農家のための
税金コーナー
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確定申告後の心得
所得税・消費税の確定申告、お疲れさまでした。
農民連の自主計算・自主申告の運動は「納付すべき税額は納付者のする申告により確定することを原則」(国税通則法16条)とする申告納税制度に基づいて行われており、納税者の申告は最大限に尊重されなければなりません。
また、税務調査は、「犯罪捜査のために認められたものと解してはならない」(国税通則法74条)と規定しており、あくまでも納税者の理解と協力による任意調査です。
今年から「業務に係る雑所得」の扱いを変え、少額の農業収入を雑所得にしようとする動きがあります。(右の記事参照)
また、今年の税理士法改正で税務相談停止命令制度が新設されました(2024年4月1日施行)。一人で抱え込まず、落ち着いてまわりの人と一緒に対応することがますます重要になります。
次のようなときは、まずはお近くの農民連へ連絡をしてください。
(1)税務署からはがきや電話があったら
税務署から送りつけられてくる消費税の「売上チェック表」や「記帳アンケート」「お尋ね」などの文書は法的な裏づけはありません。「行政指導はあくまでも相手方の任意の協力によってのみ実現される」(行政手続法32条)もので、断った人に不利益な扱いをすることは禁じられています。
最近、行政指導で税務署へ呼び出し、そのまま調査に入る例もみられますが、3・13重税反対中央実行委員会の国税庁への要請の中で、「行政指導で呼び出し調査に移行することはしない、あった場合は個別に対応する」と回答しています。自分で返事を出したり、一人で税務署などへ行ったりしないようにしましょう。
申告期限後に税務署から来る封書や問い合わせは、申告書の計算間違いや書き損じなどに対するものが大半ですが、こんなときにもお近くの農民連に連絡しましょう。内容を確かめて対応を相談しましょう。
(2)税務署員がいきなり来たら
何の連絡もなく、いきなり税務署員がやってきて調査することは許されません。新国税通則法では、原則、納税義務者に事前に通知することを義務付けています。
税務署員が突然来たら、「今日は都合が悪いので、後から連絡する」と言って、その日には応じないようにしましょう。「少しの時間で済むから」と税務署員は言いますが、引きこまれないようにしましょう。
ただちに近くの農民連と連絡をとり、対応を相談しましょう。
(3)税務調査に応じるときは
一人で税務調査を受けた納税者のほとんどは、頭が真っ白になって、断ることもできないまま、税務署員のいいなりという事例があとを絶ちません。
税務署員は「税理士法違反」「公務員の守秘義務違反」を口実に立ち会いを排除しようとしてきますが、仲間同士の学び合いで自主申告を進める運動を「税理士法違反」に問うことはできませんし、納税者が「自分のことは立ち合い人に聞かれてもかまわない」としていれば、「守秘義務違反」に問うこともできません。
絶対に一人では対応せず、信頼できる人に立ち会ってもらいましょう。
(4)税務署員に同意を求められたら
どんな書類でもすぐに同意しないことです。「よく検討してから、後日届けます」と言ってその場では断りましょう。
万が一、不本意な修正申告に判を押してしまった場合でも、後日、更正の請求を行うことで税額を減額させることができます。
税務調査をはね返す最大の力は、農民連の税金運動の基本「自主記帳・自主申告」にあります。
長野県の生産者に来た税務調査では、農民連の役員と相談して書類を見直し、税務署員が「お世辞ではなく、よくつけていました」とほめて帰った例もあります。学習を力に自信をもって、万が一の税務調査にも対応しましょう。
(新聞「農民」2023.4.24付)
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