リオ+20 国連持続可能な開発会議“グリーン経済”は
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関連/グリーン経済”は自然を商品化する /齋藤敏之さんのリポート |
6月20日〜22の3日間、ブラジルのリオデジャネイロで「国連持続可能な開発会議」が開催されました。この会議は、1992年に開催された地球サミット(「環境と開発に関する国連会議」)から20年を経たことを機に開催されることから、「リオ+20(リオプラス20)」と呼ばれています。地球温暖化や飢餓問題などの深刻化を背景として開催された地球サミットでは、気候変動枠組み条約や生物多様性条約が署名され、これまで地球環境を破壊してきた先進国の責任を明確にした原則が確認されました。しかし「リオ+20」では、こうした原則を後退させ、「持続可能な発展」とは逆の議論が進められました。(満川暁代)
そもそも「グリーン経済」とは何でしょうか。きわめて大くくりに言えば「環境保全型の経済」をさしますが、実は、現在に至るも定義が定まっていません。国、組織、階層、研究者などがそれぞれの思惑に基づいて、さまざまな解釈を加えているというのが実態です。
一つは、バイオ産業の促進です。多国籍企業は、遺伝子組み換えや合成生物、ナノテクノロジーなどさまざまなバイオテクノロジーの技術や特許を有しており、こうした技術を駆使して、バイオマスエネルギーや化学製品、プラスチックなどを生産しています。また、特殊な砂鉄を海に散布して海水の酸化を中和するなど、地球温暖化に工学的技術で対処しようというジオ・エンジニアリング(地球工学)と呼ばれる新技術もあります。「リオ+20」では、これらの新技術の促進が盛り込まれているのです。
しかしこれらの新技術は未完成で、環境への影響も解明されておらず、実用化するには危険な技術です。またこの新技術によって新たな自然収奪の対象となるバイオマスは、小農民や漁民、森に住む先住民などが生計の基盤としているものであり、守り育ててもいます。しかしひとたびバイオマスが商品になれば、こうした人々が生活圏から排除されてしまう危険性があります。
さらに問題なのは、その「生態系サービスの対価」をクレジットにして、株式のように取引したり、先進国の工場などでの環境破壊の埋め合わせにも使えるようにしようと提案されていることです。つまり先進国の企業や工場は、このクレジットを買うことで、本来自分が削減義務を負っている温室効果ガスの削減対策などを逃れることができるようになります。
こうした「自然の商品化」は、熱帯雨林などですでに始まっています。熱帯雨林ではいま、多国籍企業が「生態系サービス」のプロジェクトを勝手に設定して森林を囲い込み、クレジットを売ってもうけています。その一方で、自然を壊すことなく森の恵みを利用して暮らしている小農民や先住民を森から締め出したり、森の恵みの利用を禁じたりする事例が続出しています。
「リオ+20」では、バイオ産業や生態系サービス・ビジネスに、より多くの投資や資金が流れ込むよう、各国政府や民間企業に“持続可能な開発のための”資金を提供してもらう仕組みづくりも、大きな議題の一つとして提案されています。
[2012年6月]
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