B 作ることは輸入自由化とのたたかい 口は下手でも、もので勝負しよう【1】農業と農山村の復権をかけて
(1)WTO協定の改定の運動と世論をWTO国際シンポ(二〇〇〇年二月二十、二十一日)での外国のパネラーの話は参加者に非常に大きな確信を与えました。世界のNGO(非政府組織)や途上国との交流を展望した運動を大きく展開しましょう。人間としての農民、その農民の労働がこれほど卑しめられて黙っていられますか!
(2)緊急輸入制限(セーフガード)の発動を要求するWTO協定のなかで、唯一利用できるのが緊急輸入制限(セーフガード)の権利です。一般セーフガードについてはアメリカや韓国では統計数字だけでどんどん発動しているのに、農水省は一年も二年も「セーフガードの対象になるかどうか調査中」と言って一度も発動しませんでした。WTO協定に加盟していない中国に対しては圧力をかけてニンニクとショウガの輸入を制限させましたが、その他のものについてはまったく無為無策です。政府や農水省へ抗議・要求をしましょう。
【2】口は下手でも、もので勝負しよう
(1)品質のよいもの、安全で、新鮮な農産物を届けるのは最低限の責任輸入農産物に負けない、おいしくて安全な作物をたくさん作って、市場にも産直にも大いに打って出ましょう。いま問題になっている稲のカメムシの被害対策など栽培技術の研究会を開くこと、あるいは仲間同士の圃場視察研修会などを通じて教え合うこと、学び合うことも大切です。
(2)土作り・輪作・観察土作り・輪作・減農薬は私たちの栽培の基本です。ワラ類などを使った堆厩肥で土作りをし、圃場と作物をよく観察すること、仲間や篤農家の先進的な有機農業に学ぶことを私たちは重視しています。これが本来の有機農業だと確信します。同時に「無化学肥料・無農薬三年間」という農水省・JAS法の規格がどんなに実際からかけ離れたものかはすでに確認した通りです。
(3)いつも研究を農業技術も日進月歩です。遅れないような研究・学習も仲間とともにしましょう。全国の優れた経験も大事です。しかし、農業はたくさんの要因で成り立っており、特に地域性(気候や土質など)が強いだけに、仲間とともに組織的、集団的に研究して良いものを作りましょう。また、「新しい技術」といっても、最近は農水省の「規模拡大」「効率性」だけを重視した歪んだ技術が押し進められていますから、鵜呑みにしない検討も必要です。
(4)「こんな風に作ってます」という栽培記録をJAS法による“有機農産物”のムチャな規定や、いかがわしい輸入農産物とたたかううえでも、また、消費者に説得力をもつ点からも、私たち自身がどういう作り方をしているか、日常的にコメントできるようにしましょう。市場側からの「農民連シールのほかに、生産者カードがあればなおいい」という要望にも応える道です。
(5)流通関係者には懇切な説明を工業製品のような規格を要求されることもありがちですが、工業と農業の違いや、農業がどんなに自然に左右されるかを、粘り強く懇切に説明しなければなりません。しかし、現実の出荷に際して非常識な規格をよしとするのも現実的ではありません。 市場出荷や産直では話し合いと目揃え(生産者の間での)が必要です。
【3】分析センターの活用を――食あり、遠方より来たる また危うからずや――輸出するほど有機農産物がなく、ニセモノが広く出回っているのに、残留農薬の基準が薄められたので大手を振って輸入が増えています。WTOでSPS協定(衛生・植物検疫協定)が締結されてから、どの検査機関もジャーナリズムも、輸入農産物の残留農薬については、発表することも書くこともしなくなりました。生協も農民の農産物についてはきびしくチェックしますが、輸入農産物の検査結果を発表しないようです。 そういうなかで、農民連・食品分析センターはいよいよ光を放っています。分析器械も研究員も充実しました。農民連食品分析センターは、輸入農産物の残留農薬を告発し、遺伝子組み換えを調べるとともに、農民連会員みずからの生産物の検査もして、消費者に安全なものを届ける努力をしています。 自分の生産物の分析を委託することは、誇りある有機農業を営む農民にとってはいっそう重要です。
【4】支部や班で必ず「作る」話し合いと寄り合いを――実際に作って実践してみせてこそ、人の心は動く――農業をあきらめかけたり、兼業になった農家を冷やかにみるのでなく、定年退職した人や、兼業農家のお母ちゃんたちに熱心に温かく「市場もこんな風に変わって来ましたよ」「また作りませんか」と励ましたり、呼びかけてみませんか。こんなとき、農民連の仲間が、実際にいいものを作って、市場出荷で成果を挙げることがなにより大事です。実践は、口よりはるかに説得力があるでしょう。 そして、ためらったり、自信がない人には具体的な援助をするとか、助け合いをしたらどうでしょう。
【5】不払いなどの事故を未然に防ぐ関連産業との共同の取り組みが進む最大の背景は、農業の危機と関連産業の危機が結びついていることです。それだけに、産直で企業に農畜産物を出荷したが不払いに遇ったという事件もあります。組織としても慎重さも求められます。
【6】市場出荷でも、対話と交流は欠かせない(1)対話・交流の根本は誠意ある共同の探究市場との密接な対話や実務上の打ち合わせは前述の上尾市場の場合のように重要ですが、かつてない情勢と前人未到の運動だけに、行き違いやトラブルも生まれるでしょう。それだけに誠意あるねばり強い「共同の探究」が求められます。そうでなければ、市場も農民も、事態を打開できないからです。
(2)市場(卸売業者)との対話だけでなく仲卸や小売とも市場関係者との対話というとき、卸売業者だけでは不十分です。最後は消費者の要求と心を小売業者がつかむために、農民連・産直協がどういう役割を果たせるかという見地からの対話・交流です。量販店とのたたかいといっても、量販店の存在を否定するのではなく、無制限な量販店の進出・開店を規制し、ライフエリア(生活圏)を守るとか、大商社の野菜などの開発輸入に抗して、どうたたかうかということです。したがって、小売や消費者まで視野に入れて懇談し、交流しましょう。 市場祭や店頭販売などのイベントにも協力しましょう。
(新聞「農民」2000.4.17付)
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