「農民」記事データベース20161212-1242-07

農協を解体して
大企業が農業を食いものに!
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対談 元明治大学教授元全国農協中央会幹部職員
 北出 俊昭さん
農民連会長
 白石 淳一さん

関連/農協を解体して大企業が農業を食いものに!(1/2)
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 政府は11月29日、「農林水産業・地域の活力創造プラン改訂版」を決めました。これは、農協を解体し、地域と農業を食い物にすることをねらって、規制改革推進会議(農業ワーキンググループ)が打ち出した「農協改革」「牛乳生産・流通改革」提言をもとにしたもの。与党との調整によって一部修正されたとはいえ、安倍政権が選んだ「過激な委員」による“無理難題の吹っ掛け”“危険球”まがいの提言の大枠は変わりません。規制改革推進会議の提言と政府の政策をどう見るか――。元明治大学教授で、全国農協中央会幹部職員でもあった北出俊昭さんと、白石淳一農民連会長に語り合っていただきました(司会は編集部)。


規制改革推進会議の「提言」と
政府の政策をどう見るか

 戦後農政の民主的枠組み壊し

 ――「提言」と「プラン」は、トランプ氏が次期大統領に決まって、TPPの崩壊とアベノミクス農政改革の破たんが決定的になったというタイミングで出されました。

 北出 今度の提言は、今まで以上に規制改革のアクセルを踏んでいますが、その政治的な意味に特徴があります。

 安倍政権は、戦後民主主義を徹底的に否定して戦争する国づくりをめざしています。農業もその一環で、農地改革及び家族農業経営(自作農)を支えるための農業協同組合などを「岩盤規制」だと攻撃して、戦後農政の民主的枠組みを壊そうとしています。

 白石 提言は「生産者のための改革」というふれこみですが、中身はまったく逆で、いかに農協をつぶすかという内容になっています。今の農業の大変な状況の原因は自民党農政です。米価などの暴落に手を打たず、所得補償や価格保障なども実施しないで、悪いのは農協のやり方だと決めつけているところに政治的な背景を感じています。

 「資材が高いのは全農が原因」というゴマカシ

 北出 規制改革推進会議の提言のポイントですが、生産資材の購入については、全農は仕入販売契約の当事者にはならず、情報提供のみ行い、手数料の徴収も廃止する――最終的には「全農は、価格と諸経費を区別して請求する」という表現になりましたが、同じことです。販売についても農産物の委託販売をやめて買取販売に転換せよと言っています。しかも、両方とも「1年以内」に期限を区切ろうとしました。

 白石 推進会議や小泉進次郎・自民党農林部会長は、農協系統が手数料をとっていることを「高値の原因」と決めつけていますが、資材が高い原因はメーカーであって、全農ではありません。ホームセンターの資材が農協よりも「安い」といいますが、私が調べたら、農協の方が安いケースが相当あります。たとえば尿素はホームセンターが1640円に対し農協は1177円、農薬のオルトランは3280円に対し2268円です。

 肥料は土壌や作物の条件によって違い、それに合わせて農家の工夫で生まれてきたものです。ホームセンターの肥料は原料もよくわからず不安で、自分の作物に使ってみようとは思いません。農協は、しっかり研究したものを販売している。農協は、自分たちで築き上げてきた技術をもっと誇っていいと思います。

北出 大手流通資本の餌食になるのは必至
信用・クミカンつぶしの火種残る 白石

 過激提言の本質変わっていない

 北出 卸売市場や米卸業者などを通さず、全農が自力で消費者や需要家に直接販売しろ、そのために買取販売にしろといいますが、ムチャクチャな話です。持てあまして価格暴落の引き金になるか、全農がリスクを避けるために農家から買いたたくか、いずれにしても「1円でも安く」を求める大手流通資本の餌食になることは必至です。

 さすがに、最終的には「1年」という期限はなくなりましたが、政府は、提言をそっくり受け入れ、2年半か3年で「生まれ変わるつもりで」改革を進めろと全農に強要しています。本質は変わっていません。

 白石 報道によると、菅官房長官が小泉農林部会長に「最初から『1年以内』なんて入れる気はなかったんだろ」と言い、小泉氏は「名を捨てて実をとりました」と答えたそうです。首相官邸・自民党幹部・推進会議が結託して、極端な「改革」要求を提言にもりこみ、脅しと駆け引きで目標を勝ち取るというやり方、そして、与党の先生の「活躍」で押し返したという体裁をとりつくろう猿芝居は許せないですね。

 腹が立ったのは、ムチャな「改革」を押しつけ、実現できないのは全農にやる気がないからだといって、国に「第2全農」を作れと、提言が要求していたことです。会議に出席した政府代表が「すごく威圧的な感じがする」と批判し、最終的にはこの表現は消えてなくなりましたが。

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語り合う北出さん(左)と白石さん

 金融資産ねらい、総合農協つぶし

 ――提言は農協の信用(金融)事業つぶしをねらい、「3年後を目途に信用事業を営む農協を半減させる」こと、北海道独特の制度である「組合員勘定」(クミカン)の廃止、准組合員の利用規制の検討加速を要求しました。こういう強烈な総合農協つぶしは、引っ込んだ形になっていますが。

 北出 日本の農協は、営農指導から販売、生産資材の提供、信用・共済などすべての事業を行う総合農協であるところに特長があります。信用と共済は財政的な保証になっており、農協の経営上重要な役割を果たしています。信用・共済を農林中金の代理店化することは、地域農協の総合的な機能が失われます。農家が農協の信用・共済を利用するのは、赤字になるような経済事業を農協が一生懸命にやってくれているからです。営農指導も実質は農協持ち出しでやっています。

 地域農協融資で農家生産は安定

 「クミカン」は、北海道で重要な役割を果たしています。農産物の収穫には季節性があり、農家が生産資材を必要とするのは、収入が少ないときが多い。地域農協が融資して、農家が生産を安定してできるようにするものです。なぜ廃止しなければならないのか。

 白石 信用事業も「クミカン」も、農協の金融資産に手を出したいと考える外資や銀行からみれば邪魔なものだと思います。そのねらいの中心は、単に資金の融通だけでなく、営農指導を含めた固い関係で結ばれている農家と農協の絆を断ち切りたいということです。

(新聞「農民」2016.12.12付)
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2016年12月

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