「農民」記事データベース20180319-1303-08

東日本大震災・原発事故から7年
被災地の農業は今
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 東日本大震災から7年。被災地の農業はいまどうなっているのか。福島第一原発事故で避難を余儀なくされた福島県浜通り地域と、津波被害で田畑が壊滅的な打撃を受けた宮城県東松島市の現在をみてみます。


福島・南相馬市

不安を抱えて帰還
強制避難区域の今は

浜通り農民連事務局長 三浦広志さん
寄稿

 福島県南相馬市小高区は、原発から20キロメートル圏内にあり、2012年4月15日までは、強制避難区域で、許可なく立ち入ることができませんでした。警戒区域解除後も、放射能汚染レベルによって、避難指示解除準備区域・居住制限区域・帰還困難区域に分けられ、もっとも放射線量の低い避難指示解除準備区域でも、農作物の試験栽培はできるものの販売することはできませんでした。

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放射性廃棄物が詰まったフレコンバッグがうずたかく積まれています(飯舘村)

 2016年7月12日に居住制限区域と避難指示解除準備区域で避難指示が解除になり、翌17年4月には、小高区内の4つの小学校の児童66人が1カ所の小学校の場所で再開され、小中・高等学校も再開されました。また、区内に2つあった高校も、一つになり、小高産業技術高校として開校しました。

 しかし、震災前1万2000人程の人口に対して、帰還した人は2300人ほどで、約2割弱といったところです。生活必需品の販売は3軒のコンビニエンスストアとNPOが運営している駅前商店が主です。周囲には空き家と荒れ地が目立ち、大半は不安を抱えながらの帰還のようです。

 農業については、避難指示解除に伴って、2017年から販売目的の米の栽培もできるようになりました。


6年ぶり農業に挑戦

約2.1ヘクタールだが米作りは良い

道中内 隆さん

 小高区女場(おなば)地区に家族全員で戻った道中内(どうちゅうち)隆さんは17年、6年ぶりの米づくりに挑戦しました。改装した住宅の脇に作業場を新築。その中には、買い直した籾乾燥機や色選機、もみすり機など農機具があります。

 隣の農地に建てた農機具格納用のテント倉庫には、真新しい田植え機やトラクターなどの農機具が並んでいます。津波被害のあった苗用のビニールハウスも新たに建てました。道中内さんは、75歳を超えており、「一緒に暮らしている孫に期待している。やっぱり米作りは良い」と再開の喜びを語っていました。

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コンバインに乗る道中内さん

 津波跡地は、まだ手付かずの状態で、田んぼの形も整っていないため、比較的津波被害の少なかった耕作可能な部分の農地を借りて、約2・1ヘクタールでのスタートとなりました。この地区で米作りを再開したのは、道中内さん一人ですが、2018年はさらに規模を拡大して、自分の農地が基盤整備事業を終えて再開できる日に備えています。


「半農半エネ」農業再生

20ヘクタール米栽培目指す
80歳、心は青年だ

佐藤忠吉さん

 また、山間の金谷地区で昨年から米作りを再開した佐藤忠吉さんは、「半農半エネ」で地域と農業の再生を目指しています。また、避難指示が出ていた南相馬市の農民連会員が出資して「合同会社金谷村守りソーラー」を設立。2016年2月から発電を開始しました。金谷村守りソーラーとNPO法人「野馬土」の計画した復興事業は、南相馬市の復興整備計画に位置付けられ、第1種農地の金谷地区の田んぼを農業委員会を通さずに農地転用し、そこに太陽光発電設備を並べました。

 周囲の、除染され茶色い砂のような土を入れられた田んぼに、ナタネをまき、農地の再生を始めました。復興庁の復興加速化交付金によるリース事業で大型農機具を借り、2017年にはナタネの規模を、大幅に拡大するとともに、1・3ヘクタールの水田で稲を作りました。今年は、15ヘクタールのナタネと20ヘクタールの米の栽培を目指しています。

 80歳になった忠吉さんは「農業をやる人が誰もいなくなってしまったから田んぼを借りたいだけ貸してもらえる。若い頃、規模拡大するのが夢だったが、こんな形で実現するとは。年は80だが、心は青年だ」と語っています。

 今年からは息子の修一さん(50)も会社を辞め、合同会社の社長として金谷地区の復旧に当たることになり、拠点の一つとするべく、「野馬土」とともに、観光用施設を建設中です。福島においでの際は、ぜひお立ち寄りください。

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テレビの取材に応じる佐藤さん

 放置農地の再生と地域の新構築

 浜通り農民連は、旧警戒区域にあり、津波後7年過ぎても復旧されることなく放置された農地の再生や人が住めなくなった地域の新たな構築という課題に積極的に取り組んでいます。原発事故後という新たな課題を、再生可能エネルギーと農業の「半農半エネ」というキーワードで今後もフル活用して進めていきます。

(新聞「農民」2018.3.19付)
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2018年3月

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