子に対する慢性的な影響の評価不足
世代を超えた影響も懸念
木村―黒田純子さんの話
市販のベビーフード中のグリホサートの残留検査では、10製品中6製品(痕跡〜0・01ppm)で検出され、大豆を使った粉ミルク2製品は非検出でした。
小麦は消費量の約83%が輸入(注1)で、農水省の令和2年の報告(注2)では米国産の97%、カナダ産の100%に基準内ですがグリホサートが検出されました。大豆も輸入が消費量の78%(注1)で、遺伝子組み換え大豆ではグリホサートの残留が高い率で報告されています(注3)。
グリホサートの検出は菓子類が多いので、仮に度々摂取したとしても、グリホサートの推定1日摂取量は、農薬の安全基準である1日摂取許容量1ミリグラム/キログラム(体重)/日を超えることはないでしょう。ではその影響を全く気にしないでいいのでしょうか。
農薬は多種類の毒性試験から安全基準を決めているので、基準内なら安全だと言われますが、実は問題があります。
農薬の安全基準は、農薬原体(グリホサートなど)の毒性試験から決定されますが、農薬原体に複数の補助剤が添加された農薬製剤(ラウンドアップなど)は、原体の約100倍も毒性が高くなることが多数報告されています(注4)。また現在の農薬毒性試験では、欧米で規制されている環境ホルモン作用、複数の農薬による複合影響、脳高次機能を調べる適切な発達神経毒性などは調べられていません。従って安全基準内であっても、化学物質にぜい弱な発達期の子どもでは、低用量でも慢性影響が懸念されます。
さらにグリホサートでは、低用量曝露(ばくろ=さらされること)した親や子に影響がなくとも、孫・ひ孫世代で健康障害が出るという動物実験(注5)もあるので、曝露は極力避けた方が良いです。
また農水省、令和2年度の調査(注2)では、米国やカナダ産小麦の残留農薬は、グリホサート以外に除草剤ジカンバ、有機リン系殺虫剤マラチオン、臭化メチル(臭素)など、基準内ではあっても高い率で検出されています。国産小麦や国産大豆の残留農薬は、稀に殺菌剤が検出されたことがありますが、輸入品よりはずっと少ないです。以上のことから、小麦や大豆を使ったベビーフードは、できれば有機、次に国産と明記したものが良いのではないでしょうか。
注1:農水省・令和2年 食料・農業・農村白書
注2:農水省・小麦(食用)のかび毒、重金属及び残留農薬等の分析結果
注3:Bohn et al. Food Chemistry 2014:153:207-215
注4:Nagy et al. Environ Res. 2020; 181:108926.
注5:Kubsad et al. Sci Rep. 2019: 9(1): 6372.
(新聞「農民」2021.8.9付)
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