次代の担い手の経験の場に
顔と顔がみえる交流を大切に
若者は産直のあり方模索中
関連/もうやめようTPP交渉
「かえるのマルシェ」
紀ノ川農協青年部が中心
和歌山県では、青年農家の活動がホットです。なかでも、紀ノ川農協の青年部が中心となって「かえるのマルシェ」を毎月開催しています。約4年のマルシェの開催を通じて、青年が産直の意義を模索し、仲間を広げています。
6つの“かえる”信条にして活動
会場は和歌山市内のこだわりサンドイッチ販売店「サントピア」の駐車場です。オーナーの森下佳子さんがお店で使う有機農産物を探していたなかで、「紀ノ川市環境保全型農業グループ」と出合い、食材の供給だけでなく、那賀地方有機農業推進協議会がお店の前でマルシェを開くことになりました。
何度か開催するなかで、次代の担い手の経験の場にしようという動きが生まれ、紀ノ川農協の青年部が中心となった「かえるのマルシェ」がスタートしました。
「かえるのマルシェ」は「安心して買える」「農業の原点に返る」「故郷・初心に帰る」「競争から協同に替える」「土に還(かえ)る」「社会を変える」の6つを信条に有機栽培・特別栽培のとれたて野菜を販売しています。
若い仲間ふやし全国に広がったら
野菜だけでなく加工品にも及ぶ
3月は26日が開催日でしたが、午前9時の開店時間前から近所の人たちが集まってきました。近所の女性は「無農薬でいいものがたくさんあるのでよく買いに来ている。体が不自由なので、近くで販売し、届けてくれるのはありがたい」と話すなど、非常に好評でお客さんが途切れることなく訪れていました。
品ぞろえは野菜だけではなく加工品にも及びます。紀ノ川農協内の加工所を使用している社会福祉法人一麦会(麦の郷(さと))けいじん舎の中原力哉さん(30)は「生産者とともに取り組むことでお互いの思いを伝えることができます。お客さんに直接話すことができ、障害のある人のことも発信できるのもいいですね」と話していました。
協力者いてこそ4年間つづいた
米、トマト、キャベツなどの野菜を生産する高橋範行さん(31)=全国農民連青年部幹事=は「4年間つづいたのは、協力してくれる人がいたからこそ」だったといいます。マルシェを通して「顔と顔の見える関係が求められているように感じられる」と今後の産直のあり方を、考えていました。
高橋さんは今回、無農薬のキャベツと葉玉ねぎを出荷。「無農薬栽培を初めは親などの家族に反対されましたが、微生物農法の先生に出会って軌道に乗り始めました。農法の違いで父親と激しい議論をすることもありますが、生き物が住める田んぼにこだわってやってきました。子どものころから見たことがなかったトノサマガエルが自分の田んぼにいたときはうれしかったですね」と話していました。
紀ノ川農協青年部長の井上達也さん(33)もスタートからのメンバー。イチゴ、玉ねぎ、ブロッコリー、スイートコーンを栽培しています。「マルシェをやりだしたらおもしろい。作るだけじゃなくて売ることの大事さ、販売のやり方が見えてきました」
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マルシェの参加者。左端が畑さん、2人目が中原さん、3人目が井上さん、中央後ろが高橋さん、右端後ろが丸山さん |
自慢の作物を食べてほしい
畑幸秀さん(35)は以前、東京でメーキャップアーティストをしていましたが28歳で帰郷し就農しました。今年からは自分で土地を借りて、親から独立してトマトやトウモロコシなど野菜を作っています。「もともとは農業が嫌いでしたが、いまでは農業で生きていく覚悟ができました。やるからにはサラリーマンより稼いでいきたいです」と意気込みを語っていました。
菌床シイタケ農家の丸山和也さん(28)は2年ほど前からマルシェに参加。「親の世代は安くてもなんでも売れればいいように見えました。自分はいいものを作っていい価格で買ってもらいたい。作物を自慢したいし食べてもらいたい。それで生活が成り立てばいい」と生産へのこだわりを語りました。
“別の場所でも”将来の展望も
「かえるのマルシェ」にはもっと別の場所でもやってほしいという声がかかっています。「そのためにはもっと仲間を増やさないと難しい」と高橋さんは話します。「今、和歌山では『かえるのマルシェ』以外にも今までの手段と違うことをやろうというグループがたくさんあります。一つにまとまって何かできないか模索中です。それが全国に広がっていったらおもしろいじゃないですか」と将来への展望を語っていました。
3・30大行動
風雨をついて、北は北海道から南は沖縄まで全国から集った1200人を超える参加者は、TPP交渉に前のめりな安倍政権に怒りのこぶしを突きつけました。「TPP参加交渉からの即時脱退を求める大学教員の会」よびかけ人の醍醐聰・東大名誉教授、「TPPに反対する弁護士ネットワーク」事務局長の中野和子弁護士、「主婦連合会」の山根香織会長の3氏が共同代表を務める「もうやめよう!TPP大行動」実行委員会は3月30日、東京・日比谷野外音楽堂で大集会を開きました。(4、5面に関連記事)
(新聞「農民」2014.4.14付)
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