農協を解体して
大企業が農業を食いものに!
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農協つぶしに、地域住民と連帯し対抗を
「今後の課題」に信用事業を含む
白石 安倍首相は、11月28日の規制改革推進会議で、全農改革の他に「農協組織が取り組むべき多くの課題がある。規制改革推進会議としても、しっかりフォローアップしていただきたい」と述べ、大田弘子推進会議議長は記者会見で「多くの課題」の中に「信用事業やクミカンの問題が含まれている」との受け止めを示しました。
内閣府の担当官も「信用事業、クミカンについてはフォローアップの中で取り扱う」と説明していますから、信用・クミカンつぶしは消えたどころか火種は残っていると言わなければなりません。
北出 准組合員は農協のよきパートナー
「アベ政治ノー」国民と野党の共同で 白石
准組合員問題―地域支える役割
北出 もう一つ、准組合員制度についてですが、准組合員は、地域で農協の実践的なよきパートナーです。農協は、農家だけに限るべきというのは、農協本来の役割からもおかしい。地域の住民と一緒にやっていくことが、これからの農村にとってますます大事です。
白石 北海道は、准組合員の割合が最も多く、当然その預金も多く、准組合員によって支えられています。離農した方たちが准組合員として地域に残り、地域の大事な守り手になっています。専業農家だけでは地域は維持できません。
北出 農協の資産で、一番おいしいのは貯金と保険ですから、准組合員の利用規制の検討を加速しろという攻撃も、准組合員の預金と保険が目的だと思います。
白石 准組合員規制の問題は、もともと5年間で検討することになっており、地域農協の死命を制する問題として再浮上することは必至です。
北出 過疎化が進み、地域が崩壊しているといわれるなかで、ちゃんと人がいて、地域を維持しているのは、農村でがんばっている農協があるからです。そして農協は、単に農業者だけの職能組合としてでなく、協同組合として准組合員と一緒になって地域を発展させていくことができる大事な組織です。
白石 社会的、公共的役割を支えるための総合事業が農協の事業です。農協が自己改革をするとなれば、地域から考えることが大事だと思います。
北出 欧米では、農協は農畜産物の販売組合としての性格が強いのですが、日本の場合は、それだけではなく、地域に存在している自主的な協同組合としての性格をもち、地域の人々と協力しないとやっていけません。
暴走のアクセルにストップを
白石 重大なのは、首相官邸お好みの人物を規制改革推進会議などの委員に任命し、わずか1時間程度のお粗末な議論で乱暴な提言を出させて法案を閣議決定し、あとは国会で強行採決するだけというやり方が、小泉政権以来の常道になっていることです。
北出 初めは、なぜここまでやるのかと思いました。安倍首相は第1回推進会議で「規制改革のアクセルを一気に踏み、攻めの農業を加速する」と述べました。9月29日に金丸座長が出した「基本的な考え方」は、未来投資会議との連名になっています。未来投資会議は安倍首相が議長になっていますが、要するに、規制改革の総ざらいをやる組織で、「成長戦略の新たな司令塔」としての役割を担っています。
規制改革のアクセルを踏んで農業・農協つぶしを加速する背景には、2つの特徴があります。一つは、大企業本位、財界主導が徹底していること、もう一つは、対米従属にもとづいた戦略だということです。これは今までの改革の延長ではありません。
白石 今回は「全農の株式会社化」は前面に出ていませんが、「第2全農をつくる」という脅しまでかけて「自己改革」を強制し、うまくいってもいかなくても、やがて穀物メジャーや肥料・農薬メジャーが全農・農協系統を傘下におさめることが狙いの一つだと思います。
かつては、農協系統は与党・野党を問わずに「全方位」でやっていましたが、11月21日の集会は「JA自己改革に関する与党との緊急集会」でした。改革の目玉として農協を標的にするという手法をとっている首相官邸・自民党に対抗するのに、こういうやり方では、今の状況にあったたたかいはできません。
地域守るのは農協・自治体の役割
北出 トランプ新大統領の登場でTPPはだめ、ロシアとも「北方領土問題」は矛盾に突き当たっている状況で、アベノミクスのアクセルを踏んで暴走する可能性があります。これとのたたかいが大事だと思います。
戦後民主主義を否定して、戦争する国づくりへとアクセルを吹かしている安倍政権に対抗するにはどうしたらいいか。これまでは、農協をはじめ農民組織、その他の宗教団体やNPO、教育団体などがそれぞれの分野で運動してきたことが戦後民主主義を支えてきたと思います。これからは、こうした既存の組織の周り、多様な人々との連携・強化が大事です。
10月15日に東京・芝公園で開かれた「TPPを批准させない! 1万人行動」に私も参加しましたが、若者や女性など幅広い人たちが参加しているのに驚きました。運動が思わぬところに広がっていると。農業・農協の問題でも、世の中の変化に応じた幅広い結集が大事だと思います。そして、攻撃の中身を徹底して訴えていく。そういう意味では、新聞「農民」の役割は大事です。
白石 北海道では、地域を守る大事な役割を担ってきた鉄道が半減しています。不採算だと切り捨てられている。これに対抗するには、「地域をどう守るか」という視点が大事で、一つは自治体の役割が重要です。もう一つが農協です。
地域のみなさんが生活を守るために、イデオロギーを超えて協力せざるをえない状況が生まれています。そういう視点で農業・農協つぶし攻撃に対して幅広いネットワークをつくって対抗する。そんな働きかけをしていきたいですね。
追いつめられているのは安倍政権
北出 7月の参議院選挙で、農協の政治組織、農政連は9割が自民党を推薦しました。陳情などで、自民党議員を通じて農林部会に反映させ、国政に届けるというやり方です。中選挙区制のときはそれでよかったかもしれませんが、小選挙区制のもとで官邸主導・独裁になり、自民党議員はこれにタテつくことができない。
しかし、一方で、参院選では、32の1人区のうち11選挙区で野党統一候補が勝利した。TPPや農政への不満です。そこに確信をもつ必要があります。
白石 安倍首相は、TPPの崩壊、アベノミクスの破たんから目をそらさせるために、農政改革にしがみついている。また、世界的にグローバリゼーションの矛盾が爆発している今、安倍首相は「保護主義にひるむな。日本こそが自由貿易の旗手になる」と熱狂状態ですが、世界の潮流に背くものです。
追いつめられているのは安倍政権です。「アベ政治ノー」の大運動に合流し、退陣させるために全力をあげたいと思います。
北出 単協の組合長も悩んでいて、政府に批判的な人もいます。今回を契機に、農協を地域からつくりかえることが大事だと思います。「自立・自主・自律」という協同組合の原点に立ち返って、農協を本来の協同組合ら
しい組織にする。それが農村を変えていくきっかけになると思います。
白石 今日はどうもありがとうございました。ともにがんばりましょう。
(新聞「農民」2016.12.12付)
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