「農民」記事データベース20180430-1309-09

卸売市場の役割と私たちの生活

食健連がシンポ開く

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 全国食健連(国民の食糧と健康を守る運動全国連絡会)は4月14日、東京・築地市場の講堂でシンポジウム「卸売市場の役割と私たちの生活」を開き、のべ200人が参加しました。基調講演とパネリストの発言要旨を紹介します。


過度の競争・不当不合理な取引

制度による規制が必要

基調報告

 全労連・全国一般・東京中央市場労働組合・中澤誠執行委員長

 卸売市場とは何か。築地市場を例にみてみます。築地市場には、卸(荷受け=全国の産地から荷をひいてくる会社)が水産7社、青果は統合されて1社になります。

 仲卸(セリ取引、相対取引で荷を買い受け、小売店などに販売)は、水産約550社、青果は約80社です。

 かつては、合図のベルとともにセリ取引が午前5時半から始まり、終了のベルと同時に、残った品物の相対取引(自由取引。相談で値が決まる、資本力がある方が有利)が始まりました。

 セリ取引は、適正な価格形成により生産者(産地)と商店街(消費者)を守り、地域経済を守る役割を果たしています。品質を競争条件とすることで、生産者に良質の生鮮食品の出荷を促します。仲卸制度の肝というべきものです。

 今は規制が緩和され、夜中の1時頃から相対取引が始まっており、セリが形骸化させられています。その上、市場法が改悪されれば、仲卸はつぶされてしまいます。

 日本では、国内産青果物の市場経由率は約85%で、国産生鮮食料品のほとんどは市場流通しています。また、市場流通でスーパー上位5社(イオン、セブン、ユニーなど)が占める割合は約3割で、フランスの75%などに比べると格段に低くなっています。こうして外資から商店街を守っているのです。

 卸売市場法の改悪は、仲卸をつぶし、卸売市場の機能を骨抜きにするものです。築地市場の豊洲への移転を中止させ、安倍政権を退陣に追い込みましょう。

安定的な食・くらしの基盤確立へ

地域の多様な発展の土台

 仙台市中央卸売市場水産物卸協同組合事務局長・菅原邦昭さん

 中央卸売市場では日々、完全な競争が実施され、需要と供給をつき合わせて価格形成と分荷を行いながら、それぞれの商品に対して公正な値付けをするとともに、取引結果を生産側に伝達することで、産地や生産体制が食生活ニーズの変化に対応するよう促しています。

 また、地域の一次産業である農漁業を、資本力などの大小による差別や支配関係の入り込む余地などを一切排して、地域の二次産業である加工・流通業などと公平・公正に結びます。

 こうして国民(住民)の日々の安定的な食生活(食料安全保障体制)、地域経済の基盤確立へと導き、地域経済の多様な発展の土台を確保しています。

巨大スーパーの市場支配さらに

地域経済はいっそう衰退

 岩手県生協連顧問・加藤善正さん

 市場法「改正」の本質は、巨大スーパーの市場支配をさらに進め、農産物の関税引き下げ、海外の農産物商品の受け皿づくりにあります。

 こうして地方の中央卸売市場、地方卸売市場の衰退が加速し、それに依存する地場の商店の衰退がさらに進みます。地域経済・社会の一層の衰退が進み、貧困と格差、弱肉強食、分断社会が一部の多国籍企業・富裕層によってもたらされます。

 一方で、地域農産物の購入など農業・農村を応援したいと考えている消費者は85%にのぼり、協同組合や家族農業を応援する世界の潮流も大きくなっています。

大企業の暴利獲得のため
農家・消費者にしわ寄せ

 新日本婦人の会東京都本部・岡林奈緒子さん

 消費者として食品を買うときに気にすることは何か。(1)安全性(2)おいしさ(3)価格ではないかと思います。

 TPP11は、大企業や大資本による弱肉強食をさらに進め、そのしわ寄せ・負担を小規模・家族経営による農林漁業、そして最終的には消費者にさまざまな形で押しつけるひどい協定です。

 卸売市場法「改正」も築地市場移転も、背景にTPP11があると考えるとわかりやすいです。

 遺伝子組み換え食品の承認や農薬の種類・量はどんどん規制緩和され、日本の規制レベルは緩くなっています。この大資本・大企業のための政策をストップさせるために、今まで以上に消費者と生産者、市場関係者がしっかりとつながり、広げていくことが必要です。

“築地に残りたい”
市場関係の大多数の声

 築地女将さん会会長の山口タイさん

 築地市場の仲卸関係者にアンケートをとったところ、「(当然またはできれば)築地に残りたい」が93%でした。豊洲でいいところがありますか、どこにもありません。先人たちが築き上げた築地市場のようなすばらしい市場を、希望あるものとして、子どもたちに残したい。

(新聞「農民」2018.4.30付)
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2018年4月

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