国際シンポジウムパネリスト五氏の報告(大要) [5/5]
われわれはWTO協定の抜本的改定を要求する農民連代表常任委員 小林節夫氏私は日本の現役の耕作農民として、また、農民連・食健連の一員として意見を申し上げたいと思います。 なぜWTO協定の改定を主張するか日本の食料自給率はカロリーベースで三九%、砂漠地帯かアイスランドを除けば世界最低の状況です。それなのに水田は四割近くの減反を強いられ、ミニマム・アクセス米が輸入されて、価格保障もなくす――これでは農業は成り立ちません。それをあたかも世界の政府であるかのように強要するWTO協定にがまんできないというのが改定を要求する第一の理由です。 もう一つは、農産物・食品の安全性の問題です。SPS協定(衛生・植物検疫協定)によって、残留農薬の基準が大幅に薄められました。さらに、その残留農薬の多い輸入農産物について、輸入国は異議を唱えにくい規定になっています。国民の生命と健康を考えるうえで、WTO協定の農業協定だけでなく、SPS協定も改定すべきです。 さらにもう一つは、アジアモンスーン地帯における環境問題です。アジアと欧米の農業の違いがWTO協定ではまったく考慮されていません。日本のような険しい地形のところで、水田が維持されなければ環境も守れません。この点でも改定を要求します。 私たちはWTO協定の抜本的な改定を要求します。第一に、各国の食料主権を認めろ、第二に、SPS協定の改定、第三に、生産を刺激する政策を禁止する農業協定の改定です。この要求は「WTOから農業と食糧をはずせ」という世界の農民とNGOの主張と大局的に一致すると思います。 アメリカの食糧戦略への警戒を訴える日本の農業がここまで落ち込んだ原因は、アメリカの食糧戦略です。一九五三年十月の池田・ロバートソン会談で、アメリカは日本に余剰農産物を買うことを認めさせました。学校給食法では、完全給食とはパンとミルクとおかずとされ、「米を食べればバカになる」と宣伝しました。以来、七七年まで学校給食からお米を排除しました。 これは、とんでもないことです。アメリカ小麦協会の会長は「米食民族の胃袋を変えることに成功した」「今後は中国が目標だ」と勝利宣言しました。私は、アジアと途上国の仲間に、アメリカ政府が、食糧は外交上の有効な武器だと言っていることへの警戒を訴えたいと思います。 WTO協定改定へ国際連帯の強化をこのシンポジウムに、家族農業経営を守ろうという世界の仲間を迎えたことを非常にうれしく思います。洋の東西を超えて、家族農業は健全で、心豊かです。これを守るために、私たちはどうしてもWTO協定を改定したいと思います。 食健連をはじめ広範な仲間の長い間の運動が合流して成功したこのシンポジウムは、国際連帯の第一歩です。WTO協定改定の運動は、長期的な視点に立ち、途上国やNGOとの協力が非常に大事です。同時に、今できること、まだやれることが日本の農民にたくさんあります。とくにWTO協定を推進する日本の政治を変えることが、一番の国際連帯になると思います。
(新聞「農民」2000.3.6付)
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[2000年3月]
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