「農民」記事データベース20010129-478-08

2001年1月15日

農民連第13回大会報告

農民運動全国連合会常任委員会


 大会参加の代議員・評議員のみなさん、貴重な前進を勝ち取ったこの一年間のみなさんの活動に心から敬意を表したいと思います。

 常任委員会の報告は、決議案の項目に沿って、(1)決議案の中心点および補強、(2)決議案発表後の情勢や運動の進展、(3)決議案に対する質問や意見への回答について提起し、みなさん方の討論で確信が深まる決議となるよう、ともに努力したいと思います。

 決議案は「21世紀! 国民諸階層と団結して、WTO協定改定を! 農業・農山村の復権を!」のスローガンにあるように、二十一世紀は、WTO協定を改定し、農業・農山村の復権を勝ち取って、誇りをもって農業ができる時代にするために、国民諸階層と団結してたたかうことを呼びかけています。

 歴史にはジグザグがあります。一路農業がダメになるわけでも、一路前進というわけでもありません。しかし、歴史は着実に進んでいます。

 ここ二年、たてつづけに「驚いた、こんなことが起きるんだ。やればできるんだ」ということがありました。九九年にはWTO閣僚会議が決裂し、WTO協定とアメリカへの批判と抵抗が世界の本流であり、WTO協定は改定できる! という展望をつかみました。昨年は、あれほど頑強に拒否し続け、ただの一度もやろうとしなかった緊急輸入制限(セーフガード)の発動に向けた調査を、政府が開始しました。

 これらは自動的に起こったことではなく、日本と世界の農民・国民のたたかいの結果です。

 農民連は、他の農民・農業団体があきらめてたたかおうとしなかったこれらの課題に全力をあげてたたかってきました。われわれの主張やたたかいが本流であることは、これらの事実が証明しています。二十一世紀初年度、確信をもってたたかいを進めようではありませんか。

 また、農業や国民の暮らしを押しつぶす政治を続けてきた自民党は、昨年の衆院選挙では、ついに国民の二割しか得票率を得られない政党に落ち込みました。第二次森内閣が発足しましたが、支持率は一〇%台に低迷しています。

 「しかし、彼らはどんな場合でも自ら政権を放り出すことはなく、たたかいによって追い詰めるしか、農業も国民生活も守る道はありません。それだけに、国民のたたかう主体的な力を大きくすること、農民連が数十万の力をもつことが政治を変え、農業を守るうえで決定的に重要になっています」(決議案)。

 農民連への注目と共感が広がっている今こそ、新聞「農民」と会員の拡大の飛躍を実現しようではありませんか。

I 「情勢をどうみるか」 ―情勢の二つの側面を しっかりとらえよう―

 決議案は、情勢の二つの側面――きびしい側面とたたかえば切り開ける側面――を指摘していますが、これをしっかりとらえるかどうかは、農民連の活動でも、農協など農業団体や自治体の対応を判断し共同を広げる場合でも重要です。このことについて若干ふれておきたいと思います。

 価格暴落の原因である輸入激増の背景をみれば、今のきびしささえ「序の口」にすぎないことは事実です。しかし「情勢の厳しさをどんなに強調してもそれは解釈しただけです」(決議案)。中国の農業を視察して落胆し、「生産計画を縮小する」という結論を出した人たちがいる一方で、新聞「農民」(一月十五日号)「冷凍野菜から農薬」にあるように、中国視察で目撃した収穫直前に農薬をかけている事実を、分析センターがデータで証明したことで、これには負けない、おおいに作ろう、作らなければその分輸入が増えるだけだという声が高まっています。

 セーフガード発動を求める自治体決議が六三%に達している秋田県に、政府のゴマカシに左右され、亡国農政の片棒をかつぐ結論を出した議会があります。

 「自主流通米の値幅制限方式が廃止され、実勢反映方式が実施されている現状では、復活は困難である」「農水省局長は、自民党農林水産物貿易対策特別委員会で、価格下落の原因は気象による国内生産の増大であり、セーフガードの発動要件を満たしていない」という理由で、ただ一つ秋田県農民連の請願を不採択にしたこの議会の議員は、町を歩けないというほど町民から大きな批判を受けています。

 また、輸入激増の背景と重大性をとらえきれないために、視野が狭くなり、運動をせばめている事例もあります。

 ある単組では、今の産直だけで十分だから、市場出荷は産直センターでやってもらおうと主張し、会員に情報も伝えず出荷の機会も与えていないところがあります。これでは今の産直も進まなくなるでしょう。

 セーフガード発動を求める自治体決議が七三%に達している宮崎県のある農協では、安値であった昨年八〜九月に、ピーマン生産者に対し、今後は輸入がもっと増えるから他の作物に転換するよう指導しました。十二月に値が上がると、セーフガード発動の対象品目に農水大臣があげているにもかかわらず、「韓国では重油などの補助が打ち切られたから大丈夫だ」とセーフガード発動の要請さえしませんでした。

II 「切り開いた運動の教訓 をすべての会員の確信 にしよう」について

1、すべての会員の活動を反映した運動の総括を大事にしよう

 農民連は、厳しい情勢のなかでも決議案にあるような多くの成果をあげ、情勢を切り開いてきました。しかし、営農や暮らしをめぐる危機的情勢に対応するには、運動と組織の飛躍がどうしても必要です。

 会員の自主的・自発的な運動を中心にすえることが運動と組織拡大の飛躍を保障する最も大事なポイントであり、これにつきると言っても過言ではありません。

 そのためには「WTO協定は改定できる」「セーフガード発動で政府を動かした」「多様な産直や市場への出荷で営農の展望がみえてきた」ことなどがすべての会員の確信になる必要があります。会議や寄り合いで、全国的な成果と農民連の方針に沿ってみんなで決めた会員個々人の行動が結びつくことが確信につながります。

 方針をどうやりぬいたか、運動がどこまで到達したか、何が足りなかったかを総括するうえで大事なことは、県連から班にいたるまでの会議や寄り合いで、方針をすべての会員に伝えたかどうかをまず明らかにし、すべての会員の声に耳を傾け、どんな小さな成果も評価し位置づけることです。そのなかでお互いに学び激励し合って、すべての会員が条件に応じて運動に参加できるよう努力しましょう。

2、『農民連は何をめざし、どうたたかうか』テキスト『歯止めのない輸入・価格暴落、これとどうたたかうか』ブックレットの学習運動を

 (1)『農民連は何をめざし、どうたたかうか』(テキスト)は、全国の進んだ事例や、困難をどのようして打開したかという事例を具体的につかみ、何から始めるか、何を中心に取り組むかを知ることができるようにぜひ作って欲しいと全国から要望され、十年間の活動を総括し、農民連の十周年を記念して九九年に発行されました。一人一人の会員の悩み、営農をどのようにしたらいいか、活動するうえで悩んでいることや疑問に思っているすべての分野にわたって、運動の歴史や内容、組織の運営、役員や専従者の活動など、どこから読んでもよいように編集されています。

 また、いま農民の苦悩の最大の原因であり、国民の不安が増している輸入農産物の激増とたたかい、どうすれば農産物の価格暴落を食いとめられるのかについて、詳しい背景分析とともに、運動の展望と進め方を具体的に解明したのが『歯止めのない輸入・価格暴落、これとどうたたかうか』(ブックレット)です。これらを、いつでも手元に置いて、会議や寄り合い、学習会で活用しましょう。すべての会員に届けましょう。

 (2)学習運動というと、硬く構えてしまったり、「こんな長いものを読まない」という声も聞こえたりしますが、いま農民連の仲間だけでなく、すべての農民が怒りに燃えています。どうしたらいいのか苦悩の毎日です。一度手に取れば「砂が水を吸い込むように」一気に読んだという事例がたくさん報告されています。

 一度読んだから終わりでなく、実践しながら学習し、討論し、新たな課題にも挑戦し、探究しましょう。

(新聞「農民」2001.1.22・29付)
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