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農民連関東ブロック協議会と有志13人は7月2日から7日まで、ドイツとスイスのエネルギー自立地域を訪問し、自然エネルギーの活用に取り組む都市や農村を視察しました。訪問先のうち、とくに農村部の取り組みをリポートします。(勝又真史)
「森林、牧草地、そして畑がモザイク状に広がっている。これが黒い森の農村の特徴です」。ドイツ在住の環境ジャーナリスト、村上敦さんは言います。村上さんは通訳と案内で全行程に同行してくれました。
「フライアムトは、中世の時代から独立・自立心が強く、自由な雰囲気にあふれています。村民たちは、化石エネルギー依存の生活を脱却し、原子力発電にも頼らないで自分たちでエネルギーを生産しようと立ち上がったのです」。ドイツ環境自然保護連盟のエアハルト・シュルツさん(66)が、村全体が見渡せる小高い丘の上でこう説明します。シュルツさんは、今年3月11日に東京・井の頭公園で開かれた「震災復興・なくせ原発」集会にも参加しました。
一行は最初に、年間100万キロワットの発電を地域の電力会社に販売しているインゲ・ラインボルトさん宅を訪問しました。
BSE騒ぎ以降、経営は苦しくなり、2003年に牛と豚をすべて売り払い、それを元手にバイオガス発電施設を設置しました。インゲさんは「今となっては、家の一番大きな動物は犬です」と笑います。
かつて牛や豚に食べさせていた穀物や牧草は、今や「バクテリアに食べさせている」(インゲさん)ことになり、近隣の酪農家が運んでくる、ふん尿と混ぜ合わせて、タンクにため、そこで発酵ガスを生み出し、そのガスを燃やしてタービンを回し、発電します。
ガス発生後の、ふん尿や穀物、牧草は肥料として畑や牧草地で再利用されます。
インゲ・ラインボルトさん(右から3人目)から話を聞く参加者 |
また、発電の際の余熱は、近隣15世帯の家庭と村の体育施設、小学校で暖房と給湯用の熱として配給され、喜ばれています。
シュナイダー家で使用する温水は、搾乳した約38度の牛乳の熱を利用しています。熱交換器によって、牛乳冷蔵と温水給湯を同時に行っているのです。
林業は、比較的、時間に余裕ができる冬場に行いますが、自分の森の残材などで木質チップをつくり、家の暖房と給湯に利用しています。
シュナイダー家の標高700メートルの牧草地には、2001年に設置された支柱の高さ85メートル、プロペラの直径70メートルの、大型の風車2基が立っています。2基合わせて年間570万キロワット、約1900世帯分の年間消費電力に相当する発電を行っています。
市民風車を背景に |
この2基は、50人近くのフライアムト村の村民と、周辺地域の市民約100人が共同で3分の1を出資し、残り3分の2は銀行からの融資で建設されたものです。
投資した市民には、売電量に応じて配当がもらえるしくみで、シュナイダー家のように土地を提供している農家にとっては、賃貸料が貴重な収入源になっています。
同村では現在、こうした市民風車が5基になっています。
[2012年7月]
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