米問題で列島騒然の状況を!!
福島と島根両県でお米のシンポジウムが取り組まれ、どちらも生産者だけでなく、行政関係者、農協、米屋さんやなど、100人を超す参加者があり、米問題が地域で話題になっています。共同の力で地域を守るため、農民連が声を上げています。18年以降の米問題に悩んでいる農家は数多くいます。このような取り組みが全国で実施されることが求められています。改めて現状と問題点をみていきます。
安い多収米作れ生産数量減らせ
矛盾きわまった政府
2017年産の見通しは
2017年産米の概算金や買取価格の決定は早期米を除いてまだ先ですが、B銘柄では500円〜1000円、コシヒカリでも300円〜500円の相対取引基準価格の引き上げを予想しています。
古米在庫の圧力の少なさもあり、17年産米の過剰を心配する声は聞こえてきませんが、価格が上がりすぎると、消費が冷え込み、来年の春頃には下落するとの見方をする業者もあります。しかし、18年産米の作付け動向や作柄が読めない以上、17年産米の数量確保は必要です。
「マーケットイン」は手のひら返す
「戸別所得補償」の復活で
安定した米づくりを
2018年産以降の米作りは
政府・農水省は、18年度以降の米つくりを、「マーケットイン(市場に必要とされるものを必要なだけ作る)で需給は安定する」として、業界が要求する「安い米」つくりを押し付けようとしています。しかし、業界の常識は「マーケットインは手のひら返す」です。市場任せにすることなく、国が需給と価格の安定に責任を持って、政府が一括して管理し、用途別に配分する体制をつくることこそが求められています。
「毎年8万トンの米の消費量が減少するので、生産数量を減らせ」と生産者に減産を押し付ける米政策を進める一方で、「米価が上がれば消費量が減少する」と安い米づくりを呼びかけ、多収穫米を増産させています。しかし多収穫品種の米づくりが増えれば、供給量が増えることは明らかで、矛盾した政策です。
昨年のSBS(売買同時入札)米「調整金」発覚の際に「国産米価格に影響は与えていない」と強弁してきました。しかしここにきて、「高い米ばかり作ればSBS米に需要を奪われる」などとし、安い米づくりに誘導していますが、本末転倒です。需給と価格に影響を及ぼすような外米輸入はただちに中止すべきです。
市場まかせで価格は乱高下
市場任せの米政策がどのような事態を招くかは、16年産米でも顕著に現れました。作況108の豊作となった新潟県産コシヒカリ、農協系統の集荷が減少し、相対価格を抑制した秋田県産あきたこまちは市場の思惑により、大きな価格変動となりました。
新潟県産コシヒカリは急激に市場価格が下がり続け、周年供給・需要拡大対策による2万トンの「隔離」を行いましたが、価格下落は止まりませんでした。しかし、1万3000円台半ばまで下落すると買われ始め、もともと系統玉の契約自体は進んでいたことから、市中に出回る米は少なく、価格は大きく上昇しました。
秋田県産あきたこまちは系統集荷が減少していたことと1万3000円台で市場価格は推移し、販売進度も好調となり、市場出回り量が絞られた結果となり、全国銘柄である秋田県産あきたこまちは新潟県産コシヒカリを越す価格となっています。秋田県産あきたこまち使用を売りにする牛丼の全国チェーン店の影響も無視できないものでした。
天候によるわずかな豊凶変動や大手実需の使用米穀の変更などにより価格と量への影響は予想を超えるものになり、18年以降、産地の販売計画はまともに機能するとは思えません。
飼料用米の主食転換と米価下落
16年産米の飼料用米生産量は約48万トンです。このうち、多収品種の割合は43%で約20万トンになります。
20万トンの内訳を農水省は公表していませんが、主食用品種を知事特認品種として多収性扱いしているものは多く、残りの23万トンと併せれば40万トン近くが主食用品種かもしれません。
18年から、米の直接支払い交付金(10アールあたり7500円)がなくなり、飼料用米の主食用米への転換が危惧されます。飼料用米の8万円の交付金が下げられれば、さらに、その転換が進むことが予想されます。
多収性品種が増えることになれば、ナラシ(収入影響緩和)の設計変更も求められ、収入保険加入への誘導にもつながります。
なによりも安い米が市場に増え、併せてSBS米のアメリカ産中粒種が10万トンに近いボリュームで輸入されることになれば、市場価格はさらに下方に引っ張られます。
「戸別所得補償」復活と地域農業守る共同を広げよう
民主党政権時代の2010年に導入された、「戸別所得補償政策」(10アールあたり1万5000円)の復活が18年以降の米作りを継続し、土地利用型農業でも新規就農者を受け入れていける最低条件になります。
また、豊作などの過剰生産による価格下落をカバーする需給調整の公的責任は国が果たすべきものであり、市場への介入を政策と予算で明確にさせるべきです。
経営所得安定対策の水田活用の直接支払い交付金を活用し、自給率の低い麦・大豆生産など、主食用米以外の作物生産も含め、多様な生産への取り組みへの支援を継続・拡大すべきです。畑作物への支払い交付金、産地交付金の拡充など、地域の生産者・農協、業者などとともに要求行動を大きくしていきましょう。
さらに卸業者・米屋さんと築いてきた準産直米も安定した生産を支える重要な販路です。新たな販路拡大も視野に地域の生産者に呼びかけを広げることも18年以降の米作りに欠かせないものです。
各地で学習会やシンポジウムを開催し、全国から米問題で騒然とした状況をつくりましょう。
(新聞「農民」2017.7.31付)
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