歯止めのない農産物輸入・価格暴落とどう戦うかF.どうたたかうか
(1)政治と政策の面から――われわれのたたかいと提案――(1)事態の全貌を広く宣伝し、懇談しよう農産物の全面的な輸入自由化のもとで、国内の米や青果物の流通に係わる広範な人々との間で、地域の生活圏(ライフエリア)を守り、日本農業の再生をめざす合意が広がりつつあります。国民の九一%が「外米はイヤだ」と言い、四七%の人がどんなに安くても外米は買わないと言っています(食糧庁調査)。今こそ、視野を広げて各界・各業界と懇談し、国民的な合意を広げましょう。
(2)WTO協定の抜本的改定を(a)「例外なき関税化」をやめ、農畜産物を自由化の対象からはずすこと。(b)価格保障など、農業生産への援助は各国の自主性にまかせよ。各国の食料主権を認めよ。 (c)食料の安全基準を自主的に決める各国の主権を認めよ。 アメリカは日本などに対しては農業保護政策を禁止させ、自国では一年間に一兆七千億円もの予算を組みました。こういう独善的な、一方的な主張に屈服できますか! WTO協定の抜本的改定は避けて通ることはできません。
(3)WTO協定改定を待たなくても、すぐやることがある(a)セーフガード(緊急輸入制限)現行のWTO協定でも認められた権利です。世論で自公保政権を追い詰め、セーフガードを発動させましょう。地方議会や農業委員会に意見書や決議をあげるよう求めることなども大事な運動です。
(b)価格保障・所得補償アメリカが莫大な農場救済予算を組む一方、日本では逆に、すべての価格保障の廃止に踏み出しました。これに対する反撃の運動を起こしましょう。同時に、農業に関係のないゼネコンのための公共事業費を価格保障や所得補償に回せという運動も起こしましょう。 中山間地の直接補償は制限ばかり多くてほとんど適用できないという声があがっています。農業の実情を全く知らない官僚が勝手に作った「規制」を取り払って、広範に適用させるたたかいを起こしましょう。
(c)米の値幅制限の復活や下支え、野菜の価格保障への援助を米の値幅制限の復活は、特別に予算がなくてもできることです。また、自治体で行っている野菜の価格保障などへの援助も要求しましょう。
(2)流通関係者との懇談・共同を広げよう(1)流通関係者と懇談し、実際に作って出荷しよう(a)地方卸売市場を軽視せず、足を運ぼう政府の市場外流通優先の政策の被害を一番早く受けるのは地方卸売市場です。県連の責任で懇談・交流を行いましょう。
(b)小売や仲卸の人たちとも青果物を出荷するだけでなく、市場に来る仲卸や小売、とくに小売の人たちと親しくなって、その人たちの客にどのようにしたら買ってもらえるか研究しましょう。上尾の店頭販売の経験を広げて、たとえば、ブルームきゅうりや国産ゴボウの方がおいしいことを、消費者に食べてもらって分かってもらえるような努力がこれからはどうしても必要になるでしょう。
(2)組織も生産農民自身ももっと販路拡大に積極的に(a)産直を始めたときの初心に返ってアメリカは日本人の味覚を変えるために、四十数年前に「キッチンカー」で日本国中、料理講習会をして回り、「米を食えばバカになる。パンを食べれば頭がよくなる」というデマまで振りまきながら、小麦を売り込み、とうとう米食民族の米の消費量を半分にまで下げてしまったではありませんか。今、私たちは「海を渡って」でなく、国内でやろうというのです。 産直運動も、専従者も、抜本的に検討すべきときではないでしょうか。
(b)流通関係者だけでなくいろいろな分野の業界との懇談を大豆や小麦を扱う地方の中小の業界〜業種と懇談・交流することが非常に大事ではないでしょうか。大手の会社が日本酒や味噌・醤油まで海外で作る時代です。すぐに業界というところまではできなくても、何人かの業者との懇談↓交流↓合流↓共同と発展する道を模索してはどうでしょう。それが中小の業者の生き残りにつながる唯一の道かもしれません。
(3)組織としての取り組みの重要性――ほくほくネットの取り組みの教訓から――個々の県連が個別に売り込みをするという次元の話ではなく、米流通全体をみて組織的に取り組んだ点が教訓的です。
(1)卸との取引だけでなく米屋さんとの交流を重視した取り組み米研(全国オリベッティ米穀店経営研究会)は、地域一番店をめざして、競合しないテリトリー方式(米の販売を特定の地域に限定する)で、「○○米研」を結成し、東京では西と東に別れています。昨年、西東京米研と「ほくほくネット」が共同で行った東京・東大和市でのイベントは大成功で、そば打ちや餅つきに人垣ができました。様子を見ていた米研会員からは「来年はぜひうちで」と申し込みが殺到しました。
(2)東京・大田区六郷地区の米穀商業組合とのイベント・交流へ「昨年のイベントの反響は、実施した西東京米研の各参加店はもちろん、他の小売店にも注目を浴びる取り組みとなったよう。何よりも大きな確信をもったのはZ卸自身ではないか。これまで特徴のある産地、生産者とのつきあいは相当あっただろうし、農協・経済連だったらもっとお金もかけたイベントをやってきたはず。 しかし『ほくほくネット』の取り組みは何よりも『農』を消費者に体感してもらい、米とふるさとをまるごと勧める、この姿勢がこれまでのどんなイベントにもなかった『迫力と衝撃』を与えたのではなかろうか。 報告の中で、Z労組のI委員長が『卸と小売の本来のあり方に目覚めさせられた思い』と語っていたのが象徴的。今年になって、Z卸の紹介で訪問した小売店との会話で、決まって営業担当が口にするのがイベントの打診。こんなところにもZ卸の確信を垣間見ることができる」(ほくほくネット役員会報告から) 大田区六郷地区米穀商組合とのこの秋のイベント開催もそんな流れのなかで行れることになりました。当初は「農民連の米を小分けして配る」くらいにしか考えていなかった模様だったのに、西東京米研の状況を見て、秋のイベントをやることに決まったそうです。 Z労組との懇談に区労連議長も参加して「農家・労働者・商人がスクラムを組んだら、地域の一大イベントができるのではないか」と、他階層との連帯を模索し、地域に根ざした運動が論議されたといいます。 「ほくほくネット」の経験は米の問題にとどまらず、流通問題や輸入野菜問題に取り組むうえで大きな示唆になるでしょう。
(4)直売所や産直をさらに発展させることの意義(1)これまでの産直をさらに前進させよう新婦人産直にせよ、生協産直にせよ、世論を作っていくうえで果たしてきた役割は大きなものがあります。今、新しい情勢のもとで、いっそう創意を発揮し新しいセンスで発展させることが重要です。私たちの産直や直売(朝市・日曜市など)も、市場外流通の一つですが、市場流通にはない、日本の伝統食・郷土食や歴史や文化、ほんものの味などがあるのが大きな特徴です。そしてなにより安全です。この取り組みが実は輸入農産物に反対し、安全な国産ものを大いに作ろうという運動につながっています。 その運動の延長線上に、市場出荷の運動があります。だから、むしろ私たちの産直は、市場関係者にとっても大きな支えとなるでしょう。
(2)直売所・朝市・学校給食などの実践からまだ仲間も多くないし生産量も少なく、市場出荷など夢のように思える組織や地域で、「まずできるものから、少しの野菜でも作ろう」「初めから売ろうなどと思わず、農民だから作る、という気持ちで作ろう」と呼びかけたのがきっかけで、朝市や直売所が繁盛している経験(京都・舞鶴)があります。富山県礪波平野の「おばあちゃん六人で始めた有機野菜の直売所」(新聞「農民」十月十一日)など、全国各地に地道で明るい運動があります。こんなケースほど、資本にとって始末の悪い存在はないでしょう。こういう地場の新鮮な野菜にかかったら中国産野菜も量販店も太刀打ちできないでしょう。 国産の小麦を学校給食に全面的に使う(埼玉)とか、地域の米を学校や保育園、病院の給食に使う運動や実践は貴重です。
(3)流通関係者に理解してほしいこと「安ければいい」「ごまかしは当たり前」という思想が日本中にはびこっています。けれども、作り手はそんなわけには行きません。作物は育てたようにしか育ちません。「安ければいい」「売れればいい」とニセモノを売り、消費者を欺く道を選ぶか、それとも、農民と、消費者と手を握って、地域を守る道を選ぶか――いま問われています。 遺伝子組み換え食品や残留農薬、O-157等々、輸入農畜産物への不安は断ち切れません。だから、国民の八割以上の人が「高くても国産の農産物を」と願っています。この要求に応えるのが商売繁盛の秘訣ではないでしょうか。
(5)世論・運動の面から――ビデオを作り、広範な人々に大宣伝する運動を――
(1)今日的なビデオ「それでもあなたは食べますか?」を作る大運動を十年ほど前に、全国農村映画協会が「それでもあなたは食べますか?」というビデオを制作して大ヒットし、非常に大きな影響を与えました。 いまは、当時とは比べものにならないほど農産物や食品の安全性が心配される時代です。 全国の創意工夫や自分で撮ったものを持ち寄るなど、農民連だけでなく多くの人々に協力してもらえるなら、すばらしいビデオができるでしょう。
(2)食健連運動の重要性食と農に関してだけでなく、輸入野菜の問題は国際的な賃金問題と結びついており、さらに、市場外流通でいまの流通を壊して大量販店だけが大手を振って地域がさびれ、地域のライフエリア(生活圏)そのものが壊されるなど、広範な問題を内包しています。それだけに、地域の食健連の運動と組織の活動が切に求められます。
(6)作る面から――どのようにして作る人を増やすか――(1)どこから手をつけるか「市場出荷の問題は分かったが、自分には関係ない」と思っている人も地域も少なくないでしょう。また、その必要性は分かってはいても、組織が小さくてどこから手をつければいいか分からないという場合も少なくありません。
(a)どの組織も直売所や朝市の取り組みを“一支部一直売所”というように各地で取り組んでみませんか? 三人か五人のグループで始めて、年間三十〜四十万円であっても農村のお母さんやおばあちゃんにとっては魅力ある、張り合いのある仕事です。 朝市や直売所が増えたり、売れ残ったら、それを地域の市場に持ち込むとか、産直センターに売ってもらうとか、だんだん話がはずんだり、盛り上がってゆくものです。
(b)地域の朝市・直売所の連絡・懇談・共同を地域の「朝市・直売所」の連絡・懇談会のようなものでつながりをもち、この人たちとの交流・共同を進めましょう。こういう視点で横につなげ、産直や市場出荷へと組織化するのは、運動体、センターです。
(2)集落や地域の農業を続けるための運動少数の担い手に農地を集積し、他の農家を追い出す行政主導型の集落営農ではなく、自主的な、「結い」の精神にもとづく集落営農が長野県・栄村などにいくつか生まれています。 農民連の仲間による温かい助け合いも生まれていますが、視野を集落や地域全体に広げる努力をしましょう。
(3)目先の価格に振り回されずに、方針を貫こう野菜が暴落したら「これで農業が成り立つか」「なぜ、そんなに安いのか」と問題提起をし、希望価格を出して、農民連の方針を理解してもらう運動をねばり強く進めましょう。どうしても分からない卸は見限るとしても、それまでの運動が重要です。市場を守り、農業生産を守り、われらの陣地を構築する運動です。
(7)新聞「農民」と組織の拡大(1)新聞「農民」の普及を先行させ会員を増やすことを離さずにテキスト『農民連はなにをめざし、どうたたかうか』を基本にたたかいましょう。農民連そのものをまだ知らない農民が圧倒的に多いので、新聞「農民」を普及することを特別に重視しましょう。とくに輸入農畜産物の実態については、いまでは新聞「農民」しか取り上げなくなりました。確信をもって取り組みましょう。
(2)農業青年、兼業農家の労働者に農民連として働きかける独自の追求を(a)高齢者にも役割がある私たちは、高齢者が「農業はダメだ」「政治が悪い」と愚痴っぽくこぼすのは決して次世代にいい影響を与えないと思います。高齢者は歴史の生き証人だけに、政治を変えるという気迫が求められています。また、現場・底辺から生産に励む運動が仲間を励ましているとき、農業・農山村のすばらしさを一番体で知っている高齢者が、この人たちと力を合わせて、農業を諦めている兼業農家の労働者を励ますべきではないでしょうか。
(b)兼業農家の労働者への独自の働きかけ同時に、若い世代に強力に系統的に働きかける計画をもち、農民連の全組織で具体化をはかりましょう。
(新聞「農民」2000.7.24・31付)
|
農民運動全国連合会(略称:農民連)
本サイト掲載の記事、写真等の無断転載を禁じます。
〒173-0025
東京都板橋区熊野町47-11
社医研センター2階
TEL (03)5966-2224
Copyright(c)1998-2000, 農民運動全国連合会