この目で見た!中国・黒竜江省の米作り現地視察ツアーに参加して(下)
“日本人が食べる米は日本でしか作れない…と確信した”低賃金を競わせる日本の商社横山 農業技術が中国の農民や国土に根づいたものになっていないのは、商社が自分たちの目先の利益のためにやっているだけであって、中国の国民や中国のためにやっているわけではないからでしょう。ねらいは低賃金だけ。中国の農民と日本の農民、日本の消費者が一番被害にあっているというのが実感でした。白石 そう、ひたすら低賃金依存で、商社が知恵を発揮しているわけでないし、努力をしているわけでもない。商社の役割はとんでもないとつくづく感じました。 真嶋 もともと経済の発展段階に応じて賃金の格差はあった。ところが日本の商社が介在して、日本の農民や労働者を三十分の一の賃金で作ったものと競わせているこういう実態をもっと訴えなければ。 横山 中国の低賃金は固定化し、日本の賃金を引き下げる方向ですからね。 日本政府が、商社の進出にあわせて果たしている役割も無視できない。政府は円借款で黒龍江省に商品穀物基地開発や新華農場に精米プラント作りを援助している。総額約五百億円ということだが、日本国民の税金で水田などを開発し、精米機までそろえて米を輸入するこれは、国民的な議論をしていくうえで、大事な点です。
開発輸入テコ入れの援助中止を真嶋 少なくとも日本の農業をつぶすような援助は困る。現地の人たちが食べるものを作るための援助にすべきですよね。白石 北海道の農業技術者がかなり中国へ技術援助に行っていますが、彼らは「中国の人たちが腹一杯米を食べることができるようにしたい」という視点で技術援助をやってきた。しかし、商社が介在して、日本に米を輸入するなんて、とても許せるものではないというのが、こういう人たちの思いでしょうね。 石黒 ワカメも技術指導をして、中国で作り、セーフガードを発動しなければならない事態です。 真嶋 まともな援助は必要だけど、日本にはねかえらないような措置を政治がとるべきです。できないことではない。 佐藤 そういう規制はやらないで、日本の農民には四割の減反をおしつける。こんな逆立ちした話はない。
自然条件に恵まれた日本でこそ佐藤 実は、新聞「農民」の特集(七月九日)を見て大変なショックを受けたんですが、現地に行って水や品種の問題を知って、思いを新たにしました。いま、あちこちで報告集会を開いて「消費者とがっちり手を組んで、うまい米、いい米を焦らず、じっくり作ろうではないか」と大いに訴えています。堂前 ハルピンでは雨が降ったら、みんな喜んで、雨に濡れるのもかまわず植木を外に出していたよね。 真嶋 中国東北部では、雨が降れば「いい天気だ」と言うそうですよ。 白石 農業にとって、水がどんなに大事か、日本がどんなに恵まれた条件かを実感しました。 小林 中国を見て、人口が多いことや雨が少ないことを勘定に入れないで「あんなに広いところで米や野菜を作られたら、日本はもうダメだ」と諦める人もいるけど、冗談じゃないよね。ひとたび農業生産が絶えて十五年〜二十年たったら、水路もなくなっていた、作り方の技術もない、種もないということになる。 白石 生産基盤が全部失われて、突然、思い出したように「さあ、やるか」と言われても、絶対にそうはいかない。 堂前 中国の人々の生活レベルが上がって、日本に売るものはありませんといわれたらどうするのか。やっぱり、日本人が食べる米は日本で作るしかない。 横山 野菜では残留農薬の問題があるが、米だって玄米で日本に持ち込めないのでは、氏素性を明らかにして安心できる米として販売できない。 堂前 中国で見たのは真空パックではなく普通の包装だった。あれでは燻蒸するか、ポスト・ハーベストが必要でしょう。 真嶋 やっぱり「ものを作ってこそ農民。作らなければ、国内市場を輸入農産物に奪われてしまう」という意気込みで運動を強める必要がある。
“もの作る国”へ国民第運動を小林 安全性の問題があるし、もう一つは日本中の産業が空洞化してしまう。農民のことだけではなく、労働者、消費者全体の問題です。こういう点のアピールが必要だと思う。真嶋 現地で案内してくれた人が「テレビなどの“三種の神器”は十年前までは大連の市民にとっても高嶺の花で、ほとんどが日本製だった」と説明してくれました。私が「いま、日本には中国製のテレビや洗濯機が氾濫している」と話したら、びっくりしていましたが、ここまで来ている。国際競争力のない分野は撤退するか、海外進出しろというのが「小泉改革」の基本方針だから、農産物だけにとどまらない。 石黒 衣類なども中国から輸入している。日本の繊維が全部ダメになってしまう。 堂前 岩手県に誘致された企業では、三分の一くらいが中国人労働者になっているところもある。 佐藤 私の町の縫製工場にも中国の労働者が入ってきて、地元の女性労働者がリストラされています。 真嶋 多国籍企業が、各国の賃金・物価格差を「世界共通市場」に投げ込み、三十分の一の低賃金を基盤に作られる工業製品や農産物との競争にさらし、日本の大企業は二社に一社が海外移転を考えているという事態です。このままでは、日本が「ものを作らない国」「人が住めない国」になってしまう。そういう事態を許さない国民的な運動が求められている。 農民連は、セーフガード発動の問題では世論と運動の火付け役を果たしてきた。ここにも確信をもち大いに頑張りたいとおもいます。 (おわり)
(新聞「農民」2001.10.22付)
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[2001年10月]
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