「農民」記事データベース20170918-1279-07

TPP上回る
史上最悪の農業破壊協定
日欧EPA
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TPPプラスが生む自由化ドミノ

 影響はこれにとどまりません。日欧EPAが、自由化ドミノを引き起こしかねないからです。

 2015年に発効した日豪EPAには、日本が他の協定で日豪EPA以上の自由化を認めた場合には、自動的にオーストラリアにも適用されるとの規定があります。

 現在進行中のTPP11の交渉でも、交渉参加国からTPP以上の譲歩を突きつけられるのは明らかです。

 アメリカの養豚業界はTPPでの合意をEUに先行されることに強い不満を表明。「日米経済対話」でTPPと日欧EPAを土台にさらなる自由化を要求する日米FTAを早期に開始せよとの圧力を強めています。

 昨年の臨時国会で、政府はアメリカのTPP離脱が確実な情勢の下で、TPPの国会批准を強行。TPP合意を今後のFTA交渉の最低基準とした政府の罪は重く、EUに逆手にとられたと言わざるをえません。

「EUへの輸入が増える」は幻想

 政府は、「EU向け農林水産品のほとんどが即時関税撤廃になる」「新たに5億人の市場が広がる」と、あたかも日本からEUへの輸出が広がるような幻想をふりまいています。

 現在、豚肉、鶏肉、鶏卵、牛乳・乳製品などは、厳しい安全性基準や環境基準、動物福祉の基準によって日本からの輸出は禁止されています。これを乗り越えるのは、きわめて厳しいのが実態です。

 欧州への農林水産物・食品の輸出は、2016年で423億円、全体の5・6%。内訳は、アルコール飲料53億円、ホタテ貝35億円、ソース混合調味料25億円、緑茶23億円、しょうゆ19億円など、純粋な農産物は緑茶のみ。農家所得の向上につながるなどというのは大ウソです。

影響は農業だけにとどまらない

 日欧EPAは、食の安全や地域経済、国民のくらしを壊すTPPに匹敵する危険な協定です。

 衛生植物検疫措置や貿易の技術的障害が貿易を妨げないようにするため、専門家が関与する「技術的協議」の開催、「利害関係者の参加」や意見提出も認めています。食の安全や表示に、EUの大企業の意向が反映できる仕組みが含まれているのです。

 「公共調達」では対象自治体を都道府県・政令指定都市から20万人以上の中核都市まで広げるなど、TPP以上の譲歩をしています。

 学校給食に地場産の農産物を使う運動や地域振興のために地元の中小企業を優遇する諸制度の妨げとなりかねません。


強まる秘密主義

 日欧EPA交渉は、保秘契約が結ばれていないにもかかわらず、TPP以上の秘密交渉となっています。

 TPPでは、国会で交渉過程を明らかにするように求められた日本政府は、タイトルと日付以外は黒塗りのA4判45ページの文章を提出し、秘密交渉に怒る世論の厳しい批判を受けました。しかし、日欧EPAでは、黒塗り文書さえ出さず、交渉内容を一切秘密にしています。

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TPPの交渉資料は表題と日付以外はすべて黒塗り

 しかも、TPPのときには行った影響試算さえ行っていません。私たちが行った農水省交渉では、大枠合意による影響試算はあくまで公表しないという姿勢です。

 交渉過程も影響試算も明らかにしないという異常な秘密主義に強く抗議しましょう。

(新聞「農民」2017.9.18付)
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2017年9月

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