、なぜ日本でも発生したのか」――。それは、第一に日本政府が防疫対策を怠ってきたため、第二にイギリスが危険性を知りながら肉骨粉を大量に輸出したため。日本の畜産農家は、まったくの被害者であり、何の責任もありません。
肉骨粉を輸入し続けた農水省狂牛病汚染の危険があるヨーロッパからの肉骨粉輸入を昨年末まで続けて、肉骨粉の使用を発生後の九月にようやく法的に禁止した農水省。対策の後手後手ぶりは明らかです。ところが武部農相は九月二十五日の記者会見で「本当にプロという自覚があれば、行政指導が徹底していないからというようなものではなく、きちっとされてしかるべき」と、責任を農家になすりつけました。しかし農水省が九六年にやった行政指導は、“牛用に肉骨粉を使わないように”という、いっさい強制力のない飼料メーカーへの通知だけでした。 そして九六年以降もイタリアやデンマークなど、狂牛病発生国から八万トン以上の肉骨粉を輸入し続けてきた農水省。同省は、世界保健機関(WHO)や国連食糧農業機関(FAO)が「狂牛病の発生が拡大する可能性がある」という勧告を発していたにも関らず、今年六月、EU科学委員会の報告書を「必要以上に危険性が強調される」と拒否して葬り去りました。 その内容は、表にあるとおり「日本も、狂牛病発生の可能性がある」というもの。やるべきこともやらずに“日本に発生するはずはない”とタカをくくって、国民を狂牛病の危険にさらした同省の罪は重大です。
英国輸出で「第二次パニック」日本が肉骨粉を大量に輸入したイタリアは今年、三十二頭の狂牛病が発生しました。フランス、ドイツなどでも近年、再び狂牛病の発生が増加し、「第二次狂牛病パニック」と呼ばれる状態です。これは、イギリスが九六年までに、その危険性を知りながら自国で売れなくなった肉骨粉を他国に大量に売ったからだといわれています。日本は九〇〜九六年に同国から五百六十六トンの「骨粉」を輸入していました(「貿易統計」)。またイギリスの関税物品税庁の資料によると、同じ期間に同国が輸出した肉骨粉の量は十三万トン以上にのぼり、とくにインドネシアやタイなどアジアの国々に多く輸出されていました。自国が味わった狂牛病の惨禍を、アジアをはじめ他の国々にも広げるこうしたイギリスのエゴイズムは国際社会の中で糾弾されるべきです。 同時に、日本の畜産農家に輸入牛肉との価格競争を強いる牛肉の自由化をはじめ、何でも海外の安い農産物を輸入すればいいと、食糧自給率を低下させ、食品の安全性をないがしろにしてきた自民党農政の転換が求められます。
(新聞「農民」2001.10.29付)
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[2001年10月]
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