「農民」記事データベース20180917-1327-08

ふるさと
よもやま話

埼玉農民連会長
立石昌義


貿易自由化に抗して
小麦の自給率を上げよう

 私のふるさとは、北に赤城山、西に浅間山・榛名山、南に秩父連山、西に男体山と四方山(よもやま)を望む埼玉北部の児玉郡上里町です。

 上里町は、この夏に本邦初の41・1度を記録した県北の熊谷市から西方の群馬県に隣接する少雨で冬寒く夏暑い麦作に適した町です。

 上里町の特徴は、「JA埼玉ひびきの」カントリーエレベーターに掲げられた看板「全国一の種子小麦」にも示されていて、米・麦二毛作とキュウリをはじめとする野菜生産の盛んな町です。

画像
JAひびきのに掲げられた看板

 二毛作の歴史は古く、隣の本庄市の今井条理遺跡の発掘調査から鎌倉時代には米麦二毛作が行われていた可能性が示唆されています。(新聞「農民」第561号・農の考古学=22=から)

 その中世からの二毛作の麦作に困難が生じたのは、自民党農政による2007年の品目横断的経営安定対策でした。

 品目横断経営
 安定対策から麦作を守る!

 当時の種子小麦は農林61号で上里町の中小農家によって盛んに作られていたのですが、品目横断対策によって4ヘクタール以下の農家には補助金がなくなってしまいました。

 これに対して、日本共産党推薦の村田仙太郎農業委員が全国に先駆けて町議会へ「麦作への補助金の削減をやめるよう国に意見書を提出すよう求める請願」を提出し、農民連も県交渉を行いました。結果的には、「ひびきの農産」という会社をつくり、4ヘクタール以下の農家も参加して麦作を続けて今日に至っています。

 種子法廃止に伴う
 麦作への攻撃に対

 安倍政権によって今年3月で廃止となった種子法(主要農作物種子法)に対しては、JA埼玉、農民連や消費者団体の働き掛けもあり、自民党の議員提案で埼玉県議会が「県主要農作物種子条例」を全会一致で採択して4月から条例を発効させました。

 埼玉県は種子法にある米・麦・大豆の中でも小麦の農業生産額が全国3位であり、明治期には全国一のこともありました。

 また、熊谷で麦作の改良に尽くした麦王(麦翁、ばくおう)とたたえられた権田愛三(ごんだあいぞう)が全国に麦踏み・二毛作を広めたことで知られ、熊谷うどんがおいしく食べられていて、うどんの聖地として全国うどんサミットが開かれています。

 小麦は欧米の主要穀物となっていますが、アメリカのボーローグ博士によって農林10号から倒れにくく多収の小麦に改良が加えられ、当時の食料難を解決してノーベル平和賞に輝いたように日本が多大な貢献をしたものです。

 それゆえ、昨今の貿易自由化に抗して小麦の自給率を上げることは、来年からの「国連家族農業の10年」の活動の中でも重要なテーマになると確信します。

(新聞「農民」2018.9.17付)
ライン

2018年9月

農民運動全国連合会(略称:農民連)
〒173-0025
東京都板橋区熊野町47-11
社医研センター2階
TEL (03)5966-2224

本サイト掲載の記事、写真等の無断転載を禁じます。
Copyright(c)1998-2018, 農民運動全国連合会