農業競争力強化支援法案
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今大切にすべきものは何か。農村社会は2つの領域から成り立っています。1つは、表層領域で食料の生産販売機能をもち、財・サービスの取引と運営や参画を行うものです。農協はこの領域に位置づけられます。
2つめは、基層領域で、地域にある土地や里山など地域資源の保全管理を行い、人のつながりやコミュニティーを維持し、伝統文化、防災、信仰・神事などを守り、司るところです。農家組合など集落組織がここに位置づけられ、地域を支え、地域に根を下ろしているところです。失われたら、取り戻すことができない領域でもあります。
農業競争力強化支援法案や今の農業をめぐる動きは、基層領域の重要性を認識していないか、あえて目を伏せているのではないかと危惧しています。
農業競争力強化支援法案を検討する際に次のことを考えなければならないと思います。(1)第2次、第3次産業の論理を単純に第1次産業に当てはめることは問題、(2)農業には、地域に根を張った根強さが求められる、(3)自給率39%で国民の体の基礎代謝すら賄えていない現状で輸出を語る資格なし、(4)生命の連鎖性という農学の使命から考えたとき、超長期の視点、岩盤規制、成長よりも安定、改革よりも日々の改善・改良が大切――であること。
「農業の競争力」強化と言いますが、今年の農業の競争相手は昨年の農業、来年の農業の競争相手は今年の農業ということになります。法案のいう「有利な条件」とは何か。これは買い支えるという判断や超長期的な視点からの個人的な判断に委ねられるものであり、その是非を他人が判断すると恣意的になる可能性が大きいと思います。
さらに法案のいう「良質かつ低廉な農業資材の供給」について、資材の銘柄の多さは、業者が農業者や農協のニーズに応えてきたという側面があります。各地域の農業の特色や自然条件にも差異があります。
法案は、「農産物流通等の合理化」を実現するための施策と言いますが、農産物の商品特性に対応すべく整備された卸売市場の存在意義をどう考えるのでしょうか。卸売市場は、豊富なアイテム数の農産物を安定的に供給し、わが国の豊かな食生活の創造に貢献してきましたし、これからも貢献します。にもかかわらず、合理化の対象とすることは疑問です。新たな流通経路は枝葉であり、卸売流通という大幹があればこそ、その存在意義を発揮できるという点を忘れるべきではありません。
また、「農産物流通等事業にかかる事業再編または事業参入の促進」等をうたいますが、事業への参入主体は国外企業・資本ということも十分想定されます。食料の安全・安心を担保するうえで大いに疑問です。民間企業の再編は市場原理を基本に進められるべきであり、過剰な介入だと考えます。
さらに、「農産物の直接販売の促進」をいいますが、これは、「間接的な流通経路を選択するな」ということを意味します。既存の中間業者や業界を国家が壊す行為です。
わが国の食文化を守りながら、まず食料自給率60%を目指すことです、せめて国民の基礎代謝ぐらいは自給できる国づくりが必要です。
人的資本への大胆な投資で、農のある世界のひとづくりを実現し、担い手の多様性を尊重し、重層的な担い手構造を構築する必要があります。
[2017年4月]
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