国は円安・燃油高騰の責任とれ
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「国は日本の漁業を守れ!」「赤字で漁に出られないぞー!」―― 梅雨入りが発表された5月29日、東京・霞が関に、海の男たちの野太いシュプレヒコールが響き渡りました。全漁連(全国漁業協同組合連合会)が、日比谷野外音楽堂で燃料高騰対策を求める集会を開催し、全国から2500人もの漁業者が集まったのです。
「漁業を守れ!」とこぶしを突き上げる漁業者 |
「業界あげた自助努力ももう限界。燃油高騰が漁業者の努力をすべてのみ込んで無にしてしまった。円安がもたらした燃油高騰によって、漁業・養殖業者が廃業にまで追い込まれることは許されない」――全漁連の服部郁弘会長がこう訴えると、会場から「そうだ!」のかけ声が一斉に飛びます。兵庫県の底びき網漁業者の吉岡修一さんも、「10年前は40円程度だった燃油価格が、いまは90円台。これでは漁業を続けられない」と現状を訴えました。
漁業は漁船を動かさなければ仕事にならず、経費に占める燃油の割合が高い産業です。集魚灯をともす沿岸イカ釣り漁などの場合は、その割合が27%にも及びます。
漁業の危機は燃油高騰だけではありません。原発事故の風評被害や、輸入水産物の増加、不況などによって、長期にわたって水産物価格が、下がり続けています。全漁連は日本のTPP参加に反対を表明していますが、その理由の一つは、「TPPで輸入水産物に歯止めがなくなれば、魚価はいっそう低迷する」との強い懸念からです。
また、水産物価格は市場のセリや入札で決定されるため、生産者が自分で価格を決められず、燃油などの生産費の増加分を価格に転嫁できない点でも、農産物価格と共通しています。
宮崎県のカツオ一本釣り漁業者の渡邊義一さんは、「40数年前と変わらぬ魚価安。30数年前までは全国で300隻超の仲間がいたが、今ではたったの60隻。政治関係者は、水産業以外の産業が成立しがたい地域の経済基盤の確立について、よくよく考えてもらいたい」と訴えていました。
壇上は約200人におよぶ自民党の国会議員で埋め尽くされ、元農水大臣で現在は自民党水産部会長の大島理森氏が「与党所信表明」をしましたが、「アベノミクス」が円安と燃油高騰を引き起こし、漁業者に塗炭の苦しみを与えていることへの責任や謝罪を口にすることは、最後までありませんでした。また出席議員として名前が紹介されると、「皆さん、がんばりましょー」と、能天気にも満面の笑みであいさつする議員も多く、会場からはそのたびに失笑・冷笑が起こっていました。
集魚灯で集めて取るイカ釣り漁は、コストのなかで燃油代が3〜4割を占め、燃油高騰は致命的な問題です。いま、港を見て下さい。休んでいる船が多い。怠けているのではありません。円安による油の高騰で、漁に出るか迷い、みな、やむにやまれず船を出せない状況なのです。
漁業者も景気が良くなって、魚の値段が上がってくれることを強く期待しています。ですが、その恩恵が届くまで、漁業者は持ちません。漁師は自分で値段がつけられません。値上げで乗り切ることはできないのです。
われわれの願いはただ一つ。われわれは、漁に出たいのです! 今年出漁できなければ、来年はないのです。ご参会の先生方、そして政府は、漁師が漁に出て、まじめに一生懸命働けば、ちゃんと生きていける世の中にしてください。
[2013年6月]
農民運動全国連合会(略称:農民連)
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