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2001年1月15日

農民連第13回大会報告(続き)

農民運動全国連合会常任委員会


III 「二十一世紀初年度に ふさわしい運動を」―今 年度の運動方針について

 農業崩壊の危機に対し、どんな展望でたたかうか、どんな要求、政策で運動するかについて、決議案では、包括的な方向と内容にとどめ、別に「当面の要求と政策」(別紙)をまとめました。決議案討議の過程で出された意見を組み込んでありますが、大会の討議で豊かにしていただきたいと思います。

 これらの要求は、政府がその気になればいつでも実現できるものです。これらの要求をすべての農民の要求として発展させ、国民合意の運動で世論に高めていこうではありませんか。

1、「二十一世紀初年度にふさわしい運動」とは

 農民連は、二十一世紀最大の課題の一つである食糧・農業問題の解決は、WTO協定を改定することにあると考えています。WTO農業協定は「農業生産を刺激する措置をとってはならない」ことを基本にしており、世界と日本の多国籍企業が儲けをどこまでも追求できるようになっています。世界の農業が縮小され飢餓人口が増え、食糧を確保できない国を増やすことで、各国の独立を脅かし、アメリカの世界支配を進める手助けになっています。

 このことは世界の多くの発展途上国やNGO(非政府組織)の間では常識となっており、九九年のWTO閣僚会議の決裂にあらわれているように、WTO協定改定を求める声が世界の流れとなりアメリカを包囲しはじめているのです。昨年二月に食健連と共同して行った国際シンポでみなさんも実感されたように、アメリカにくっついて世界の流れに逆行した日本政府の姿勢を変えることが、日本のためだけでなく世界に貢献する課題になっています。

 自民党政治は、食糧・農業問題だけでなく、景気回復も社会福祉の向上も解決する能力がないことは、昨年の十二月中下旬に出されたWTOへの政府提案や二〇〇一年度予算政府案が改めて証明しています。国民の第二次森政権支持率の低さにあらわれているように、国民諸階層と団結してたたかえば政治を変えることができるときを迎えています。

 二十一世紀の初年度にふさわしい運動とは、営農や暮らしが成り立つ実利の運動を大きく前進させつつ、WTO協定改定、WTO協定に沿って作られた新農業基本法・食品衛生法の改正の運動を発展させ、悪政の推進者・自民党政治を終わらせる確かな布石を打ち、数十万農民連の建設をめざし飛躍をつくり出す、その第一歩を踏み出すことです。

2、農産物の暴落・流通問題について

(1)緊急輸入制限(セーフガード)発動を実現し、外米輸入(ミニマムアクセス米)の削減・廃止を求める運動
 この項目では、政府のセーフガード発動の調査開始をどうみるか、運動の広がりと高まる関心と要求、実現のための運動の提起をしたいと思います。

(1)政府の動きをどうみるか
 自民党政府はこれまで、一貫してセーフガード発動を拒否してきました。理由は、農産物の価格暴落は輸入によるものではなく、豊作と消費減退にあるというものです。それでも昨年の十二月十九日、発動のための調査を決定したことは、政府が考え方を変えたのではなく、農民の切実な要求を背景にした世論と運動に押され、これ以上抑えきれなくなったためです。農民連・食健連を中心とする運動でここまで追い込んだことは、歴史的な前進です。

 同時に、発動のための調査を開始しただけであって「政府関係者が『参院選挙を前に、(自民党の)議員たちも殺気だっている。少なくとも格好はつけないと…』と述べているように」(「朝日」十一月二十五日)発動を実現するたたかいはまさにこれからが正念場です。

 農水大臣が大蔵・通産大臣に要請した六品目(ネギ、トマト、ピーマン、玉ネギ、生シイタケ、イ草)のうち、三品目(ネギ、生シイタケ、イ草)にしぼったのは、きわめて政治的なものです。この三品目は中国からの輸入がほとんどを占めます。中国はWTO未加盟の国であり、実効ある措置をとらずに、参院選挙用のアドバルーンをあげて二国間交渉をするだけでお茶を濁す可能性があります。輸入の六割をアメリカが占める玉ネギを除外したことでアメリカとの対決を避けたことは、アメリカに頭があがらない自民党政府の限界を示すものです。

(2)運動の広がり、高まる関心と要求
 (a)セーフガード発動を求める決議をした自治体は昨年の十二月議会でも大きく前進し、都道府県議会では六二%(二十九道県)に達し、市町村議会では三百六十六の自治体が増え千自治体を超えました。過半数の自治体を超えた県は秋田(五九%)、岩手(五二%)、山形(五九%)、福島(五一%)、群馬(七一%)、埼玉(五四%)、和歌山(五二%)、鳥取(五四%)、佐賀(六二%)、宮崎(七三%)で、新潟県(四六%)や茨城県(四一%)も過半数に迫っています。

 (b)この運動では多くのドラマが生まれ、農村の変化を実感しました。

 鳥取県連は、全国連の提起を真正面から受けとめ、昨年九月議会に、組織のあるところは請願で、ないところは陳情で全自治体に送りました。回答があった二十三自治体のうち七割の自治体で採択され、「良い請願だ。時宜に適したものだ」と議員や議会事務局関係者からの反応がよく、勢いに乗って十二月議会に向け、十四市町村をエリアとする単位農協を訪ね、ともに運動するよう訴えましたが、同調しませんでした。しかし、農協県連大会で農民連と同じ内容の特別決議がなされ、地元新聞がこれを報道しました。十二月議会では多くの自治体から「意見書案と資料を送れ」と声がかかり、一気に過半数を超えました。「農家の要求の切実さと農村の情勢の変化に確信をもった」ということです。

 和歌山県のある自治体では、農民連が四百名近い請願署名を添付して請願しました。継続審議となりかけたところ「県議会で採択されたのになぜ採択しないのか」という議員の発言から、議員発議で進めようとしました。ところが「請願が出ているのになぜ議員発議か」が議論となり、最終的に農民連の請願が全会一致で採択されました。農民連・食健連が農協や自治体を回って運動したことで農協が動きだし、署名を添付したことで採択せざるをえなかったわけで、「本当に情勢は動いているし、動かすことができる」ことを実感したということです。

 宮崎県では、採択された請願のすべてが、農民連の請願でした。単位農協はどんなに訴えても行動を起こそうとはしませんでした。農民連が運動の先頭に立って七三%の自治体が決議しましたが、「農民の要求がいかに切実であるか」を実感したと言います。

 全国で共通していることは、これまで「農民連の請願」というだけで不採択にしていた自治体が大きく変化しはじめていること、保守議員も同調するところが増えていることです。

 全国的には単位農協の請願が増えていますが、「全中が自民党政治と共同歩調をとる一方で、単位農協は農産物輸入の急増と減反強化のはさみ打ちにあい」(決議案)苦悩しています。単位農協の対応に差がありますが、その責任は全中・全農にあります。「セーフガードの発動は困難だ」と、政府と一体になって言い続けてきたからです。何の反省も釈明もしないまま、農民の声の高まりに驚いて「突然請願しましょう」と言っても、戸惑う単位農協が出て当然です。

 農民が塗炭の苦しみの中にあるときに、全農の子会社である組合貿易が、組合員そっちのけで、大企業、商社の米の完全自由化を視野に入れた外米輸入(SBS米輸入)に加担しています。暴落に泣いている野菜農家を尻目に、野菜まで輸入しています。

 今のようなときこそ、協同組合の精神を発揮して農民を守る立場に立つべきです。

 セーフガードの発動のための調査を開始するWTO(世界貿易機関)への通告は、アメリカも韓国も「農民の多数を組織している団体からの要請を受けたから」という簡単なものです。この事実を突きつけ、全中がその気になって政府に迫れば、輸入が激増しているすべての農畜産物に対するセーフガード発動を、より早く実現できるのです。

 農民のためにできることもやらず、逆に苦しめる行動をとっている全中・全農から農民が離れていくのは当然であり、ここでまともな対応をしないのならその存在意義はありません。本来の協同組合の精神に戻って欲しいという農民の切なる願いに応えるよう強く要求するものです。

 「セーフガード発動など理想論だ」と言っていた農民も、やればできるという自信を持ち、農民連の運動に共感が高まっているいま、単位農協や農業委員会にまわりの農民とともに働きかけを強めましょう。

 (c)運動は農村だけでなく、都市の労働者にも広がっています。

 労働者・労働組合が、セーフガードの発動を単に農民への同情でなく、わがことと受け取り、千代田区・中央区という東京のど真ん中で署名・請願行動にとりくみました。その背景には何があったのでしょうか。

 全国一般労働組合は「リストラや賃下げが横行するなかで、これまでのような賃金引き上げの運動では労働者の要求は実現しない。全国一律最低賃金制度を確立する運動を基礎にしよう。その際、この最低賃金を農民の労賃や業者の工賃の最低額として保障する制度にし、働く者全体の底上げをすることが労働者の賃上げ実現の道である」と、研究会・学習会を進めてきました。農民連にも呼びかけがあり参加してきました。価格暴落に悩む農民の実態を聞き、全国一般労働組合、区労連は「自らの問題としてセーフガード発動を求める行動を起こすべきだ」と立ち上がったのです。要請を受けた千代田区の保守の議長は「私も賛同する」と言って議長提案で議会に提案しました。「二十一世紀の食糧問題は深刻だから当然だ」「消費者への価格は高くならないか」など議論も沸騰し、閉会中審査になっています。

 また、昨年十二月十九日の通産省交渉のときでした。貿易局の役人が「通産省には、国内産業を守るという法令はない」などと暴言を吐いたのに対し、「価格暴落で自殺者や夜逃げが出ており、種を播こうかどうかと不安を抱え、一刻も早くセーフガード発動を求めている。公務員の君たちが人事院勧告で給料が下がったなどというのと訳が違うんだ。公務員も大変だなどと言ったって、この体たらくでは誰が支援などしてくれるものか」と詰め寄ったのは労働組合の代表者でした。

 交渉参加者がもう一つ頭にきたのは、この交渉の最中に三品目の調査開始の決定を記者会見で発表していたことです。当事者である我々にこそ、まずその場で伝えるべきではないですか。「『陳情』だから聞き置くだけ」という不遜な姿勢のもとでは、国民世論をつくる大運動がなかったら調査開始決定などいつになったか分かりません。

(3)実現するための運動を
 農民連は、運動と要求の広がりが出てきているいま、一気に大運動に発展させ、輸入急増を食い止める実効ある措置がとられるまでたたかいます。(a)三品目のセーフガード発動を直ちに行い、実効ある措置をとること、(b)残りの三品目はもとより、輸入が激増している他の作物、果樹、畜産物、加工品など対象品目を広げることを要求します。

 勝負は地域にあります。

 (a)セーフガードは「国内生産者に重大な損害を与え、または与える恐れ」があれば発動できること、政府がその気になれば簡単に調査開始、発動ができることを大宣伝しよう。

 (b)すべての農協・農業委員会、自治体を目標に、決議・意見書提出の運動をしよう。県内で過半数の自治体が決議した都道府県の数が過半数になれば、全国知事会の要請として論議されます。一刻も早く県内で過半数を制しよう。その際、全国の教訓から学んで、決議をしていないすべての自治体に請願すること、農業委員会や農協を訪問して訴える地道な活動を進めること、みんなで話し合って請願署名や訪問の分担をすること、保守議員も含めて要請し、分かりやすい資料や意見書案を提起することを重視しよう。

 (c)集落を基礎に、地域の農産物の価格、営農の実態を、大会資料にある輸入激増の品目を参考に出し合い、農協や農業委員会、自治体に働きかけて、具体的な農産物に品目名をあげてセーフガード発動を政府に求めていこう。

 政府は調査・意見聴取を三〜四月に行うという悠長ぶりです。埼玉県のように自治体が独自の調査をし、政府に送りつける運動をしよう。

(4)この運動をWTO協定改定につなげていこう
 (a)この運動のなかで、WTO農業協定、SPS協定(衛生・植物検疫協定)が、農業や国民の安全にとっていかに害悪であるかを語り、これに沿って作られた新農業基本法や食品衛生法の改正も訴えていこう。

 (b)WTO農業交渉に対する政府提案(政府・自民党・全中の三位一体で作られたもの)の対案として、食糧主権を認めさせ、農業をWTO協定からはずすことを提起していこう。詳しくは別に報告がありますが、美辞麗句を並べた提案に、WTO協定が農業生産を刺激する政策をとってはならないことを基本にしていることに対する批判は全然なく、食糧主権を求める文言もないこと、世論に押されてミニマムアクセス米輸入の削減を入れたと言いながら、こっそり技術的な書き方でお願いしている程度の弱腰であること、いわんや外米輸入の廃止という文言はどこにもなく、「究極の問題」とされていることを知らせていこう。われわれの対案は、世界の流れになっているもので、日本政府が主張すれば、WTO協定の改定を実現できることを訴えよう。

 農民連はWTO農業協定の以下の項目を改定することを要求します。

 (1)「例外なき関税化(自由化)」の強要をやめよ

 (2)とりわけ不合理・不公正きわまりない「ミニマム・アクセス」を廃止せよ

 (3)価格保障政策など「国内助成の削減・廃止」の強要をやめ、各国の条件に見合った農業政策を実施する権利を保障せよ

 (4)多国籍企業による買いたたきとダンピング輸出をやめよ

 (5)食料の安全確保は各国の主権。「衛生・植物検疫協定」(SPS協定)の抜本的改定を。

 (6)食糧主権と農業の多面的機能を尊重し、アジア・モンスーン農業を含め、条件や形態が大きく異なる世界各地の農業が共存できる新たな国際秩序を作れ。

(2)自主流通米値幅制限の復活と価格保障を求める運動
 (1)米価の暴落を食い止めるには、外米輸入廃止とともに自主流通米の値幅制限の復活は緊急課題です。今度農水副大臣になった松岡勝利自民党農政基本問題小委員長が「稲作経営安定対策はあと二年と持たない」とどんなに嘆いても、この二つの課題を解決できない自民党政治では袋小路に入ってしまうだけです。買いたたきを野放しにして補償しても、米価は下がる一方です。

 値幅制限の復活は、法律を変えなくても、予算を増額しなくても、WTO協定を改定しなくても、大臣の一声で決まることです。農民連は、少なくとも値幅制限廃止以前の一俵二万円を基準にした値幅制限を求めます。

 (2)値幅制限復活を勝ち取ることは、政府が果実や野菜でも同じ考えで対処しようとしているだけに、大きな影響を与えます。ミカンやリンゴなどの果実の価格補償も、ジュースも含めた輸入制限と生産費を償う価格をもとにした保障を要求していきましょう。

(3)全国すべての農家が一致してたたかえるとき
 輸入しながら史上最大の減反をさせ、ものを作らせない自民党農政は、農民の苦しみをさらにひどくし食料自給率の低下を必然的に招くものでしかありません。なぜなら、このことは米だけに限らず、果実や野菜、畜産すべてに共通した自民党の政策だからです。金がないのではありません。三兆円の農水予算を組み換えて、農民が求める公共事業以外を価格補償に回せば十分です。例えば価格・補てんによって米価を二万円にするには三〜四千億円あればできることです。

 一番打撃を受けているのは政府が奨励した大規模農家です。政府は「経営安定対策」の検討に乗り出し、大規模農家だけを救うようなことを言っていますが、価格暴落の根本原因である輸入急増や買いたたきから大規模農家だけ特別扱いするのは不可能なことです。

 いま、自民党政治は自らの悪政に自らの手を縛られている状態です。減反する人もしない人も、大規模農家も兼業農家も、稲作・野菜・果樹・畜産農家も、集落で、全国で一致してたたかえるときではないでしょうか。

(4)生産・流通問題
 決議案は「(価格暴落の)原因を明確にし、どういう展望でたたかうかが重要です。輸入農産物に不安を抱き、国産農産物がほしいという圧倒的な世論と、実際に輸入農産物が増えているというギャップをどう埋めるかが問題です。その基本は(1)大いにものを作る運動を進めること(2)流通関係者との共同をさらに進め、安全で新鮮な国産農産物を消費者に届ける運動を強めること(3)消費者が国産農産物を選ぶ自主的な運動の発展や、小売と消費者の結びつきを強めるうえで必要なことには、農民連・産直協が全力で取り組むことです。もし、これらの取り組みが広がれば、私たちは決して輸入農産物に負けないでしょう」と提起しています。

 新たな挑戦も始まっています。悪政のもとでも農民が活気をもって前進できる情勢を生かして、農民連への期待に応え、どんなことにも挑戦していく構えを持つことを強調したいと思います。

 この問題では、全国で貴重な前進がありましたので、具体的な事例は討論で豊かに反映していただき、決議案を深めてもらえるものと確信します。また、これらの具体的な動きを、別に資料として配布し、これからの留意点なども別に報告がありますので、それに譲りたいと思います。

(5)新ビデオ「それでもあなたは食べますか」第二弾「危ない!あなたの食と健康」(仮称)について
 昨年十二月二十五日、谷津農水大臣に要請した際に大臣が「輸入農産物がいつまでも青々としているのは何かあるんでしょうな」と発言したので、わが分析センターの分析結果を述べると「それはぜひ欲しい」と言いました。新ビデオは大臣さえ欲しがる輸入食料に関する情報を満載しています。大会でデモンストレーションをやりますので、ぜひ見てください。二月中に完成の予定です。国民諸階層との団結に画期的な役割を果たし、消費者だけでなく農民も激励するものです。大いに活用しましょ

う。

3、地域を守る多様な運動の発展を

(1)生産の助け合いで地域を守ろう
(1)広範な農民に目を向け視野を広くもって集落・地域農業を守る運動を
 農民連第十一回大会で自治体が独自に行っている農業施策の具体的事例を資料としてまとめたのに引き続き、今大会でも資料を準備しました。農業後継者支援、研修・マイホーム援助など自立して定住できるための支援、有機肥料施設支援、価格保障など生産から販路にいたるまでの支援、独自の直接所得補償など多くの事例があります。

 しかし、ここ一〜二年の急激な価格暴落などの変化は、これらの自治体の努力を著しく圧迫しています。

 昨年暮に東京狛江市の市長と懇談しましたが「有機肥料づくりへの支援が農民に大変喜ばれているが、その分予算が増え大変です」と語っていました。政府がこれらの自治体の施策に対して援助することを、自治体や単位農協とともに要求する運動を進めましょう。

 農民連が集落での生産から販路にいたる助け合いの運動の母体になって、自治体との共同を進める運動は、これまでにも増して重要になっています。しかし、農民連が中心になってやるようになるかどうかを考えるとき二つの問題を克服していく努力が必要です。

 一つは「対話・共感・交流」を通じて、視野を広くもった運動と誠意が相手に伝わり、「農民連の方針は正しい。その通りだ」と認められたり、信頼を得ることが求められます。

 いま一つは、現実に中心になれる組織があるかどうかです。自主的な運動ができる単組や支部・班の確立、空白市町村・集落の克服など、会員の拡大と組織の計画的な拡大を運動の中で常に留意することが必要です。単組・支部・班で行われている努力や空白克服について大会討論で出し合いましょう。

(2)革新・民主の自治体で典型を広げよう
 保守・革新をとわず自治体の苦悩が広がっていますが、革新・民主の自治体は、住民の生活を守り、住民の意見を施策に反映することを公約している自治体です。対話や提案もしやすく、政府の食糧・農業政策に対する対応も、話し合えば基本的に同意できます。

 問題は農民連の力量です。一人や二人しかいないのでは相手にされませんし、相手にされても運動が長続きせず、農民や自治体から信用されません。大半の革新・民主の自治体に農民連の組織が作られていない現状を直視し計画的、積極的に空白を克服し運動を強め、地域農業発展の典型を共同してつくり出しましょう。

(2)中山間地所得補償政策にどう対応するか
(1)農水省の方針とわれわれの要求
 「中山間地域に対する直接所得補償が実現したものの、実態に合わない条件が押しつけられているいるため、申請件数は予定の七割にすぎません」(決議案)。

 集落での減反達成が条件になっている問題、所得補償が個々の農家に全額いかない問題、一ヘクタールをまとめなければならない問題、五年間は継続しなければならない問題、補償額が少なく自治体負担がともなう問題などが障害になっています。

 農民連は以下の点を要求します。

 (a)条件不利地域対策は、営農が続けられることを施策の基本とすること。

 (b)中山間地所得補償の厳しい条件を改めること。

 (c)所得補償が農民自身の手に渡るようにすること。

 (d)自治体負担分を減らし、政府の負担分を大幅に増やすこと。

 (e)沖縄、離島、遠隔地の流通経費に助成し、不利な条件を改善すること。

(2)農民連の運動を強めよう

 これらの障害をなくし中山間地所得補償が実利になるようにするよう改善できるかどうかは、地域の運動にかかっています。農民連がセーフガード発動で政府を動かしたように、積極的に集落と自治体との懇談・共同を広げるときです。

4、重税から暮らしと経営を守る運動

(1)自主申告の運動を広げるチャンス
 「税金問題は、すべての農家にとって避けて通ることのできない、かつてない重大問題となっています」と決議案は指摘しています。

 「かつてない重大問題」とは、昨年七月に打ち出された「政府税調中期答申」が、消費税の増税、各種控除の縮減・廃止、損益通算(還付請求)の制限、農地の相続税納税猶予の廃止などを押し付けるねらいを示したこと、多くの税務署が二〇〇〇年度の申告から「農業所得標準表」の作成をやめ、記帳のできない農家は、「経費目安」による推計課税を押し付けて多額の税金をとろうとしていることです。

 政府は本気です。六百六十兆円、四人家族で二千二百万円の借金を作り出した悪政のツケを国民にまわし、税金でまきあげるつもりです。

 ビラをまき、声をかけたら二百人も集まるなど、これまでとまったく違う状況にあります。税務署などの説明会が一斉に行われていますが、説明を聞けば農民の不安がますます高まるというのが現状です。

 度重なる医療改悪のために国保の千三百六十七万世帯のうち、滞納者が三百八十万世帯もいることに留意し、国保の最高額五十九万円(介護保険料六万円を含む)を払わされる農家も多いことから、その対応のためにも自主申告運動に参加することを訴えましょう。

 政府の国保負担分が八〇年の六〇%から二〇〇〇年には四〇%に削減されていることから、政府負担分を増やす運動も関係する他団体とともに進めましょう。すべての組織が新たな情勢にふさわしく、税金要求実現の運動に全力をあげましょう。

(2)固定資産税、相続税軽減の運動を
 固定資産税軽減の運動では、自治省を揺り動かした一年でした。農業用施設用地への農地課税を原則とする方向を出させたことは歴史的な快挙でした。農民の関心の高さ、実利の前進は驚くほどのものです。成果を生かし、引き続き全県で取り組みを強めましょう。

5、WTO協定改定の展望を開く国際交流を一層前進させよう

 WTO協定改定の展望を現実のものにしていくうえで、国際連帯の運動は今後ますます重要になります。

 国内でも農産物の地域格差による競争などがありますが、国際交流は、各国の違いがいろいろあるなかで行われるものです。農民運動の立場としては、「生産をあきらめずものを作る」「食糧主権を認めさせるようWTO協定を改定する」ことを軸に、要求、考え方、運動の交流をしていきたいと思います。

 その際、食糧・農業問題が最も深刻になるアジア、連帯する農民の自主的組織が確立されている韓国に重点をおきながら、非同盟諸国やヨーロッパ、アメリカ、カナダなど広く交流を進めます。

6、農民だけが苦悩しているのではない―国民と団結し、要求を実現するとき

 不況打開、リストラ・労働条件・全国一律最賃制の確立、消費税率引き上げ反対、医療・福祉の改悪阻止、アメリカ軍の演習差し止めと基地撤去など、全国的な課題と農民の営農と暮らしの関連がますます強まっています。そしてどの分野でも国民合意の運動が進んでいます。食糧・農業問題での国民の理解も進んでいますが、まだまだその実態が知らされていません。大運動実行委員会に積極的に参加し要求実現をめざしましょう。

7、政治を変えるチャンス

 「悪政にもう我慢できない」「この政治を何とかしたい」という国民の声は、二十一世紀を迎えて、ますます国民の中に充満しています。

 七月の参院選挙は、そのチャンスです。六月には都議選もあります。衆院選挙もいつあってもおかしくない状況です。

 農民は、何とか政治を変えて展望をつかみたいと望んでいます。自民党政治を終わらせることは、農民と農業にとって最大のプラスです。セーフガード発動など具体的な要求実現のために政治を変える運動に全力をあげましょう。

(新聞「農民」2001.1.22・29付)
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