「農民」記事データベース20160201-1199-04

東電・政府交渉

2年分一括払いは撤回せよ
提示金額の根拠書面で示せ

関連/福島切り捨て許さない
  /2年分一括払いは撤回せよ 提示金額の根拠書面で示せ


画像  3団体は1月15日、原発事故の復興や賠償問題について、国(経産省、内閣府、環境省、農水省、復興庁)と東京電力に対し、申し入れを行いました。

 この間、政府と東電は、(1)「居住制限区域」「避難指示解除準備区域」の避難指示を来年3月までに解除し、(2)この2つの区域の住民への精神的賠償を、再来年(2018年)3月に廃止する、(3)避難区域外の避難者(いわゆる自主避難者)の住宅の無償提供を来年3月で廃止する、(4)避難区域の営業損害の賠償や、避難区域外の風評被害の賠償について、1年分の2倍相当を一括払いする、(5)山林の除染はしない――など、次々と福島切り捨ての方針を打ち出し、実行に移しています。

 申し入れでは、これら5つの方針の撤回を求めたほか、具体的な請求事例への対応も質しました。

 根拠も示さず減額はやめよ

 参加者はまず、(4)の2年分一括払いの方針の撤回を要求。経産省は「閣議決定に基づき、一括払いを展開している。一括払いには将来分も含まれる(ので、基本的には賠償はそれで終わり)。その後の被害は個々に事情を聞き、対処する」と述べ、あくまで一括賠償を推進すると回答しました。

 参加者からは、「被害は2年で終わらない。一括でなくていいから、被害が続く限り、従来通り1年ごとに賠償するべきだ」「2年分というが、その1年分が半分に値切られた」という声が多数噴出。

 また「東電はまず相当因果関係がないと言い張って賠償を拒んだうえで、根拠も示さずに一方的に『半分で手を打たないとゼロだ』と脅している」という実例なども次々と出され、「国は、東電のこういう根拠もあいまいなまま賠償額を値切る態度を知っていて、認めているのか」と経産省に迫りました。

 これに対し、経産省が、「相当因果関係が認めがたい事例があるのは承知している」などと遠回しに追認したため、「それならばゼロのはず。なぜ半分なんだ。おかしいじゃないか。データなり、東電なりに出した計算書なり、半額に至った根拠を請求者全員に書面で示せ。国はそう東電に指導しろ」とさらに詰め寄ったところ、経産省は答弁不能に陥ったあげく、「指導します」と回答せざるをえませんでした。

 住民の合意なく「解除」はするな

 (1)「避難指示解除」方針の撤回については、内閣府が長々と空疎な美辞麗句を並べた末に、結局は「17年3月解除は変更しない」と回答。

 14年10月に避難指示が解除された川内村から郡山市に避難し、自治会長をしている志田篤さんは、いまだに人工透析できるような病院もない、バス便もない、生活インフラも復旧していない川内村の現状や、月4万円余りの国民年金で暮らしている高齢者の被災者の貧困の深刻さを語り、「コミュニティーが破壊され、10万円の引っ越し支援金では、帰村してもとても生活再建できない。今後解除する区域も同じだ。せめて帰村ぐらい自分で決めさせてほしい」と切々と訴えました。

 申し入れでは、「年間被ばく量20ミリシーベルト以下」を根拠とするあらゆる政策を改めることも要求。「20ミリシーベルト以下は被害はないとされ、安全かどうかの基準となり、被害切り捨てと賠償打ち切りの基準となっているが、とんでもない。通常の基準は1ミリシーベルトだ。私たちはいつ、20倍も放射能に強くなったのか」と迫りましたが、経産省は明確に答えませんでした。

 このほか、サクランボの観光農園や、直売所の野菜、果樹の賠償など具体的事例をあげて、東電が従来の支払い方法を勝手に変更し、支払いを打ち切っている問題も追及。「東電はとにかく賠償を安くしようと、人によって計算方法や基準を一方的に変え、説明もしない。きっちり公平に、一人ひとりの被害実態に合わせて賠償するべきだ」と、重ねて要求しました。

(新聞「農民」2016.2.1付)
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2016年2月

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