「農民」記事データベース20170731-1273-08

米農家の心に灯をともす
取り組み広げたい

島根と福島で“お米シンポ”

関連/米農家の心に灯をともす取り組み広げたい
  /米問題で列島騒然の状況を!!


島根

島根県農民連会長
長谷川敏郎

 平成30(2018)年から国による米の生産数量目標配分がなくなります。これをどう考え、何を作って、どう販売していくのか考えようと、島根農民連は7月16日、松江市内で「お米のシンポジウム」を開催しました。JA島根の幹部や行政関係者、松江市の農業委員、お米屋さん、消費者ら104人が参加しました。

 島根県農林水産部の長野正己農産園芸課長が県の考えをスライドで説明しました。2年間は従来通りの仕組みを続け、検証しながら島根の米を守りたいと訴えました。

米業界
「生産が維持できるのか
そのための政策が必要」

 後継者なしや高齢化の苦労も

 シンポでは松江市内で140ヘクタールの水稲を中心に事業を展開するライスフィールドの吉岡雅裕社長や中山間地の米作りを守るため、農民連ふるさとネットワークの準産直に取り組む奥出雲農民連の田食(たじき)道弘事務局長が発言。「耕作ができなくなった農家の農地がどんどん出て規模拡大せざるをえないが後継者難。条件不利地では高齢化と有害鳥獣で苦労している」などの実態が出されました。地域で人づくりを重視し耕作放棄地をなくし農地を守るため懸命に努力している姿が報告されました。

 ふるさとネットの根本敬代表は「米価低迷が続き米の収量水準は頭打ちになっている。農家以上に米の流通業者は今後の米生産に危機感を持っている」と述べ、国民の主食確保のため「田まわり」など農家の技術と元気を高め、心に灯をともす取り組みを広げたいと語りました。

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報告する(左から)長野、吉岡、田食、根本の各氏

 就農する決意を大学2年が報告

 会場から、新日本婦人の会県本部の山崎泰子会長や島根農民連の加工用米を扱うアルファ食品の矢富伸治専務も発言し、消費者も加工業者も安全で安心な国産米を安定して供給してほしいとの思いが語られました。

 島根県立農業大学校2年の金森啓太さんは「若くても農業が好き、米作りが大好きです」と就農する決意を報告し、会場を沸かせました。

 シンポにはお米屋さんも4軒参加。丸中米穀さんは「業務用の安い米が島根はない、すでに足りない米が出ている。作りたい人はしっかり作ってほしい」と呼びかけました。

JA、行政、消費者、流通・加工業者も
訴えれば応えてくれる

 取り組みの中で共同を広げる

 シンポジウムに取り組む過程で、様々な共同が広がり今後の財産となりました。

 企画が決定しパネリストの依頼も確定した6月中旬、さらに7月第2週目に新聞「農民」やしんぶん赤旗、新婦人しんぶんなどに案内チラシを折り込みました。さらに、県庁記者クラブ(16社加盟)にも届け、お米の2018年問題に関心を持ってもらいたいとアピールしました。

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会場いっぱいの104人が参加しました

 6月30日、7月1日には、旧松江市内の米屋さん13軒を訪問し、シンポジウムの案内を行いました。

 7月5日には、私(長谷川)と河津清事務局長でJA中央会、県農政事務所、県農業会議を訪問。JA中央会は「農林会館にいる職員全員(100人)に案内チラシを配布しましょう」と引き受けていただき、農政事務所では支局長と懇談し、「庁内にはメールで全員に閲覧するようにさせます」と約束していただきました。

 農民連の加工用米を扱っているアルファ食品や島根米穀株式会社、島根県米穀販売商業組合(島米連)にも案内チラシを持って懇談を行いました。

 松江市の農業委員会総会(旧法による最後の)で古藤一郎副会長は、総会の最後に案内チラシを読み上げ、「米問題が大事、同僚の吉岡委員もパネリストで出るので皆さんもぜひ参加を」と訴えました。

 これらの取り組みを通じ、2種類のべ1万3000枚の案内チラシをまき、米問題をアピールしました。

 シンポジウムでは、『農民連ブックレット』も19冊普及できました。


福島

福島県農民連事務局長
佐々木健洋

 福島県農民連は6月17日に郡山市でシンポジウムを開催しました。(7月3日付で既報)

 シンポジウム開催にあたり、どんな構成で誰をパネリストに依頼するか検討しました。行政から「平成30年問題」の話を聞く機会はあっても、政策変更の説明のみで、判断の材料に乏しく、えさ米による需給引き締め効果が一定出て、価格浮揚の効果が出ていますが、来年から全国で転作のタガが外れ米価が暴落するのではないかなど、何を作付けするか判断に迷いが増すだけです。

日本人の胃袋を海外に任せられん

 最新情報の中に何かヒントでも

 では、私たちの作った米は、流通の現場でどういう位置づけがされているのか、米流通の最新の情報の中に、中に何かヒントがあるのではないかという思いから、株式会社商経アドバイス専務取締役の中村信次さんにお願いしました。

 中村さんは、家庭の米需要が外食に移り、必要なところに米が不足する問題点を指摘しました。

 もう一人の株式会社開成代表取締役の遠山忠宏さんは、バイオエネルギーを軸にした水田農業経営について報告しました。

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福島で開かれたシンポジウム=6月17日、郡山市

 農民連の運動 ますます大事に

 このシンポジウムを通して、様々なヒントをいただくことができました。参加者からは「どんな米が求められているか見極めて作付けをする必要があるし、所得補償制度は絶対に必要だ。今農民連が進めている運動がますます大事だと確信した」、「いろんな困難があるにせよ、日本人の胃袋を海外に任せるわけにいかない。遠山さんのような複合経営を取り入れ、米作りを続けたい」など感想が寄せられました。

(新聞「農民」2017.7.31付)
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2017年7月

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