「農民」記事データベース20230130-1538-07

2023年は国際雑穀年

「家族農業の10年」・小農宣言と連動して


 東京学芸大学名誉教授・農学博士

   木俣美樹男さんに聞く

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雑穀の栄養的価値が
国内外で高く見直され

画像  2023年はFAO(国連食糧農業機関)が定めた国際雑穀年です。雑穀問題に詳しい東京学芸大学名誉教授・農学博士で雑穀街道普及会幹事代表の木俣美樹男さんに聞きました。

 栄養行動の10年 期間内に実施へ

 雑穀とは、小麦・稲・トウモロコシの3大穀物以外の穀物類、アワ・キビ・ヒエ・モロコシ・シコクビエ・ハトムギをはじめ、ソバ・センニンコク・キヌア等のことで、1950年代までは日本の全土であまねく生産されていました。

画像  実際に、雑穀はミネラル分をはじめ栄養的価値が非常に高い食材として、国内外で見直されています。しかし、60年代以降は、国の工業優先・農業軽視の政策、また山村地域の造成事業などにより、山村の家族経営農業や林業は従事者の高齢化により衰退の道を歩んできました。

 国連は、「家族農業の10年」(2019〜28年)を定め、また、小農の権利宣言(18年)も発表しています。インドは18年に全国雑穀年を祝賀し、インド外務省はFAOに国際雑穀年を提案。国連「栄養行動の10年」(2016〜25年)の期間内に実施しようと、23年に国際雑穀年が決定されたのです。これは雑穀の栄養的価値を高く評価した結果です。

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ヒエの栽培

新たな食品を開発 地域経済を活性化

生物文化多様性を守る

 「雑穀街道」を世界農業遺産に

 多摩川水系の山梨県丹波山村、小菅村から相模川水系の上野原市、神奈川県相模原市緑区までをつないだ、雑穀を栽培する生物文化多様性が豊かな地域を「雑穀街道」と呼びます。

 雑穀街道は山村と都市をつなぎ、縄文時代から未来へと、素のままの暮らしを継承するために、雑穀や豆類、野菜などの在来品種を栽培・保存する活動を普及します。

 現在日本ではFAO世界農業遺産に13カ所が認定されており、そのなかで山間地農耕で雑穀や焼き畑と関わっているのは、傾斜地農耕の徳島県にし阿波地域、山間地農林業複合システムの宮崎県高千穂郷・椎葉山地域の2カ所です。

 私たちは、農山村地域の自然共生的な生活文化の基層(縄文文化の系譜、畑作の伝統)にある栽培植物、雑穀、いも、野菜などの在来品種を保存・継承するための体制を構築し始めています。

 さらに、自然と共生してきた農山村社会で、在来品種の栽培生産を維持し、加工調理し、伝統食を生かしながら、新たな食品を開発して、地域経済を活性化させ、生物文化多様性保全を確保する手法を探求しています。

 これまで40年余りの地道な成果の蓄積を発展させ、NPO法人、農業生産法人、自治体などが連携する雑穀街道協議会を組織して、FAO世界農業遺産「雑穀街道〜農山村における生物文化多様性保全」の登録申請をめざします。

 多くのみなさんのご参加、ご協力をお願いします。

 詳細は、雑穀街道普及会ホームページ(http://www.ppmusee.org)から。

(新聞「農民」2023.1.30付)
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2023年1月

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