「農民」記事データベース20011015-512-03

暫定セ−フガード修了1ヶ月前

本格発動と品目の拡大を 第2弾

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タマネギ

価格低迷の中もはや限界

北海道

 昨年以降、タマネギ生産者は深刻な事態です。私は九ヘクタールのタマネギ畑と連作障害をくいとめるために、小麦を作付けていますが、今年の価格のメドがつかず、収穫作業に追われながらも悪戦奮闘の毎日です。

 市場で取引されているタマネギ価格はL玉で一キロ五十五円、手数料を引くと五十円を割り込みます。

 今年の収量は一反当たり五トンくらいを予想していますが、L玉に入るのは約六割くらいで、さらに夏の長雨の影響で軟腐病や腹腐れなどの病気がつき、約一割くらいは廃棄せざるを得ないことから、今の価格では採算があいません。保管倉庫で出荷時期をできるだけ調整しながら、何とか収入を確保しようとしていますが、価格低迷のもとでは、もはや限界です。

 周りの農家と話しても、「最低でも、平均して一キロ当たり六十円ないとやっていけない」というのが共通の願いです。こんな事態にもかかわらず、なぜタマネギがセーフガードの対象から外されたのか、まったく不満の極みです。

 タマネギ価格の暴落・低迷の原因が輸入の急増によることは、北海道庁の調べでも明らかになっています。何としてもタマネギをセーフガードの品目に加えていただきたい。私自身も運動の強化に力を入れていきたいと思っています。

(岩見沢市 前田善治)


ショウガ

特産品が減少 意見書採択へ

高知

 高知県の農村地帯では、いまビニールハウスのビニール張りが盛んに行われています。

 隣近所や知人、友人の応援を得て、七、八人がグループになって作業をしています。農家の人たちに話を聞くと、「なんとか市況が良くなって、経営が成り立つようになってほしい。しかし、輸入農産物が激増する現状では期待できない」などと作業の手を休めて口々に言っていました。

 高知県園芸連の販売額は一九九二年の九百三十四億円をピークに低迷が続き、一九九九年の七百六十四億円、二〇〇〇年の七百八億円と、三年連続の前年割れの状況です。

 園芸農業は高知県の基幹産業とされ、県全体に与える影響が大きく、危機感が高まっています。県農林水産部とJA、生産者が一体となって、昨年九月から「園芸こうちパワーアップ戦略会議」を開き、園芸農業の建て直しに躍起となっています。

 高知のショウガは水田転作作物として定着し、特産品となりました。しかし、中国のショウガの輸入が激増し、高知のショウガの生産量が年々減少。一九九三年には中国からのニンニク、ショウガの輸入急増が大問題となり、生産者にも大打撃を与えました。

 高知県農林水産部の調べによると、一九九三年の国内のショウガ生産量は二万七千二百トンでしたが、二〇〇〇年には一万二千二百トンと半減。一方では輸入量は逆に二万六千六百二十六トンから四万七千八百二十六トンと一・八倍に増えています。

 現在、二〇〇〇年産のショウガは、一年近く貯蔵したもので一キロ百五十円(庭先価格)で取引されています。農家にとっては、二百円しなければ採算があいません。

 高知県農民連は、セーフガードの発動を求める意見書をすべての市町村で議決させました。この力でさらに全県下の自治体に対して三品目の暫定セーフガードにとどめず本格発動させ、輸入によって打撃を受けている他品目への拡大をめざして意見書を採択させようと取り組んでいます。

(高知農民連 藤田忠雄)


ナス

希望がもてる農業のために

群馬

 群馬の西毛農民連群馬町グリーンクラブのAさん(51)は、ハウス三十アールのナスを主力にタマネギ、キャベツ、ホウレンソウ、白菜などの露地野菜を夫婦と年老いた両親の四人で栽培している典型的な園芸農家です。

 二十数年来、仲間たちと土作りに打ち込むなど研修を重ね、群馬ナスの名声に一翼を担ってきました。八年前、従来のパイプハウスに加え、十二アールの鉄骨ハウスを作るために思い切って八百万円を借り入れて千二百万円を投じて新築しました。

 当時のナスの値は五個入り一袋が二百円前後で安定しており、努力すれば十分に収益が保証され、総収入の八割を占めるまでになりました。ところが、四年前頃からナスの値下がりがひどくなり、ここ数年は平均すると一袋百二十円から百三十円しかなりません。百万円から百五十万円の減収です。

 前は季節によって高値が出たりしましたが、この頃は梅雨時さえ値が出ず、安値にとどまっています。

 Aさんは「高校一年と小学六年の男の子二人の教育費や諸経費は増えていくので、新築ハウスの借入金の返済百十万円は仕方なく定期貯金を取り崩してあてている。セーフガードをぜひナスにも適用させて、安心できる水準に価格を回復させ、希望を持って毎日働きたい」と語気を強めました。

(群馬農民連 住谷輝彦)


農水省交渉

 農民連と食健連は十月一日、セーフガードや狂牛病などの問題で農水省と交渉しました。セーフガードでは長ネギ、生シイタケ、畳表(イ草)の三品目を早く本発動し、タマネギ、ピーマン、トマト、ナス、ショウガ、ニンニクなど輸入急増している野菜や果物、果汁などのセーフガード調査を始め、発動するよう強く要求。また、狂牛病の原因の徹底究明と感染の予防、農家への損害や風評被害に対する万全な補償を要求しました。

 代(食健連・農民連) あと一カ月後に暫定の期間が終了するが、三品目の本発動はいつやるのか。

 官(農水省) 正式にはまだ判断していない。

  暫定発動したのは、輸入による影響が深刻で待てないと判断したからではないのか。

  今年四月時点では、そういう判断だった。

  本発動を前提にして準備してきたのではないのか。本発動の準備はどうなっているのか。

  三省(財務、経済産業、農水)で検討しているが、十月下旬までに決めなければ間に合わない。

  タマネギ、ピーマン、トマトは輸入の影響で大変だということで、農水省は監視品目にした。WTO協定では「重大な損害の恐れがあるもの」もセーフガードの発動対象になると書かれている。農民は深刻な事態に置かれている。発動の調査にすぐ入るべきだ。

  WTO協定では、発動には、輸入量の増加、絶対量など九項目の条件をつけている。それをクリアしないと発動の対象品目にはならない。

  そんな項目を決めている条文はどこにあるのか。

  いま資料を持ち合わせてないので、即答できない。あとで知らせる。

  現場の農民の実態を知っているのか。都合のいい数字を取り上げて、調査に入らないようにしているとしか思えない。

  未来永劫に調査をしないとはいっていない。

  われわれ農民は、待っていられない。「政府を守る」のではなく、農民を守るために早急に本発動と他品目の調査に入り、発動してほしい。

 狂牛病問題では、「なぜ対応がいつも遅れるのか。しかもコロコロと対応が変わり、信用できない」と厳しく農水省の責任を追及するとともに、原因を徹底究明し、万全な対策をとるよう要望しました。

(新聞「農民」2001.10.15付)
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2001年10月

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