「農民」記事データベース20210412-1452-04

カップ麺・即席麺から
グリホサートを検出
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=農民連食品分析センターの検査で=

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輸入小麦製品から検出相次ぐ

 2020年度の総務省の家計調査で、パンの支出が米の約1・4倍となるなど、小麦製品は多くの家庭で消費されています。とくにカップラーメンなどの麺類は、コロナ禍による巣ごもり需要で、消費が伸びています。

 しかし、小麦の自給率は約16%(19年)であり、多くは輸入に頼っています。この輸入小麦、特にアメリカ、カナダ産からは高い確率でグリホサート(除草剤ラウンドアップの主成分)の残留が見つかります。

 グリホサートは発がん性や胎児、子どもの発達への影響が指摘され、内分泌かく乱物質(環境ホルモン)としての作用も懸念されており、今、世界的に規制が強まっている物質です。

 今回、農民連食品分析センターはカップ麺や乾麺などの残留農薬検査を行いました。検査対象はカップ麺や袋麺、乾麺の麺部分のみです。

 結果は表1の通りです。

 16製品中、10製品からグリホサートの残留が検出されました。麺の主原料は小麦粉ですので、小麦の残留農薬が製品から検出されたと考えられます。カップ麺メーカーの商品情報を確認すると、主に輸入小麦が原料となっています。国産小麦のみを使用した製品からは検出がなく、農水省の検査でもアメリカやカナダから輸入された小麦からは高い確率で残留が検出されていることから、輸入小麦が検出の原因の可能性があります。

 検出濃度は0・01〜0・05ppmと非常に低いです。日本即席食品工業協会の統計データによると、日本で製造されているインスタントラーメンの総生産量は、57億1628万食(2019年)。輸出分(9078万食)を除き、インスタントラーメンが、全て消費されると仮定すれば、年間一人あたり約45食(月3〜4食)程度を食べている計算になります。

 製造に使用された小麦粉は、年間28・7万トン。単純計算で、1商品あたり約50グラムの小麦が使用されているので、2・25キログラムの小麦を食べていることになります。今回の調査で検出された最大値0・05ppmでの残留があると仮定すると、一年間にインスタントラーメンから摂取するグリホサートの総量は、0・1125ミリグラムと見積もることができます。

 グリホサートの一日摂取許容量(ADI)は、1ミリグラム/体重(キログラム)/日とされているため、体重50キログラムの人の場合、ADIは50ミリグラム/日となり、検出された量はそれと比較しても小さいと言えます。

 ただし、グリホサートとADIの関係は、農薬原体としての評価が元になっていますが、実際に販売・散布される農薬製剤「ラウンドアップ」の形態になると毒性が、約100倍も高くなることが複数の研究で報告されており、単純に現状のADIだけでは、比較評価できない影響が指摘されていることに注意が必要です。


グリホサートの収穫前散布(プレハーベスト)

輸出国で一般的に

 アメリカやカナダなどでは小麦や大豆に対して、収穫前に除草剤であるグリホサートを散布することが一般的になっています。なぜ、農作物に除草剤を散布するのか。1つ目の理由として、雑草を枯らすことで収穫時の混入を防ぎ、品質を向上させることができます。

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米・ワシントン州での小麦に対する農薬の空中散布

 もう一つは、植物体を枯らすことで、収穫適期を人工的に作り出し、コンバインでの刈り取りを容易にすることができます。

 さらに、小麦は熟すと自然に脱粒したり、穂のまま発芽したりします。大豆もさやから豆がはじけ飛びます。こうなる前に枯らすことで、品質の均一化と収量の向上をはかるのです。

 収穫前散布は1980年代からスコットランドで始まり、アメリカ中西部の北寄りやカナダなど北米で広がっています。営農の大規模化が進むなか、大型機械で一斉に刈り取りができることから、使用の拡大が進んでいます。


カップ麺メーカー大手3社がコメント

「基準値内だから問題ない」

3社が文言まで同じ回答

 食品分析センターでのこの分析結果を受けて、新聞「農民」編集部は、カップ麺業界でも国内最大手のメーカーである日清食品、東洋水産、サンヨー食品の3社に、分析結果を添えてメールで問い合わせを行いました。

 驚いたのは、3社から届いた回答書が、まるで模範解答を書き写したかのように、ほぼ同じ内容だったことです。4つの質問事項に対し、3問が文言まで3社とも同じ回答で、内容も当方の質問に正面から答えていない、きわめて一般論に終始したものでした。

 原材料調達で安全性をどう確保しているかをたずねた1問目では、文言に多少の違いはあるものの、「食品衛生法(残留農薬基準を含む)に適合しているものを使用。さらに自社にて分析し、安全性を担保」と当たり前の回答。

 問題は残り3問で、3社とも一字一句、同じ回答でした。輸入小麦へのグリホサート残留とその対策についてたずねた2問目に対しては、「輸入小麦は国が検査し、安全性を確認している」「残留基準値内であり、問題ない」。国産小麦への転換の可能性や、消費者の国産志向への対応についてたずねた3問目、4問目については、「安全性、おいしさ、求めやすさなどを考慮して、適切な選定・調達をしていく」という1文のみ。「国産小麦」にも「食料自給率」にも、言及はまったくありませんでした。

 食品分析センターの八田純人所長は、「これはあまりに消費者を軽視した態度ではないでしょうか。この問題について関心が高まっているのですから、すぐに残留農薬ゼロにするとは言えなくても、ひな形回答の“まる写し”ではなく、自社のめざす製品作りについて、より踏み込んだ説明をするべきでしょう」と批判しています。

(新聞「農民」2021.4.12付)
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2021年4月

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