福島原発事故 生業(なりわい)訴訟
高裁も東電・国を断罪
(2/2)
農業と原発は相いれない
福島中の農民の痛切な思い込めた裁判
生業訴訟原告団事務局次長 福島県北農民連事務局長
服部崇さんに聞く
提訴から7年間、全国からの支援も受けて、みんなでたたかい抜いてきました。勝訴は本当に涙が出るくらい、うれしいです。
農民連の会員がこの生業裁判の原告に加わるその思いは、お金ではなく、原発事故への国の責任を認めてほしいということです。福島の農民は農地を汚染され、みんな本当に苦労していて、10年近くたった今でも東電に損賠賠償を要求し続けています。
福島の農業の条件不利を
補償する抜本的制度必要
率直に言って、原発事故の影響で福島県産の農産物は今でも市場価格は低く、農業がやりづらい現状があります。だから原発事故の被害を受けている福島県の農家には、中山間地直接支払いのような、国が直接に条件不利を補償する新たな制度がどうしても必要です。そのためにもこの裁判で原発事故の責任が国にあるということが明確にされることが、非常に重要だったのです。
原告になった自分たちだけがよければいいというのではなく、福島で農業を続けていくために、福島中の農家を代表する気持ちでたたかってきました。今回の勝利は一つの区切りにはなりますが、これで終わりではない。
最高裁でもたたかいは続きますし、さらに国に責任があると認められてからが、新たな制度を作らせるという本当の運動の始まりだと思っています。
原発事故の被害を受けて、全国に避難した農民連の仲間もたくさんいるし、避難先で裁判をたたかっている仲間もいます。避難していても農民連の仲間であることに変わりはありません。そういう仲間とももっと連携と支援を強めていきたいと考えています。
=川俣町のトマト農家 藤原清さん=
最高裁でも裁判が続きますが、もっと言えば、日本から原発がなくなるまでこのたたかいは続けていかなければと思っています。
原発が建設された当時も原発について勉強したり、反対したりしたのですが、その危険性がよもや現実になるとは正直、思っていませんでした。
ミニトマトと菌床シイタケを作っていますが、農家として原発事故ではたいへんな苦しみを味わいました。事故後、実際に売れなくなり、価格も下がりました。それに、生産者として果たして本当に消費者に食べてもらってよいのか、みんなたいへん苦しみました。この苦しみを次世代に残さぬよう、たたかい続けることが私たちの責務だと思っています。
(新聞「農民」2020.10.26付)
|