「農民」記事データベース20190916-1376-07

食料自給率
過去最低の37%に下落
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このままでは飢餓スレスレの食生活に

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 2018年度の食料自給率は過去最低を記録しました。カロリー自給率は37%で、大凶作と「米パニック」に見舞われた93年度を0・04ポイント下回る異常事態です。カロリーベースで見れば、日本国民は1日3食のうち2食を海外産食料に依存し、国内産で2食をまかなえるのは野菜・いも・きのこぐらい。国民の体の成り立ちを「原産地表示」すれば、3分の2は「非国産」ということになります。このままで、私たちは食べ続けることができるのか、食の安全は確保できるのか――。


自給率低下は、危ない
輸入農作物に対する抵抗力奪う

 輸入激増が引き金 

 政府は「天災」が響いたと弁解しています。しかし、主因は安倍政権の「食料自給率引き下げ政策」であり、特に輸入激増が自給率低下の引き金になりました。

 TPP(環太平洋経済連携協定)11が18年12月30日に、日欧EPA(経済連携協定)が19年2月1日に発効し、関税が大幅に引き下げられた結果、1〜3月に牛肉・豚肉・チーズなどの輸入が急増しました。自給率データは18年4月から19年3月の実績であり、TPP11と日欧EPAの発効による輸入急増が反映しています。

 その結果、牛肉・豚肉・チーズの自給率は大きく落ち込みました。豚肉はついに50%を割り込み、牛肉は36%、チーズにいたっては14%です。しかもTPP11と日欧EPAにもとづく関税引き下げ・撤廃は年々加速します。これに日米FTA(自由貿易協定)が加わったらいったいどうなるのか?

 世界で最低クラスの自給率

 世界の主要国の中で、日本の食料自給率は最低クラスです(1)。OECD(経済協力開発機構)加盟35カ国中、日本以下なのは、砂漠の国イスラエル(穀物自給率8%)と、極北のアイスランド(同0%)だけ。

 温暖多雨で、農業生産には絶好の条件に恵まれている日本が、世界で最低クラスの低自給率国になったのは、日米安保条約でアメリカの「食糧の傘」の下にしばりつけられ、農産物の輸入自由化がどんどん進められてきたからです。

 輸入が止まったときの政府の食事メニュー

 安倍政権は、15年3月に「食料・農業・農村基本計画」を改定し、カロリー自給率の目標を50%から45%に引き下げました。

 計画の「参考」として示されたのが「食料自給力指標の食事メニュー例」です(2)。

 食事メニュー例(Aパターン)によると、輸入が全くストップした場合、国民の3食は茶わん1杯のご飯に浅漬けか野菜炒め、焼き魚(夕食のみ)になり、“ぜいたく品”として牛乳が5日に1杯、鶏卵15日に1個、焼肉10日に1回という貧相なものになります。覚せい状態の生命活動を維持するために必要最低限のエネルギー(基礎代謝)ギリギリの1478キロカロリーしか摂取できません。

 こういう飢餓スレスレのメニューになるのを百も承知で、安倍政権は自給率目標引き下げを閣議決定したのです!

 輸入が全くストップするというのは極端すぎるかもしれません。しかし、想定される大地震による港湾の壊滅・輸入途絶という事態がありえないと、誰が断言できるでしょうか。

 さらに、世界の飢餓人口が増え続けるなど、食糧危機が続いています。8月に発表されたIPCC(国連気候変動に関する政府間パネル)特別報告は、人口増加に加えて、すでに頻発している洪水や干ばつ、酷暑の影響によって、2050年に穀物価格が最大23%値上がりし、食料不足や飢餓のリスクが高まると警告しています。

 “破れかぶれ”のような安倍政権のシナリオに、私たちの食をゆだねるわけにはいきません。

 食の安全と自給率 

 「量」の問題とともに、「質」(食の安全)の問題も切迫した課題です。これも異常に低い食料自給率と大いに関係があります。

 TPP協定は、アメリカの要求で、輸入食品の検査時間を半分にカットするルールを導入しました。現状でも、残留基準値の2〜10倍という農薬まみれの野菜が発見されても、時すでに遅しで、発見された時には「消費者の腹の中」というのが実態です。このルールが日米FTAでも踏襲されることは必至です。

 特に恐ろしいのは、輸入豚肉・牛肉です。アメリカ・カナダ・オーストラリアでは、発がん性やアレルギーなどの危険がある「成長促進ホルモン剤」が牛・豚の“増体重”薬として使われています。日本は国内での使用は禁止していますが、輸入は禁止していません。

 アメリカでは、輸入を禁止しているEU向けには、ホルモン剤を使わない「特別プログラム」の豚肉・牛肉が生産され、日本にはホルモン剤をたっぷり使った「一般向け」が輸出されており、検査が空洞化すれば、危ない豚肉・牛肉がますます大手をふって輸入される危険が強まります。すでに牛肉の自給率は36%、豚肉は48%です(3)。

 農民連食品分析センターは4月に、輸入小麦を使ったパンの多くから発がん性の農薬・グリホサートを検出し、農水省の調査でも、アメリカ、カナダ産小麦の90%以上からグリホサートが検出されました。収穫目前に農薬(除草剤)を散布する省力化農法が広がっているためです。

 小麦の自給率は12%。日米FTAでは、小麦にも「アメリカ枠」が設けられることは確実で、“農薬汚染パン”の脅威は今後も続きます。

(新聞「農民」2019.9.16付)
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2019年9月

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