「農民」記事データベース20210412-1452-01

RCEP(アジア包括的経済連携協定)で
野菜と果物が危ない!
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「5品目守ったから日本農業に影響はない」
大ウソ

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 “危険な正体がバレないうちに、国会を通してしまえ”――菅政権がRCEP(アジア包括的経済連携協定)の国会承認を焦っています。
 政府はRCEPで「5品目を守ったから日本農業に影響はない」「国内総生産(GDP)はTPP(環太平洋連携協定)11の2倍増える」と宣伝していますが、これはとんでもないフェイク(デタラメ)ニュースです。


野菜編

 中国をはじめRCEP参加国は、野菜と果物の大生産国であり、RCEPは野菜と果物を直撃します。

 日本の農産物輸入の構造は、穀物・畜産物=「主食・主菜」をアメリカ・カナダ・オーストラリアに依存し、野菜・果物・加工食品などの「副菜」を中国・韓国・東南アジアに依存するという特質を持っています。主食・主菜の輸入依存政策の結果、農業の基盤が突き崩され、自給率は38%に下がりました。

 一方、「選択的拡大」品目として生産が伸びていた野菜・果物などの国内生産に対し、とくに80年代以降、中国・韓国・東南アジアからの「副菜」輸入拡大が重大な打撃を与えてきました。まるで「前門の虎、後門の狼」です。

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大産地、高知県のしょうがの収穫風景(土佐市)


 RCEP(アールセップ)とは?

 アジアの地域的な包括的経済連携(RCEP)協定は、自由貿易協定(FTA)の一種で、東南アジア諸国連合(ASEAN)10カ国と日・中・韓、オーストラリア・ニュージーランドの15カ国からなり、国内総生産・人口ともに世界の3割を占める巨大自由貿易協定です。中国・韓国と初めて結ぶFTAでもあります。


 輸入野菜の8割はRCEPから

 スーパーには、中国産しょうがやニンニク、漬け物、韓国産トマトやパプリカがあふれかえっています。実際、生鮮野菜輸入のうち、中国産が65%、ニュージーランドなど中国以外のRCEP圏産が15%で、合計80%にのぼります(図1)。

 このほか、外食などで使われる加工・冷凍野菜を含めれば、中国からの輸入は30年間で27万トン(90年)から155万トン(18年)へ6倍になっています。

 2000年代始めに「農薬汚染冷凍ほうれん草事件」や「毒入り冷凍ギョーザ事件」があったにもかかわらず、です。RCEP協定では、さすがに冷凍ほうれん草や白菜は、中国・韓国向けには関税を撤廃しませんでした。

 しかし、野菜全品目をASEAN・オーストラリア・ニュージーランドに対して関税を撤廃します。また、しょうが、ごぼう、えんどう、かぼちゃ、ブロッコリー、アスパラガス、枝豆など、輸入急増によって自給率が30〜60%台に下がっている品目については、中国に対しても関税を撤廃します(表1)。

国会はRCEPを拙速に承認するな!

 後継者や中山間地を直撃するRCEP

 これらの多くは「高収益作物」であり、中山間地域の農業や新規就農者の経営確立の決め手として生産拡大が期待されている野菜です。RCEPは新規就農者や中山間地域を直撃する協定です。

 政府はコロナ禍による米の消費減と米価暴落対策をとらず、減反拡大の押しつけに血道をあげていますが、RCEPが野菜・果物を直撃すれば、転作の道をふさぎます。

(新聞「農民」2021.4.12付)
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2021年4月

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