食料自給率
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関連/食料自給率 過去最低の37%に下落(1/2) /食料自給率 過去最低の37%に下落(2/2) |
安倍政権は、TPP11と日欧EPAの発効に続いて日米貿易交渉で「大枠合意」し、さらに中国を含む16カ国の「アジア地域包括的経済連携」(RCEP)の年内合意をめざしています。これらは、アフリカとロシアなどを除く世界中を相手にTPPを拡散し、“世界総自由化”を狙うものです。
そうなれば、日本の食と農はどうなるか、政府自身の試算が雄弁に物語っています。
7月下旬から8月初めの北海道の小麦の収穫風景。今年は豊作です=撮影・阿保静夫さん(本別町) |
2010年11月、農水省は、農産物輸入が世界レベルで自由化された場合、食料自給率が39%から14%に落ち込み、米生産は90%減、豚肉・牛肉生産は70%減、小麦・砂糖生産は壊滅し、農業生産額は半分になるという悪夢の試算を公表しました(4)。
また、東京大学の鈴木宣弘教授は、豚肉や牛肉の自給率が10%台に落ち込み、牛乳と果物の自給率が20%台、野菜でも40%になると試算しています(5)。
いま安倍政権がのめりこんでいる“世界総自由化”が進めば、悪夢は現実のものになりかねません。
世界最低レベルの自給率のもとで、現在でも危ない輸入農産物に対する抵抗力はきわめてぜい弱ですが、「無農・亡食」の国になるのを許せば、抵抗力は決定的に奪われることは必至です。
私たちは、こういう「無農・亡食」政治の転換――(1)自給率向上にとって最大の障害である市場開放・自由化路線を転換する、(2)国際社会の主流となっている家族経営を基盤とする農業政策への転換を基本計画のベースにすること――を強く要求します。
しかし、「自動車に25%追加関税をかける」という脅しに屈して農産物を売り渡し、要りもしないトウモロコシの“爆買い”まで約束したのが安倍政権です。小麦・大豆“爆買い”の密約も取りざたされています。
小規模農家が多いアジアの農業の生産力と人口扶養力は、アメリカやオーストラリア、ヨーロッパをはるかに上回っており、なかでも日本は群を抜いています。安心・安全な食を子どもたちと私たちのために――そのためには、「無農・亡食」の道を突き進む安倍政治をやめさせ、日本農業と農民の底力を生かしきる政治へ転換することこそが求められています。
農地面積は、工場や道路、宅地への転用や荒廃農地の発生等により、面積が最大だった1961年に比べて約162万ヘクタール減少し、73%にまで落ち込みました。
逆に耕作放棄地は年々増え、1985年に13万5千ヘクタールだったのが2015年には42万3千ヘクタールと約3倍に急増しています。
荒廃農地の発生原因は、高齢化と労働力不足に加えて、農産物価格の低迷や農地の受け手がいないことなどがあげられます。
農業就業人口も減少に歯止めがかからず、2010年に260万6千人だったのが19年には168万1千人へと約10年で100万人近くも減少しました。
さらに農業就業人口のうち65歳以上は19年に118万人で約7割。平均年齢も18年で66・8歳と高齢化が顕著です。(表)
こうして農地も農業者も減って、全体として生産基盤は減少傾向にあります。この現実を抜本的に変えない限り、自給率の向上は絵に描いた餅です。
神奈川・港北支部 箕浦公子さん
これまで食べ物はなるべく産直や生協などで買うようにしてきましたが、スーパーなどに行くと、あれもこれも輸入品。安全な食べ物は欲しいけれど、高いお金を出さなければ手に入らないのでは、消費者として困ります。
先日、新婦人しんぶんや新聞「農民」に、輸入小麦からグリホサートが検出されたという記事が載っていました。それを見ても、「安全なものを食べ続けるには、近くで生産するのがもっとも合理的なはずなのに」と思っています。食べ物の安全性は、自分たちの世代だけでなく、子どもなど次世代にとってもとても大切な問題です。
新婦人産直の仲間ももっと増やしたいと思いますが、同時に個人の努力だけでは食の安全は守りきれません。国全体の食料自給率を向上させることで、すごくこだわった食生活をしなくても、誰もが身近で、簡単に、安全な食べ物を食べ続けられることが大切なのだと思います。
[2019年9月]
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