「農民」記事データベース20150302-1155-06

協同組合全体に関わる重大
事項であり、容認できない

日本協同組合学会会長 柳沢敏勝さん

関連/農協「改革」は協同組合原則を踏みにじる
  /協同組合全体に関わる重大事項であり、容認できない


画像  日本協同組合学会は昨年10月、第34回総会で、「協同組合の自己改革の道を閉ざす政府介入に対するアピール」を採択しました。アピールの要点は、3つあります。

 第1は、昨年6月の規制改革会議の第2次答申と閣議決定は、どうも協同組合そのものを理解していないのではないか、との疑問です。

 閣議決定は、中央会制度の廃止などさまざまな見直しを求めましたが、これはただ単に見直しを求めただけではなく、法律の変更によって強制的に組織のありようを変えることを迫ったものです。したがって学会は、「自主的・自立的組織としての協同組合の存在意義を無視、または否定し、構成員自身による主体的・共同的自己革新の道を閉ざすことになる規制改革の推進を、断じて容認できない」と、きわめて厳しい言葉で非難しました。学会として今回の閣議決定は、たんに農協だけにとどまらず、日本の協同組合全体にかかわる重大事項であると受け止めています。

 第2は、閣議決定そのものがICAの協同組合原則に対する挑戦と受け止められることです。

 「協同組合原則」には、「自治と自立」が第4原則として盛り込まれていますが、競争力強化に名を借りた今回の農協改革は、国家と協同組合の関係について、ICAで積み重ねられてきた議論と、その結果としての協同組合原則に逆行するものと考えています。

 第3は、協同組合に対する国際社会の期待の高まりがあるにもかかわらず、日本の政策決定者たちはまったく逆行する対応をしているのではないか、との危惧です。

 国連も2012年を国際協同組合年に定め、世界が抱えるさまざまな経済社会的な問題の解決に果たす協同組合の歴史的、今日的意義を明らかにしています。これが世界の共通認識です。

 わが国でも格差と貧困は深刻化しています。ところが、世界中で格差と貧困の拡大の原因となっている「競争」が、日本ではもてはやされ、鼓舞され、協同組合の対案として株式会社が提起されています。

 しかし昨年が国際家族農業年であったことを思い起こし、総合的見地から、「株式会社が本当に、経済的、社会的、環境的に、効率的な農業生産をできるのか?」ということを、あらためて問わなければいけないと思います。

 現在の農協が完全無欠の組織だなどと言うつもりは毛頭ありません。しかし協同組合という組織のありようを尊重することなく、“この道しかない”と断言して、押しつけるようなやり方は、協同組合原則の検討のなかで、長い間、世界の協同組合人たちによって否定され続けてきた姿であることだけは確かなのです。

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(新聞「農民」2015.3.2付)
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2015年3月

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