「農民」記事データベース20120730-1031-07

大きく注目集める
再生可能エネルギー
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 農民連関東ブロック協議会と有志13人は7月2日から7日まで、ドイツとスイスのエネルギー自立地域を訪問し、自然エネルギーの活用に取り組む都市や農村を視察しました。訪問先のうち、とくに農村部の取り組みをリポートします。
(勝又真史)


エネルギー自立地域訪ねて
ドイツ(フライアムト村)編

 独立・自由な雰囲気の中で

画像 ドイツ南西部の環境都市、フライブルクの北東約20キロに位置するフライアムト村(人口約4200人)は、「黒い森」(シュヴァルツヴァルト)といわれる広大な山林のなかにあります。伝統的な産業は、酪農と林業、観光業ですが、村あげての再生可能エネルギーの取り組みが注目されています。

 「森林、牧草地、そして畑がモザイク状に広がっている。これが黒い森の農村の特徴です」。ドイツ在住の環境ジャーナリスト、村上敦さんは言います。村上さんは通訳と案内で全行程に同行してくれました。

 「フライアムトは、中世の時代から独立・自立心が強く、自由な雰囲気にあふれています。村民たちは、化石エネルギー依存の生活を脱却し、原子力発電にも頼らないで自分たちでエネルギーを生産しようと立ち上がったのです」。ドイツ環境自然保護連盟のエアハルト・シュルツさん(66)が、村全体が見渡せる小高い丘の上でこう説明します。シュルツさんは、今年3月11日に東京・井の頭公園で開かれた「震災復興・なくせ原発」集会にも参加しました。

 一行は最初に、年間100万キロワットの発電を地域の電力会社に販売しているインゲ・ラインボルトさん宅を訪問しました。

農村支えるエネルギー事業

原発に頼らず村あげて生産

 豚・牛売り払って発電施設を建設

 インゲさんは、夫と息子と3人で営農。かつては100頭の牛と350頭の豚を飼い、牧草、トウモロコシ、穀物を飼料用に生産していました。

 BSE騒ぎ以降、経営は苦しくなり、2003年に牛と豚をすべて売り払い、それを元手にバイオガス発電施設を設置しました。インゲさんは「今となっては、家の一番大きな動物は犬です」と笑います。

 かつて牛や豚に食べさせていた穀物や牧草は、今や「バクテリアに食べさせている」(インゲさん)ことになり、近隣の酪農家が運んでくる、ふん尿と混ぜ合わせて、タンクにため、そこで発酵ガスを生み出し、そのガスを燃やしてタービンを回し、発電します。

 ガス発生後の、ふん尿や穀物、牧草は肥料として畑や牧草地で再利用されます。

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インゲ・ラインボルトさん(右から3人目)から話を聞く参加者

 また、発電の際の余熱は、近隣15世帯の家庭と村の体育施設、小学校で暖房と給湯用の熱として配給され、喜ばれています。

 酪農と林業活用共同出資で風車

 次に、酪農と林業で再生可能エネルギーの活用を進めているヘルガ・シュナイダーさん宅を訪問。ヘルガさんの娘2人は独立し、今は夫と母の3人で暮らしています。乳価が毎年下落するなか、「それでも牛乳が一番の収入源」(ヘルガさん)と、50頭の乳牛を飼育しています。

 シュナイダー家で使用する温水は、搾乳した約38度の牛乳の熱を利用しています。熱交換器によって、牛乳冷蔵と温水給湯を同時に行っているのです。

 林業は、比較的、時間に余裕ができる冬場に行いますが、自分の森の残材などで木質チップをつくり、家の暖房と給湯に利用しています。

 シュナイダー家の標高700メートルの牧草地には、2001年に設置された支柱の高さ85メートル、プロペラの直径70メートルの、大型の風車2基が立っています。2基合わせて年間570万キロワット、約1900世帯分の年間消費電力に相当する発電を行っています。

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市民風車を背景に

 この2基は、50人近くのフライアムト村の村民と、周辺地域の市民約100人が共同で3分の1を出資し、残り3分の2は銀行からの融資で建設されたものです。

 投資した市民には、売電量に応じて配当がもらえるしくみで、シュナイダー家のように土地を提供している農家にとっては、賃貸料が貴重な収入源になっています。

 同村では現在、こうした市民風車が5基になっています。

(新聞「農民」2012.7.30付)
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2012年7月

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