連載/これだけは知っておきたい介護保険(5)介護保険制度――政府のねらいは?
介護保険制度ができた経過をきちんと知っておくことも大事です。 社会保障制度改悪の一環――国民収奪「介護地獄」「介護離職」などといわれるように、政府の高齢者対策の著しい遅れが、寝たきりを抱える家族に大きな負担をかけ、社会的にも政治的にも問題となってきました。厚生省の推計でも二〇〇〇年には要介護老人が二百八十万人に達すると見込んでいます。しかも介護者の四割が六十五歳以上という「老老介護」ともいわれています。深刻化する家族介護を解決することは、一刻も猶予できない状況になっています。ところが、政府・与党は一九九七年十二月の国会で「社会保障構造改革の第一弾」として介護保険を位置づけ、国庫負担を減らすことを最大のねらいとして強行成立させました。 介護保険の財源は、これまで公費でまかなってきた介護費用を四十歳以上のすべての国民に保険料を負担させるものです。総額二兆円もの保険料を国民に押しつけるので、「第二の消費税」ともいわれるように国民大収奪の制度です。 公共事業費減らし介護財源の確保を福祉に対する国庫負担率の削減政策は、一九八〇年代以降、臨調「行革」路線の一環として実施されてきました。たとえば、特別養護老人ホームの運営費を見ると、一九八四年度までは八〇%が、八五年度に七〇%に、八六年度以降五〇%へ削減。介護保険の実施で二五%と大幅に後退します。国庫負担を削減することによって、「公的な給付水準を低く抑え、足らない部分は自己負担で民間サービスの購入を」ともくろんでいます。このために、国の水準を超えた介護サービスを実施している市町村は、現行水準が後退しかねない状況に直面しています。来年四月開始時に三割の自治体が「十分な介護サービスを提供できない」という調査結果を日経は報じています(九月二十一日付)。さらに、介護サービスを民間業者にすべてまかせるという「民間に丸投げする」市町村の動きも広がっています。 毎年五十兆円もの国の予算が公共事業につぎ込まれていますが、この一〜二割を削っただけで介護の財源は十分確保できます。国や市町村は、ゼネコン中心の公共事業から福祉優先に切り替えれば、国民に負担かけずにすみます。(つづく)
(新聞「農民」1999.10.11付)
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[1999年10月]
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