「農民」記事データベース20230731-1563-13

奈良
明日香村で
米づくりに挑戦する
佐藤佐知さん(39)

みんなで植えて収穫して
食べることの喜びを実感

 今年の新聞「農民」新年号(1月2・9日号)の「生産する消費者が地域の食と農を守る」特集。奈良県明日香村の棚田での米づくり1年目に挑戦した佐藤佐知さんの取り組みを紹介しました。
 2年目の今年の米づくりや、7月7日にオープンしたお弁当屋さんの取り組みを紹介します。


2年目の新たなつながりと挑戦
人が集い地域の農業を考える場所

 今年も「田植えまつり」として多くの人に体験してもらい、つながってもらおうと計画しました。「昨年来てくれた人が、今年は友だちや家族を連れて来てくれました。私もたくさんの人と、田んぼで『はじめまして』のあいさつをしました」。佐藤さんは振り返ります。

 あらためて農業ってすごい

 6月17日から20日までの4日間で約150人が細川集落の棚田に集まりました。初対面同士でも協力しながらどんどん植えていき、昨年と同じ棚田17枚をほぼ土曜日と日曜日の2日間で終えました。「肩書きや年齢に関係なく人と人が会話をして、同じ時間を過ごす。とってもうれしい光景です。地元の皆さんが温かく迎えてくださり、『みんなのふるさと』と言えるような細川という土地の魅力も大きいと思います」と佐藤さん。

 子どもたちは泥遊びやあぜ道での虫取り、棚田のすぐ下を流れる川での水遊びと大忙し。もちろん田植えも。「その日はすぐにぐっすり寝たよと、後日お母さんたちから連絡がありました。学校に行けていない子どもさんも来てくれていたみたいで『すごく楽しかった』と言ってくれたそうです。農業や稲作の可能性って、あらためてすごいなと思いました」

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老若男女、国籍も様々な人々が集まりました

 大事な作業任された喜びも

 昨年と今年の心境の変化として、佐藤さんは「1年目はとにかく『この棚田の風景を守りたい!やらせてください!』という思いが強かったけど、棚田を通して『皆で植えて収穫して食べる』ことへの喜びに重きを置いている自分に気が付きました」と話します。

 また今年は、棚田の石垣の接地面の穴を見つけて埋める作業を田植え前に行いました。細川の総代さんから任された、田んぼに水がたまらない事態を防ぎ、のり面崩壊を未然に防ぐための作業です。「集落の皆さんが代々やってこられた棚田を守り、自分たちの命を守る大事な作業を任せてもらえてうれしかったです。でも、穴を見つけるためにクワで土や草をそぎ落とす作業はめちゃくちゃ大変でした」(笑い)

人・食・農
思いの込もったお弁当

 地産地消の関心の高さにびっくり

 7月7日に明日香村新庁舎のすぐそばで「おもろ屋たちばな」というお弁当屋を開いた佐藤さん。「おいしい野菜を日々いただく中で、少しでも多くの人に地元食材を味わってほしい」と昨年から準備を進めてきました。

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スタッフの皆さん。2週目は120食を販売しました(右から2人目が佐藤さん)

 まずは週1度の開店。一緒に働くのは幼稚園のママ友さんたちです。食材は「なるべく地元のもの」を目指し、初回は近所の直売所で購入しましたが、次回は農家からの提供が全体の2割ほどになる予定です。「本当にありがたい。地元食材の比率を高めていきたい」と意気込みます。

 シェアリング、実践しています

 初日は3種類のお弁当50食が完売。「地産地消への皆さんの関心の高さにびっくり。棚田と同じように、人が集いつながり、食べることや地域の農業のことを考える心地よい場にしていきたい」

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多彩なお弁当。細川の無農薬米も使っています

 地産地消とともに「地域から食材廃棄をなくしたい」と話す佐藤さん。今後は地元の生協や農民連との連携も構想します。昨年10月の農民連アグロエコロジー学習会で発言した「シェアリング」。労力や食べ物、知識を共有し循環させていきたいと話していた佐藤さん。「棚田に足を運んでくれたことによって生まれたつながりや助け合い。お弁当屋さんを通じて、農家さんから食材をいただき、お弁当をお返しする。皆さんと信頼関係を築いていきながら、シェアリング、実践していますよ!」と笑顔の佐藤さん。移住から4年目の挑戦は続きます。

(新聞「農民」2023.7.31付)
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2023年7月

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