「農民」記事データベース20170731-1273-12

生産緑地をめぐる
現状と課題を考える

実態調査まとめ報告会

関連/都市農業が守られるかどうかの岐路
  /生産緑地をめぐる現状と課題を考える


大阪農民連と
都市農業研究会

 “生産緑地の2022年問題”が取りざたされ始めています。1992年に生産緑地地区が最初に指定されてから30年となり、この時に指定された多くの生産緑地の所有者が市町村にその買取申し出ができる状況になるのがこの年です。

 市町村が買い取らず他の農家に買い取りをあっせんできなかった場合は、生産緑地としての管理義務がなくなり農地を他用途に転用することが可能となります。高齢化と後継者難、そして都市内での営農環境等が深刻な問題となるなかで、いかにして都市農地を活用し都市農業を存続させるかが、都市農家とこれを支援する行政や農業・農民団体の重要な課題となっています。

 経営実態を聞くと

 このようななかで昨年暮れ、和歌山大学経済学部の大西敏夫教授から、大阪都市農業研究会と農民組合大阪府連(大阪農民連)に、府内の生産緑地の実態調査について協力要請があり、10月から12月にかけて、農民組合員を中心に13戸を対象に経営実態や後継者問題、今後の営農継続等についての聞き取り調査が実施されました。このたびその結果がまとまり、7月1日に報告会が大阪市の大阪農民会館で開催されました。

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大阪都市農業研究会と大阪農民連との合同報告会=7月1日

 対象農家の経営規模は、4ヘクタールが1人、1〜3ヘクタールが4人、40アール〜90アールが8人です。なかには、野菜(施設含む)を中心に米作も併せ持ち、直売所出荷や契約栽培、観光農園等を営む専業農家で、30種類の野菜を栽培する人もいました。

 生産緑地が過半数を占める農家は10戸、全てが生産緑地は2戸ありました。明確に生産緑地としての継続を表明されたのは5戸です。他の8戸は「市街化調整区域に移りたい」「最終的には家族の判断」等と答えています。

 緒に就いたばかり

 住宅と混在する営農環境下で、「点在する生産緑地が戸建て住宅、マンションと隣接して、残さ処理や農機騒音、農薬散布など周辺住民とトラブルに気を遣いながら作業をしている」等の苦労話も出されました。

 今般の生産緑地法、都市計画法、建築基準法などの改正は、生産緑地の面積用件の引き下げ(300平方メートル)、特定生産緑地指定制度(買取申し出始期の10年ごとに延長)等、都市農地保全に向けた制度設計・制度改善として評価できるとはいえ、都市農家が将来にわたって安心して農業ができる仕組みづくりから考えると、いまだ「緒に就いたばかり」といえます。

(大阪農民連 田中豊)

(新聞「農民」2017.7.31付)
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2017年7月

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