浜の願いを県に要請
トロール船の乱獲防げ
サケ刺網漁の解禁を
岩手県漁民組合
関連/海区漁業調整委員に立候補
岩手県漁民組合は6月24日、8人が参加して県知事あてに要請を行いました。漁業再開のために支援事業を改善することや、サケの刺網漁を解禁することなど13項目にわたる要求書を提出しました。県側から、水産振興課漁業調整課長や海区漁業調整委員会事務局長らが対応しました。
震災から1年3カ月がたった今でも、漁業現場では漁船や漁具、倉庫や漁港が充分に整っていません。要請では「せっかく津波をかいくぐって残った船が高潮の際に転覆(てんぷく)してしまった。とりあえず避難できる程度のものでもいいから漁港を整備してほしい」などの声が相次ぎました。
漁民組合のメンバーの多くは、漁船漁業をはじめとした小規模な漁業を営んでいます。公的な支援措置もありますが、船の値上がりや震災前からの負債などにより、経営は逼迫(ひっぱく)しています。そこで漁民組合が求めているのが「サケ刺網漁の解禁」です。岩手県で許可されているサケ漁のうち、「定置網漁」は一部の網主に利益が集中してしまい、「はえ縄漁」は効率が悪くて漁民への利益が十分に出ません。「となりの宮城や青森ではサケの刺網漁が許可されている。資源管理をおこないながら刺網漁を解禁することで漁船漁業が活気づき、浜に後継者も生まれる」と要請しました。
トロール船による底引き網漁や巻き網漁で稚魚が乱獲されている問題や、漁具の海洋投棄も指摘されました。
釜石市の佐々木正富さん(35)は「船は津波で流されたが、カゴ漁の漁具は沖に残った。ところが、トロール船の網にひっかかって引き上げられない漁具があり、困っている」と深刻な状況を訴えました。
一部に利益集中国にも行こう!
全体として共通しているのは、これまでの漁業をとりまく仕組みや復興対策には一部に利益が集中しがちで、不公平感が漁民の間から噴出しているという点です。要請に対して県側は、「対策の改善を進めていくと同時に、国にも要望を伝える」などと回答しました。回答は充分ではありませんでしたが、「二度、三度とやっていこう」「国にも行こう」と、意気あがる要請となりました。
(岩手県農民連 岡田現三)
岩手県漁民組合 藏(くら)徳平(とくへい)※1組合長
豊かな海を若い人に引き継ぎたい
岩手県漁民組合は、7月24日告示・8月2日投票の海区漁業調整委員選挙に、組合長の藏徳平さん(76)を擁立することを決定しました。
海区漁業調整委員会は漁業法に基づき、漁場や水産資源を有効に利用するための漁業調整を行い、都道府県知事に意見を述べるなど民主的におこなうことを目的に設置されている重要な機関です。定数9人の公選委員は、漁業者の投票によって4年ごとに選出されます。藏さんに立候補に向けた決意を聞きました。
◇
大震災をきっかけに、漁民が漁民として生きていくことができなければ浜は成り立たないし、日本の食べものは守れないということを痛感しています。しかし、利権を優先するような制度が多く、どうしても零細な漁民の再生に結びつかない。私たちは、この現場の声を実現して広く世の中に伝えるためにはどうすればいいかを論議する中で、「やはり海区漁業調整委員だ」と考えました。
これまで現場の声を代表する漁民が委員になったことはありません。私は洋野(ひろの)町でウニ漁に取り組み、漁業で長年メシを食わせてもらってきました。若い人たちに引き継ぐために、なんとしても委員として働きたいと決意しました。ご支援をよろしくお願いします。
(カンパや激励寄せ書きなどは岩手県農民連まで TEL 019(635)3721)
※【訂正】 7月16日号にて、以下の訂正がありました。
前号1面の記事「岩手県漁民組合蔵徳平委員長」の名前の読み方は、「くらとくへい」※1の誤りでした。訂正しておわびします。
2012年7月23日、訂正しました。
(新聞「農民」2012.7.9付)
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