米と牛乳のミニマム・アクセス
カレント・アクセスを問う
22年度SBS 落札わずか54トン※1
アメリカ産米に需要なし
アメリカ米なんと1俵3万円
1月30日、主食用のSBS(売買同時入札)輸入米入札で、アメリカ産うるち米(玄米短粒種)が1俵(60キロ)なんと3万円(2万9988円)で落札されました。国産米相対取引価格(1万2889円)の2・3倍、千葉ふさこがねの約3倍(いずれも消費税別、(1))。
22年度入札は6回目ですが、アメリカ産主食米の落札は初めてで、落札数量は54トン(900俵)。3万円の外米を買う消費者がいるのかどうか大いに疑問ですが、国内産でいえば、固定的な需要のある「自然栽培米」並みの価格水準です。
また、12月14日の第4回SBS入札では、アメリカ産うるち砕精米(加工用)が1キロ322円で落札しています。
加工原料用途でしか販売できず、現在の米菓用白米などの取引価格は、1キロ100円前後です。アメリカ砕精米にも、とうてい需要があるとは思えません。
ミニマムアクセス(MA)米全体の輸入量は77万トン、うちSBS米は10万トン。2月までの7回の入札で落札数量は1万2千トン。3月末までに10万トンの全量輸入は不可能でしょう。
買い手のない米 輸入ストップを
しかし、日本政府はSBSで輸入できない数量は一般MA米として買い入れ、売買差額を負担し、主には飼料米として60キロ当たり1200円程度で販売しています。
SBS輸入は、国内産米の米価下落も反映して、ここ数年は10万トンの予定数量には全然達していません。
「外米の需要はない」ことは証明済みです。主食用も加工用も、買い手のない米の輸入は即座にストップすべきです。
WTO(世界貿易機関)協定上も、国が輸入を管理する「国家貿易」であっても輸入は義務ではなく、「商業的考慮のみに従って輸入すればよい」と定められています(WTO協定に引き継がれたガット協定第17条)。アメリカ米が国産米の2・3倍という途方もない価格になっても「義務だから輸入」などというのは「商業的考慮」とは真逆のやり方です。
乳製品はどんどん輸入
その裏で「牛乳を搾るな」「牛を殺せ」
政府は国内の酪農家には約14万トンの牛乳減産を押しつける一方、生乳換算で13・7万トンの乳製品を「国際義務だから」といってあくまでも輸入し続ける方針です。
MA、CAは「輸入義務」ではない
米の場合はミニマムアクセス(最低輸入機会=MA)、乳製品はカレントアクセス(現行輸入機会=CA)と名前は違いますが、WTO交渉でアメリカが押しつけた奇妙なルールにもとづくもの。
MAは「輸入量が国内消費量の5%未満の商品については5%以上の輸入機会を設ける」こと、CAは「5%以上の商品はその輸入数量を維持」すべしというルールです。しかし、輸入の機会(アクセス)を設ければいいのであって、需要がなければ無理に輸入しなくてもよいというのがWTOのルールで、義務ではありません。
日本はWTO以前から米・小麦・指定乳製品を国家貿易品目としてきました。国が貿易を管理して無秩序な輸入を防ぎ、国内需給の安定をはかることが目的です。
指定乳製品である脱脂粉乳とバターからは、牛乳やチーズなどを製造することが可能ですから、国が貿易を管理することは当然のことです。
しかし、日本政府は国家貿易とMA、CAという奇妙なルールを無理やり結びつけて、「国家貿易だから輸入は義務だ」と言い張っています。これは大まちがいであり、国際常識に反するものです。
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日本の酪農・畜産守れ!2・14院内集会 |
各国はMA・CAの半分しか輸入していない
アメリカとEU(欧州連合)にとっては乳製品がMA品目ですが、消費量の5%どころかアメリカの輸入実績は2%、EUは1%にすぎません。一方、日本の輸入総量は38%とケタ違いです((2))。
さらにWTO加盟国全体でみても、MA、CA枠を満たしている品目数は半分にすぎず、国家貿易品目であっても55%にすぎません。ところが日本は、米も乳製品も気前よく100%以上達成しています((3))。
乳製品の輸入枠は13.7万トンなのに
最大39万トンも輸入してきた日本
日本にとってのCA乳製品は脱脂粉乳とバター、ホエイ(乳清)など。日本はWTOスタート以来、毎年例外なくMA・CA枠をバカ真面目に100%満たし続けている「優等生」です。15〜19年には生乳換算のCA枠13・7万トンに対し、年平均で32・3万トンも輸入しました((4))。
もうやめさせよう、 WTOいいなりの 「外交劣等生」
逆に言えば、日本は外交交渉で何も言えず、国内農業を犠牲にする「外交劣等生」です。
「湯気をたてて生まれたばかりの子牛を、1滴の母乳も飲ませないまま薬殺せざるをえない」「牛の命の恵みである牛乳を廃棄せざるをえない」(日本の酪農・畜産守れ!2・14院内集会)――酪農家の血の叫びに応え、WTOいいなりの「外交劣等生」をやめさせようではありませんか。
※【訂正】 3月13日号にて、以下の訂正がありました。
3月6日付1面「アメリカ米なんと1俵3万円」の記事の横見出し「22年度SBS 落札わずか54万トン」※1とあるのは54トンの誤りでした。
2023年3月21日、訂正しました。
(新聞「農民」2023.3.6付)
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