「農民」記事データベース20221024-1526-01

消費税
インボイス地獄

家族農業をつぶし免税の権利を奪う

関連/インボイス中止・延期請願


登録あわてず、反対の運動を

 進まない登録申請 国会で徹底審議を

 昨年10月1日からインボイス(適格請求書)発行事業者の登録申請が始まって1年が過ぎました。

 しかし、今年8月末で、登録対象者である消費税の課税事業者、法人や個人企業など約300万事業者のうち、登録したのは100万事業者に満たず、法人で42%、個人で9・9%です。9月末でも対象の38%にとどまっています。この数字自身が課税事業者の苦悩を示しています。

 インボイス導入を決めた法律では「導入後3年以内を目途に検証し、必要な措置を講ずる」(所得税法改正法附則171条2項)と定められており、改めて国会で徹底的に問題点を議論すべきです。

 そもそもインボイスは免税事業者つぶしの制度です。財務省は免税事業者の4割が課税事業者になることを選択し、2480億円の税収増になると見込んでいます。こんな制度を許すわけにはいきません。

 インボイスは中止消費税の減税を

 国税庁は「2023年10月1日からインボイスを発行できるようにするには来年3月31日までに登録申請を」と、さかんにあおっています。

 しかし、来年4月以降も登録は可能であり、インボイス制度が始まってからも登録申請すれば「登録日」からインボイスは発行できます。

 消費税減税こそ、最も効果的な物価高騰対策です。こんな時にインボイス導入などもってのほかと言わざるをえません。

 ねらいは免税農家の淘汰(とうた)

 来年10月1日実施予定のインボイス制度は、家族農業を破壊する最悪の税制です。

 20年に確定申告した827万事業者のうち、消費税の免税事業者は6割を占め、農家も9割が免税事業者です。現場ではインボイスの導入によって発生する問題点が噴出しています。

 フリーランスや一人親方に「課税事業者にならないと取引から排除」という圧力や、シルバー人材センターで働く高齢者にもインボイスを要求。水道・下水道などの公営企業の入札や学校給食への食材納入にもインボイスの発行を条件とするなど、免税事業者を恐怖に陥れています。さらに個人宅の太陽光発電の売電にもインボイスが必要など、次々と問題が浮かび上がっています。

 営農基盤根こそぎ壊す大問題が次々

 農業分野でも、インボイスが発行できなければ取引から排除されるか、「消費税分の値下げを」などと迫られるおそれがあります。

 農業法人では、従事分量配当を行うために法人の構成員みんながインボイスを発行しなければなりません。

 酪農家や肥育農家は事業規模が大きいので課税事業者になっています。仕入税額控除をするため、酪農ヘルパー・個人獣医・受精師・削蹄(さくてい)師などからインボイスを発行してもらう必要があります。堆肥センターへの牛糞(ふん)持ち込みや、逆に堆肥散布の作業委託料、中古農機具の下取りでもインボイスが必要です。小規模の繁殖和牛農家は子牛のセリの時に、インボイスの有無で販売価格に差がつく可能性があります。

 また、農協特例は「無条件委託販売・共同計算」が原則で、支払われる米代金は、どの農家も同じです。その結果、インボイス発行のために課税事業者になった農家は、受け取った米代から消費税を納税することになります。

 また、慌ててインボイス発行のために一度課税事業者になると、農業経営が赤字でも消費税が発生し、来年の12月1日までに登録取り消しの届け出を出さないと、2年間は消費税を払い続けなければなりません。

 産直センターも出荷する免税農家の対応で苦しい判断を迫られており、インボイスで経営基盤を根こそぎ壊されかねません。

 「益税」攻撃は生産者と消費者を分断

 免税農家は「売り上げに含まれる8%の消費税を受け取りながら、国に納めないので『益税』だ」とか、「預り金」を国に納めていないなどの攻撃があります。

 しかし消費税は「預り金」ではありませんし、農産物価格は、「セリ」で値段が決まり、農家は直接価格の交渉ができず、大型スーパーへの直接納入でも、大型店の価格支配が強く買いたたかれるなど、農家が資材分などの消費税を価格に転嫁できないのが現状です。

 さらに、天候や自然災害により供給量の変動が頻繁で絶えず価格が変動します。工業製品のような供給量の調節は困難です。その結果、米農家では、生産費を大きく割り込む低米価で販売する事態が続いています(図)。

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 免税制度は小規模の農家経営を守る制度であり、権利です。この免税制度がなくなれば、家族農業は営農の権利を奪われ、経営をやめるしかありません。

 生き残りかけ中止の運動を広げよう

 もともと、インボイス制度は、1987年に中曽根内閣が、「売上税」と同時に導入を狙っていたものです。しかし、全国で「列島騒然」の反対運動がおこり、87年4月の統一地方選挙で自民党が大敗北し、売上税とインボイスの導入をストップしました。

 11月6日に東京・芝公園で開かれる消費税減税とインボイス中止を求める大集会(詳細は2面)は大きなヤマ場です。全国からかけつけ、成功させましょう。急いでインボイスの学習や反対運動の取り組みを広げましょう。


インボイス中止・延期請願

山形 庄内地方4議会(5自治体中)で採択
保守系議員も賛同・共感

 記事は2面

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酒田民商の人たちと酒田市議会での請願採択を喜ぶ庄内農民連の梶事務局長(右から2人目)

(新聞「農民」2022.10.24付)
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2022年10月

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