第23回大会
笹渡義夫会長のあいさつ
(大要)
関連/農民連 第23回定期大会開く
第23回定期大会に参加された皆さんに感謝申し上げます。
農民連は1989年結成ですが、1984年の「農民運動の全国センターを考える懇談会」の結成が出発点です。歴史の節目に、農民懇結成に踏み出した先輩諸氏の英断なくして今日の農民連は存在しませんでした。中央、地方で農民連を支えてくれた先輩の方々に深い敬意の念を表します。
国民の命の糧を生産する農民の組織として、「ものを作ってこそ農民」の旗を高く掲げ、強大な農民連の建設をめざして奮闘する決意です。
30年の歩みと教訓 なぜ結成されたのか
1988年当時、竹下内閣はアメリカの外圧を利用して農産品13品目の自由化に続いて牛肉・オレンジの自由化を受け入れ、ガット・ウルグアイラウンド、WTO(世界貿易機関)協定で国民の主食・米まで自由化に踏み出す動きを強めていました。日本農業と国民の食料に決定的影響をもたらす事態のなかで、要求で団結し、国民諸階層と連帯して統一的にたたかう農民運動の全国センターが切望され、その期待を受けて結成されたのが農民連でした。
農民連は結成以来、WTO国会批准阻止、BSE問題や米価暴落対策、食品分析センターの創設と輸入農産物の残留農薬摘発、被災者救援や福島原発事故の損害賠償、農協解体攻撃やTPP(環太平洋連携協定)阻止など、幾多のたたかいを発展させ、成果を実現してきました。たたかいを通して、農業分野はもとより、日本社会に一定の市民権を持った組織としての地歩を築いたと確信しています。
ナショナルセンターの在り方
農民連は要求で一致する全ての農民に団結を呼びかけ、共同の発展に努力してきました。
今大会には、JA全中や政党、そして初めて全日本農民組合連合会(全日農)からもお祝いのメッセージが届いています。TPPや種子法廃止反対のたたかいなど、一致点での共闘を積み上げてきた「行動綱領」の生命力の成果といえます。
今年は一大政治決戦の年です。安倍農政に怒りと不満を募らせ、新しい政治と農政を模索している多くの農民や農業関係者とともに、農政と政治を変えるために、力の限りたたかおうではありませんか。
30年の運動と世界の流れ
国連は2017年12月に「家族農業の10年」を、昨年12月には「農民の権利宣言」を決議しました。こうした持続可能な発展に向けた国際社会の動きは、農民連が結成以来掲げてきたことと多くの点で一致するものであり、強く歓迎します。
今大会には国連食糧農業機関「FAO」日本事務所のチャールズ・ボリコ所長が参加されています。国連機関の代表を農民連大会にお招きするのは初めてのことです。
日本では国際社会の流れとは真逆の政策が推し進められています。日本で持続可能な社会をめざす運動は、農政の転換、農山漁村を蘇らせる運動です。全国津々浦々から「国連家族農業の10年」のキャンペーンを展開しようではありませんか。
組織に関わって
農民の渦巻く要求の解決と、根本的解決の展望を掲げて奮闘する農民連の活動は、多くの農民や農業関係団体に信頼を広げています。30年前に本部も都道府県連も組織基盤が未確立な状態の中で発足し、組織原則、財政など、先進的な経験をより所に、近代的組織作りを行ってきました。離農が急激に進む中で組織を基本的に維持し、47都道府県に連合会を持っています。農家比で10パーセントに迫る県連組織や、地域で重要な位置を占める地域組織が生まれていることは大きな希望です。
しかしながら会員、機関紙とも2002年に到達したピーク時から後退しており、組織建設は最も遅れた分野になっていることを指摘せざるをえません。
組織と運動を前進させる重要な教訓は、農民の切実な要求実現の運動を、広範な農民に働きかけることです。会員が組織運営に必要な財源を会費として拠出すること、都道府県連に事務所と専従者を配置し、専従者を配置できる範囲で単組を配置し、行政区ごとに支部・班を配置し、民主的運営を貫き、仲間を大切にして助け合って運動することです。
そして機関紙を組織活動の根幹に据えてきたことが、団結の強化と、自前の財政を確立する上で決定的な役割を果たしてきました。
農民連の主張や要求運動が農家と響きあう今、目的・意識的に働きかければ会員と「農民」読者を大きく前進させる展望が生まれています。それぞれの組織が「30年の視点」で振り返り、地域の農家戸数比で積極的な目標と、青写真をもって奮闘すること、30周年のこの春の仲間作り大運動で、会員と読者拡大の大波を起こそうではありませんか。
結びに
先輩方からバトンを受け継いで30周年。私たちには次の世代にバトンを渡す責任があります。私たちの運動は農業を守る運動ですが、それだけにとどまりません。より人間らしい価値観で新しい社会を作り創造する運動であることを強調して開会のあいさつとします。
(新聞「農民」2019.1.28付)
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