「農民」記事データベース20000731-458-07

歯止めのない農産物輸入・価格暴落とどう戦うか

C.農水省は卸売市場を淘汰する方針


(1)市場外流通を主流にする動き

 アメリカでは一九六〇年代には青果物の流通は市場流通が主流でしたが、七〇年代から市場外流通が増えはじめ、九〇年代には八割以上を占めるようになりました。農水省はこれを日本に広げることをねらっています。

(1)国産農産物の市場外流通の例

 農水省はこの数年来、野菜の輸入、とくに開発輸入を展望した委託調査や日本国内の「先進例」の調査を行っています。

(a)KIFA社
 伊藤忠商事、協和、ドールは、量販店向け青果物の発注を受託する共同出資会社KIFA(ケーアイ・フレッシュ・アクセス)を作って、県ごとに最有力の中堅食品量販店・スーパーへの生鮮物流に乗り出しています(同時に、KIFAは中国野菜の輸入に力を入れています)。

(b)外資系企業が国産野菜に乗り出す例
 ドールは早くから輸入青果物を全国の卸売市場向けに販売してきましたが、国内の産地開発に乗り出し、北海道・青森・茨城・千葉・徳島・熊本・鹿児島等の十三道県の十五農協・経済連を含め千戸の農家とトマト、レタスを中心に十三億円の事業を展開しています(九八年現在)。

(c)加工食品メーカーの生鮮野菜事業への参入
 トマト加工メーカーの最大手カゴメは、契約した農業生産法人から買い取ったトマトを量販店や外食チェーン店などの配送センターに直接納品・販売する市場外流通を基本方針としています。

(2)水面下での大商社の動きの一例

 キャッツ・アグリシステムズという会社がありますが、その親会社は三井白蟻消毒(一九七五年設立、キャッツに商号を変更)です。同社は九七年に設立され、九九年には茨城県取手市に「キャッツ・アグリシステムズ農業センター」を竣工させました。

 このキャッツ・アグリシステムズは、「いま、日本は大変です!」と呼びかけ、「効率的な“無農薬の野菜づくり”をお手伝いします」と宣伝しています。

 この宣伝ビラだけを見ていると特別どうということもなさそうですが、実は、三井物産系の野菜の集荷企業という性格をもち、北の家族、京樽、日本マクドナルド、ダイナック、ジャパンフードシステム、ファーストキッチンなどが主な取引相手先になっています。

(2)市場手数料の自由化

 昨年、卸売市場法が「改正」され、相対取引を主流とし、セリ原則は廃止されました。そして、今年、第七次卸売市場整備基本方針「案」として農水省は「卸売手数料の自由化」案を打ち出しました。

 卸売業者の市場手数料の自由化は、手数料の引き下げ競争を呼び起こして卸売業者の収入源を減らし、卸売業者の振るい落とし策だという悲鳴のような反対論が出るのは当然です。

 もう一つ見過ごせないのは、野菜大産地からの出荷誘導策である出荷奨励金の資金源を絶つことになるということです。国内で市場外流通を狙う商社や量販店にとっては、大産地を取り込むうえで非常に有利な条件になるでしょう。

(1)卸売業者の声

 青果卸売会社(全国加盟百五社)のうち、前年度の取扱高を上回ったのは二社だけ。健全経営の目安の一つと言われる年間取扱高二百五十億円を上回ったのは三十一社、三割にすぎず、七割が厳しい経営です。

 全国中央市場青果卸売協会の速見専務は「手数料自由化は卸売会社の対応能力を超えており、倒産の続出が避けられないだろう」と事態の深刻さを語っています(日本農業新聞六月十三日)。

(2)仲卸の声

 仲卸業界もいっせいに反発し、全国青果卸売協同組合連合会は「地方市場などで中小の卸の集荷力が落ち、適正な品ぞろえができなくなる」と反対しています(前掲六月十五日)。

(3)小売業者の声

 青果小売商で組織する全国青果物商業協同組合の伊藤邦徳専務は「いつも仕入れている市場の卸が廃業したら、青果店はどこから仕入れをすればよいのか。農水省が描く将来像は青果店をつぶすことなのか」と怒りをあらわにし、「中小卸と青果店が地場産地と地域の消費者を結んできた。卸がなくなり、青果店がつぶれると地場の野菜を消費者に届ける方法がなくなる。大手スーパーの大産地の商品しか手に入らなくなる」(前掲六月十七日)と指摘しています。

(4)賛成は“大手スーパー”の系統

 その一方で、大手スーパーなどが加入する日本チェーンストア協会は「手数料を自由化して健全経営の卸売市場を育てることに異論はない」(小笠原荘一常務)と“自由化”を支持。また食品スーパーで組織する日本スーパーマーケット協会も「自由化による競争はよいことだ」と言っています(前掲六月十七日)。

 誰のために、何のために「検討」を始めたのか、その狙いは明らかです。

(新聞「農民」2000.7.24・31付)
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