「農民」記事データベース20170327-1256-07

基調報告

小規模沿岸漁業者保護の視点で
漁獲割当の見直しを

持続的なマグロ漁業を考える会 代表
熄シ幸彦さん(北海道)

関連/沿岸漁業者の納得する漁獲規制で資源の回復を
  /小規模沿岸漁業者保護の視点で漁獲割当の見直しを


資源回復には
大規模漁業こそ削減すべき

 私は日本海に浮かぶ北海道・焼尻島で47年間、漁業をしています。島の周辺は1980〜90年代はクロマグロのたくさん取れる、良い漁場でした。ところが90年代半ばから2000年代にかけて、ピタッとマグロが来なくなり、以来、この問題に取り組んでいます。

 私が危惧するのは、「現在の漁獲規制では、中大型巻き網漁業は残れるが、沿岸漁業者の多くは廃業になってしまう」ということです。

 世界的に見れば、FAO(国連食糧農業機関)が95年に採択した「責任ある漁業のための行動規範」でも、「漁業管理にあたっては、沿岸・小規模漁業者が保護されるべき」と明記されていますし、「過剰漁獲能力」、つまり大規模な巻き網漁業などの漁獲量をまず抑えるべきだということも明記されています。しかしこうしたことはあまり知られておらず、日本の水産政策にも明確に位置づけられていません。

 いま沿岸漁業者が取り過ぎだと非難されていますが、漁法別漁獲量を見ても、本当に問題なのは漁獲量の多くを占める大中型巻き網漁法ではないでしょうか。

 しかし、現在の小型マグロ漁獲割り当てがどうなっているかというと、沿岸漁業は2007トン、巻き網漁業は2000トンです。マグロ漁の許可を持つ沿岸漁業者は全国で約2万4000隻もいる一方、マグロ巻き網漁業は13船団しかいないにもかかわらず、です。

 いま、本当に「海が枯れている」状態です。マグロだけでなくイワシもサンマも、サバも、イカも取れなくなっています。そこで訴えたいのが「持続的な資源の利用を考えよう」ということです。産卵場所など魚にとって繊細な海域である沿岸での漁業は、資源のバロメーターです。海の環境を守るためにも沿岸漁業者が成り立っていく必要があるし、そのためには漁獲規制に伴う減収には直接補償をしてほしい。透明性あるルールが必要です。

(要約は編集部)

(新聞「農民」2017.3.27付)
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2017年3月

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